大門氏は、米太平洋軍のブレア元司令官が4月、南シナ海で「紛争が起きつつある現実的危険性はみられない」と語るなど、安倍政権とは全く違った認識を示していることを紹介しました。(別項1)
大変重要な市場
また、大門氏は「国のことは軍事面だけでなく、経済、文化をトータルにとらえて今起きている問題をみないといけない」と指摘し、日中間の経済相互依存度の深さをあらわす資料を示しました。(グラフ)
宮沢洋一経済産業相は、日本企業4万社以上が中国に進出し、輸出先としては米国に次ぐ2位、輸入元では1位で貿易総額も米国を超え1位であることをあげ、「大変重要な市場と認識している」と語りました。
たしかに日中間には領土をめぐる問題があり、中国の南シナ海における一方的で強硬な行動は問題であることは間違いありません。しかし東南アジアの国々は、話し合いで解決する道を模索し、アメリカも平和的に解決しようと努力しています。(別項2)
前向き姿勢示す
大門氏は、日本と中国は1972年の国交回復以来、紛争は「平和的手段に解決(する)」ことを繰り返し確認し、2008年の「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明でも「互いに脅威とならない」「共に努力して、東シナ海を平和・協力・友好の海とする」と確認していることを示しました。
これに対し岸田文雄外相は「中国を脅威とみていない」と発言。法的拘束力がある南シナ海行動規範(COC)について、4日から開幕したASEAN(東南アジア諸国連合)外相会議で「早期妥結に向けて発言していきたい」と前向きな姿勢を示しました。
一方、防衛省は対話どころか中国軍にどう対応するのか「戦争シミュレーション」を行っている事実を、大門氏は同省の内部資料を示して批判。「今こそ外交的な解決手段をとることが一番大事だ」と主張しました。
1 デニス・ブレア米太平洋軍元司令官の発言(4月14日、外国特派員協会)
(台湾や尖閣諸島問題について)中国が軍事力で彼らの野望を実現する可能性はきわめて少ない。軍事作戦の実施はきわめて大きなリスクを負うことを中国は知っている。(南シナ海について)現実に、軍事対立のない地域だといえる。対立は、統治権をめぐる紛争であり、海域全体についての規制、油井掘削船の配備などであり、軍事対立よりもはるかに低い水準。どの国も、軍事対立へのエスカレートを望んでいない。