主張

シリア内戦泥沼化

安保理は政治対話にこそ力を

 シリア内戦は、アメリカ、ロシアなどが過激組織ISの打倒を理由に武力介入を拡大することで、いっそう泥沼化しています。国連安全保障理事会の本来の役割を回復させ、政治対話による解決に向けて、米ロ両国は常任理事国としての責任を果たすべきです。

武力介入で事態悪化

 シリアでは、国連の発表で25万人ものシリア市民が殺害され、近隣諸国に避難している400万人以上の難民をはじめ総人口の半数を超える1200万人が故郷を追われるなど、最悪の事態を引き起こしています。難民の一部は、欧州に次々と流入して深刻な問題を生んでいます。

 シリアでは、2011年3月に始まった民主化運動が、アサド政権による弾圧強化や国外の反アサド勢力の資金・武器支援のなかで武装闘争に転化し、全土をまきこむ内戦に拡大しました。さらにISがシリアに侵入して支配地域を広げ、三つどもえ、四つどもえの武力抗争に陥りました。

 シリアの事態をめぐる中心問題のひとつは、こうした危機的事態にたいして国連安全保障理事会がなんら主導的役割を果たしていないことにあります。潘基文(パンギムン)国連事務総長はこれを、安保理の「4年間にわたる外交上のマヒ状態」と指摘しました。

 マヒどころか、常任理事国であるロシアとアメリカ、イギリス、フランスがそれぞれアサド政権と反政府勢力について軍事介入を強化し、内戦をいっそうあおる役割すら果たしています。

 国際の平和と安全に関して「主要な責任」(国連憲章)を負っているはずの安保理は、紛争の平和的解決に向けて、その役割を早急に回復すべきです。

 米軍などが昨年9月からシリア国内のISにたいして実施している空爆に関して、シリア政府は国連あての書簡(9月21日付)で「シリアの主権にたいする攻撃」と非難しました。他方、ロシアは今年9月、アサド政権支援を掲げて空爆・ミサイル攻撃を開始しています。

 外部からの武力介入は、暴力と報復の連鎖を生み、さらなる人的被害と内戦の激化をもたらして、地域全体に破壊的な影響を及ぼすことにしかなりません。それは、この間の経過からも明らかです。

 シリアで政治プロセスをすすめる上でも、ISやアルカイダのようなテロ組織を追い詰めて、孤立化させることは急務です。その場合でも、実施は、安保理決議にもとづき、国連の統制と管理のもとに置かれるべきです。

 米ロのような個別的・集団的自衛権を口実にした武力行使は事態をいっそう複雑化し、泥沼化させるだけです。

外交努力を強めて

 シリア危機の持続的な解決は、シリア人主導の政治プロセスによるしかありません。

 8月に出された安保理の議長声明はそのことを強調するとともに、シリア政府と反政府勢力との双方に真剣な政治対話を促し、双方を包括する暫定政権を「相互同意」にもとづいて樹立するとした2012年6月のジュネーブ合意に立ち返ることを求めています。

 国際社会は今こそ、政治対話による解決にむけて、紛争当事者を交渉の席につかせるためのあらゆる外交努力を強めるべきです。