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日本共産党の志位和夫委員長が、15日の日本外国特派員協会で行った講演は次の通りです。
9月19日未明に、安倍政権・与党によって安保法=戦争法が強行されました。日本共産党は、同日の午後、第4回中央委員会総会を緊急に開催し、「戦争法廃止の国民連合政府」の「提案」を決定しました。
私たちの「提案」は、つぎの三つの柱からなっています。
第一は、戦争法(安保法制)廃止、安倍政権打倒のたたかいをさらに発展させようという、たたかいの呼びかけです。
第二は、戦争法廃止で一致する政党・団体・個人が共同して「国民連合政府」をつくろうという、政府の提唱です。
そして第三は、「戦争法廃止の国民連合政府」で一致する野党が、国政選挙で選挙協力を行おうという呼びかけです。
すでに「提案」は、大きな反響を呼んでいます。私たちは、この「提案」をもって各界・各分野の方々との懇談を続けていますが、これまでにない広範な方々から賛同と激励の声が寄せられていることは、たいへんうれしいことです。最近のJNNの世論調査では、「共産党が呼びかけた選挙協力」について、37%の方が「期待する」と答えています。「野党は協力を」という声が、一つの流れとなりつつあります。これを文字通りの国民的な流れにしていくことが、この「提案」を実現する最大のカギとなります。私たちは、そのためにあらゆる努力を続けたいと決意しています。
この「提案」をもっての野党各党との話し合いも始まりました。私は、民主党、社民党、生活の党との最初の党首会談をおこないましたが、全体として良いスタートが切れたと考えています。維新の党とも党首会談が行われることになると思います。さまざまな困難もありますが、互いの信頼関係を大切にして、粘り強く話し合いを続け、合意できるように誠実に努力したいと考えています。
なぜ「国民連合政府」か。
一言で言えば、本気で日本の政治を立て直そうとすれば、いまどうしてもこうした政府を実現する必要がある。これが私たちの考えです。
私は、三つの点を強調したいと思います。
第一に、本気で、戦争法(安保法制)を廃止し、日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻そうとすれば、それを実行する政府が必要になります。
すでに国会論戦で明らかになったように、戦争法は、憲法9条をじゅうりんして「海外で戦争する国」へと日本をつくりかえる違憲立法です。それを進めたやり方も、60年余にわたる政府の憲法解釈を一内閣の専断で覆すという、立憲主義を乱暴に破壊するものでした。戦争法は、内容でも、やり方でも、二重に憲法を破壊するものであり、この法律ばかりは与党の「数の暴力」で成立させられたからといって、それを許したままにしておくことはできません。私たちは戦争法廃止の新たなたたかいを、国民とともに大きく発展させていきたいと強く決意しています。
戦争法を廃止するためには、廃止を求める勢力が衆議院と参議院で多数を獲得し、廃止法案を可決することが不可欠となります。同時に、それだけでは足りません。それだけでは集団的自衛権行使を容認した昨年7月1日の「閣議決定」が残ります。これが残る限り、自衛隊の海外派兵の大きな火種が残ります。デタラメな憲法解釈が続き、立憲主義がないがしろにされた異常事態が続くことになります。ですから、この「閣議決定」はきれいさっぱりと撤回されなければなりません。
そして戦争法廃止、「閣議決定」の撤回という二つの仕事を、本気でやろうとすれば、安倍政権のもとではもとより不可能です。それを実行する新しい政府をつくることが必要不可欠となってきます。
野党間に、国政の基本問題での政策的一致が存在する場合には、本格的な野党連立政権をつくることが現実的な課題になるでしょう。しかし、現実にはそうした一致が存在しません。だからといって野党間で基本政策が一致するまで待つわけにはいきません。それでは、安倍政権がいつまでも続くことになります。
