主張
防衛局の審査請求
あまりに常軌を逸した対応だ
沖縄の米軍普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古の新基地建設問題で、翁長雄志知事が沖縄防衛局にボーリング調査を含め海底面の現状を変更する全ての作業を停止するよう指示したことに対し安倍晋三政権の対応が常軌を逸しています。菅義偉官房長官は「(知事の)指示は違法性が重大かつ明白で無効」だと口を極めて攻撃し、沖縄防衛局は現場での作業を続行するだけでなく、行政不服審査法に基づく審査請求と執行停止申し立てを行いました。「新基地ノー」の沖縄の民意に応えた行動を敵意むき出しに押しつぶそうとする許しがたい態度です。
防衛局の主張成り立たず
翁長知事の指示は、新基地建設に向けた海上作業のために設けられた立ち入り禁止海域などを示すブイやフロートを海底で固定する巨大コンクリートブロックがサンゴ礁を破壊していることを受けた措置です。沖縄県は仲井真弘多前知事時代の昨年8月、沖縄防衛局に対し、県漁業調整規則に基づいて新基地建設に必要な岩礁破砕許可を行っていました。これに対し翁長知事は、コンクリートブロックの投下が許可区域外で行われており、許可なしに岩礁破砕が行われている蓋然(がいぜん)性が高いとして、県が実施する調査の終了まで作業を停止するよう指示したのです。
県の漁業調整規則に基づく岩礁破砕許可に関する「取り扱い方針」は、「沖縄の海を特徴づけるサンゴ礁」が「地形的にも生態的にも砂浜、干潟、藻場などの浅海域と一体となり、本県における海洋生産の基盤を成し」ており、「多くの有用な魚介類が生育する重要な場所」であるとし、「岩礁破砕など海域を改変する行為」には「細心の注意を払う必要がある」としています。翁長知事の指示はこうした方針に基づく当然かつ正当な行為です。
沖縄防衛局は、アンカー(いかり)を含めブイなどの設置は岩礁破砕許可の対象ではないと説明されたと主張しています。しかし、最大重量が45トンものコンクリートブロックがアンカーの範(はん)疇(ちゅう)を超えているのは明らかです。実際、「取り扱い方針」は岩礁破砕許可の対象例に「消波ブロック等の設置」を挙げています。翁長知事が「岩礁破砕に当たらない(影響が)軽微なものとして『取り扱い方針』が想定しているものとは到底考えられない」と指摘するのは当然です。
行政不服審査法は、行政庁の違法、不当な処分など公権力の行使について「国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くこと」で「国民の権利利益の救済を図る」のが目的です(第1条)。沖縄の地元紙は「強大な権限を行使して移設作業を強行している国が県の停止指示を阻止するために、国民の権利利益救済を主眼とした法律を使うのが果たして許されるのだろうか」(琉球新報25日付)と批判しています。
地方自治を語る資格なし
菅官房長官は、自らの公約に反して新基地建設を容認した仲井真前県政からの「行政の一貫性」を口実に作業の継続を正当化しています。しかし、「一貫」して揺るがないのは昨年の知事選や衆院選などで示された「新基地ノー」の沖縄の民意です。県民を裏切った前知事の行為にしがみつき、新基地をしゃにむに強行する安倍政権に民主主義や地方自治を語る資格がないことは明らかです。