主張

川内原発運転強行

安全置き去りの再稼働許せぬ

 九州電力川内原発の1号機(鹿児島県)が、原発の安全性や事故が起きた場合の避難体制についての住民の不安を押し切って、10日にも運転を開始(起動)しようとしています。東京電力福島第1原発事故のあと全国の原発が次々と停止し、一昨年9月以降運転している原発はひとつもない中での最初の原発再稼働です。安倍晋三政権と電力業界は、今後も各地の原発再稼働を狙っています。福島原発事故も収束していないのに、住民の安全を無視した原発再稼働の推進は絶対に許されません。

安全も避難も保証しない

 安倍政権は、原子力規制委員会が福島原発事故後作り直した「規制基準」で審査し、「適合」と認めた原発は再稼働させると公言してきました。規制委は川内原発1、2号機のあと、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)も「適合」していると決定しました。

 しかし、規制委の「基準」は地震や津波の想定を多少引き上げただけで、「適合」したからといって安全を保証したわけではありません。それどころか、放射性物質が外部に漏れだすような重大事故の可能性は認めながら、住民の避難体制はもともと審査の対象外です。規制委が「適合」するとしたから再稼働を進めるという安倍政権は、責任を規制委になすりつけるだけの無責任のきわみです。

 とりわけ川内原発の場合、周辺には過去に大噴火を起こした火山がいくつもあり、最近も近くで火山活動の活発化がいわれているのに、「規制基準」はもともと噴火対策の不十分さが専門家からも指摘されているものです。規制委は先月末火山活動について助言する専門家組織の設置を決めましたが、体制も整っていないのに「適合」と認めたのはお粗末です。規制委の審査を通ったからと再稼働を推進する道理のなさは明らかです。

 火山噴火だけでなく地震や津波などが引き金になって原発が大事故を引き起こせば、広範な地域で長期にわたって被害が続くことは、福島原発事故で証明済みです。ところが住民の避難体制についてのまともな計画もないまま、川内原発の場合、鹿児島県と原発がある薩摩川内市の同意だけで再稼働が決まりました。鹿児島県内だけでなく周辺の熊本県や宮崎県内の自治体からも住民説明や住民の同意を求める意見が相次いでいるのに、国も九州電力もまともに耳を傾けようとしていません。

 もともと技術的に未完成で、事故の発生を完全に防ぎきれない原発は運転すべきではありません。事故が起きれば甚大な被害を受ける住民の声にまともに耳を傾けようとせず再稼働を進めるのは論外です。川内原発の運転強行は許されず、再稼働は中止すべきです。

原発運転する責任自覚を

 東京電力福島第1原発事故をめぐり東電の元会長ら3人を起訴するよう責任をきびしく問うた東京検察審査会の決定は、原発事故はひとたび発生すれば取り返しのつかない重大なものになることを指摘するとともに、「万が一」にも備えることが原子力発電に関わる責任ある地位にあるものの「重要な責務」だと指摘しました。

 安倍政権や九州電力はその指摘にも応える気があるか。住民の安全を考えるなら川内原発など原発の再稼働強行は断念すべきです。