それではどうするか。私たちの「提案」は、野党間で政策的な相違点があるもとでも、それを横に置いて、“戦争法廃止、立憲主義の回復”――この一点で、この国民的大義で、一致するすべての政党・団体・個人が共同して連立政府をつくろうというものです。「小異を捨てて大同に」という言葉がありますが、私たちの提案は、「大異を横に置いて大同に」というものです。
この政府は、この一点での合意を基礎にした政府ですから、その性格は暫定的なものとなります。すなわち、この政府は、その任務を達成した時点で、解散・総選挙を行い、その先の日本の進路については、国民の審判をふまえて選択すべきだと考えます。そのことを、私たちは「提案」のなかに率直に明記しています。
安倍政権を打倒した後に、どのような政権をつくるのか。それはそれぞれの野党に問われている問題です。それはまた多くの国民にも問われている問題だと思います。打倒した後も、自民党内の政権のたらいまわしで、安倍政権の亜流政権に交代するだけでは、何の意味もありません。私たちは、「国民連合政府」という政権構想が、現時点で、安倍政権に代わる唯一の現実的で合理的な政権構想だと確信するものです。
昨年12月の総選挙で、私たちは、沖縄1区~4区までのすべてで選挙協力を行い、すべてで自民党候補を打ち破って、勝利をかちとりました。なぜ勝利ができたか。その最大の要因は、「辺野古新基地反対」という「オール沖縄」の声――県民的な大義を、高々と掲げてたたかいぬいたことにありました。
野党が選挙協力を行ったとしても、自公に打ち勝つのが容易ではないことは明らかです。勝利するためには、国民的大義をはっきりと示すことが必要です。私たちは、「戦争法廃止、立憲主義回復、国民連合政府」という国民的大義を明確に示し、そのもとで野党が結束してたたかってこそ、勝利をつかむことが可能になると考えます。野党が、共同して政権を担うというところまで互いに腹を固めてこそ、そして、その本気度が国民に伝わってこそ、激しい選挙戦を勝ち抜くことができる。これが私たちの考えです。
要は、野党が、本気になって日本の政治を変える志をもつかどうか。私たち野党に問われている問題の核心はここにあると考えます。
本気で立憲主義を取り戻そうとすれば、本気で安倍政権を打倒しようとすれば、本気で選挙協力を成功させようとすれば、「国民連合政府」の旗を掲げることがどうしても必要となるのではないでしょうか。これが私たちの立場であります。
こうした質問に対して、私は、まず、「立憲主義の回復」という課題は、あれこれの政策問題とは次元の違う、この国の根幹、土台を立て直す大問題だということを強調したいと思います。どんなに国会で多数をもつ政権であっても、憲法の枠組みは守らなくてはならない。これが立憲主義の要請です。ところが現状は、この根幹、土台が崩されているのです。それをそのままにしておけば、日本は無法国家になってしまいます。独裁政治になってしまいます。すなわち、日本の政治は、あれこれの政策を論じる土台そのものが損なわれかねないという非常事態にあります。「立憲主義を取り戻す」という課題は、政権をつくるうえで、これ以上の憲政上の大義はないといってよいほどの、大きな国民的大義を持つ課題であるということを、私は強調したいと思います。
それではその他の国政上の課題をどうするか。私たちは、「立憲主義の回復」という国民的大義での大同団結がはかられるならば、その他の国政上の問題についても、「相違点は横に置き、一致点で合意形成をはかる」という原則で対応していくことが可能になると考えています。
たとえば、日米安保条約についてどうするか。私たちは(安保条約)「廃棄」という方針ですが、国民連合政府の対応としては「凍結」するということになります。「凍結」とはどういうことか。戦争法廃止を前提として、第一に、これまでの条約と法律の枠内で対応する、第二に、現状からの改悪はやらない、第三に、政権として廃棄をめざす措置はとらないということです。野党間の政策上の相違点については、こういう精神で対応していきたいと私たちは考えています。
