衆院憲法審査会の参考人質疑での憲法学者3氏全員による戦争法案の違憲判定(4日)に慌てた政府の反論見解提出(9日)から1週間。この間の国会論戦で、砂川事件最高裁判決(1959年)や72年の政府見解を根拠にした「合憲論」は次々に破綻が露呈し、最後に残った「安全保障環境の変容」論でも答弁不能に追い込まれています。政府の「合憲論」はもはや総崩れ状態です。 (池田晋)

39390411043e4b51696f2615fe6f39de5933dc2f 政府の「合憲論」の中核をなすのが、集団的自衛権行使は違憲とした72年政府見解の“読み替え”です。政府は今回、72年見解の「基本的な論理」はそのままでも、「安全保障環境が根本的に変容」したとして、「結論」だけを百八十度転換しています。(

 「安全保障環境の根本的変容」が解釈変更の唯一の理由であり、“よりどころ”であることは、政府も「端的にいえばそのとおり」(10日、横畠裕介内閣法制局長官)と認めています。

何をもって判断

 では、政府はいつから、何をもって「根本的変容」を判断したのか―。この点を突いたのが、日本共産党の宮本徹議員でした(10日、衆院安保法制特別委)。

 中谷元・防衛相は、冷戦終焉(しゅうえん)、グローバルなパワーバランスの変化などの世界情勢を答弁。しかし、繰り返し追及した宮本氏に対し、最後まで明確に答弁できませんでした。

 では、具体例に照らせばどうか―。この点を、安倍晋三首相が集団的自衛権行使の想定例として言及する中東・ホルムズ海峡の機雷封鎖事案からただしたのが、赤嶺政賢議員です(15日、衆院安保法制特別委)。

封鎖と関係ない

 赤嶺氏は、同海峡の機雷封鎖にたびたび言及してきたイラン自身が米国などと対話を進め、前向きな情勢変化が起きていることを指摘。中谷防衛相はここでも、過激組織ISの拡大などの中東情勢を挙げたものの、「このような変化がただちにホルムズ海峡に悪影響を及ぼす危険があるわけではない」と述べ、海峡封鎖と関係ないことを認めました。

 いざ具体論を突きつけられると答弁不能に陥る政府の姿勢は、今回の憲法解釈変更が現実世界と乖離(かいり)して組み立てられた“机上の空論”であることを改めて浮き彫りにしました。

 「そもそも自分の国が攻撃されていないのに、他国が攻撃されて存立が脅かされた国の実例が世界にあるのか」―。宮本氏の追及に、岸田文雄外相は「いま確認するものがない」と後日回答する方針を示しました。

 何が「根本的変容」か、いつ「変容」したのか、そして実例も何も示せないなら、宮本氏が指摘したように「それこそ(何のためにつくる法律かという)立法事実がない」ということになります。