もちろん、一致点では前向きの仕事にもとりくんでいきます。重要なことは、野党5党には、安倍内閣不信任案を共同で提出したことに示されるように、「安倍政権の退陣・打倒」という点では、政治的一致がすでに存在するということです。そういう政治的一致を基礎におけば、安倍政権の民意を無視したさまざまな暴走に対しても、これを許さず、転換をはかるという立場に立って、さまざまな協力の一致点が見いだされるのではないでしょうか。一例ですが、たとえば、労働法制の問題では、この政府のもとで前向きの改革が実行できるのではないかと考えています。
こういう立場で政策的な調整を行えば、国民に責任をもった政権運営を行うことは、十分に可能だと私は考えています。
いま安倍政権が行っている政治の特徴を一言でいうならば、国家の暴走によって、「個人の尊厳」を踏みにじる政治と特徴づけることができるのではないでしょうか。それは戦争法でも、沖縄問題でも、原発問題でも、労働問題でも、税と社会保障の問題でも、あらゆる問題で言えることです。
それはまた、この政権が突然持ち出した「1億総活躍社会」なるスローガン、菅官房長官の「たくさん産んで国家に貢献」という言葉にもあらわれています。“国家のために働け、国家のために子どもを産め、GDP(国内総生産)600兆円を達成せよ”。国家と個人の関係がまさに逆立ちしているではありませんか。国家のために国民があるのではありません。国民の幸せのためにこそ国家があるのではないでしょうか。
それは、日本国憲法第13条が国家に命じていることです。この条項では冒頭に、「すべて国民は、個人として尊重される」とあります。私は、「個人の尊重」「個人の尊厳」こそ、近代民主主義の原点のなかの原点であると考えるものです。
「国民連合政府」が目標とする「立憲主義の回復」とは、すべての国民一人ひとりの「個人の尊厳」を守り、大切にする社会をつくることにほかなりません。
この間、戦争法案に反対して立ち上がった多くの国民は、まさに一人ひとりの意思で、「個人の尊厳」をかけて立ち上がりました。
これらの人々が広く手を結んでつくる「国民連合政府」は、文字通り「すべての国民」の「個人の尊厳」を守り、大切にする社会への歴史的一歩を踏み出す政府になると、私は確信をもって言いたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
「提案」実現の最大のカギ―「野党は協力を」の声を国民的な流れに
今日はご招待をいただきまして、まことにありがとうございます。日本共産党の志位和夫でございます。9月19日未明に、安倍政権・与党によって安保法=戦争法が強行されました。日本共産党は、同日の午後、第4回中央委員会総会を緊急に開催し、「戦争法廃止の国民連合政府」の「提案」を決定しました。
私たちの「提案」は、つぎの三つの柱からなっています。
第一は、戦争法(安保法制)廃止、安倍政権打倒のたたかいをさらに発展させようという、たたかいの呼びかけです。
第二は、戦争法廃止で一致する政党・団体・個人が共同して「国民連合政府」をつくろうという、政府の提唱です。
そして第三は、「戦争法廃止の国民連合政府」で一致する野党が、国政選挙で選挙協力を行おうという呼びかけです。
すでに「提案」は、大きな反響を呼んでいます。私たちは、この「提案」をもって各界・各分野の方々との懇談を続けていますが、これまでにない広範な方々から賛同と激励の声が寄せられていることは、たいへんうれしいことです。最近のJNNの世論調査では、「共産党が呼びかけた選挙協力」について、37%の方が「期待する」と答えています。「野党は協力を」という声が、一つの流れとなりつつあります。これを文字通りの国民的な流れにしていくことが、この「提案」を実現する最大のカギとなります。私たちは、そのためにあらゆる努力を続けたいと決意しています。
この「提案」をもっての野党各党との話し合いも始まりました。私は、民主党、社民党、生活の党との最初の党首会談をおこないましたが、全体として良いスタートが切れたと考えています。維新の党とも党首会談が行われることになると思います。さまざまな困難もありますが、互いの信頼関係を大切にして、粘り強く話し合いを続け、合意できるように誠実に努力したいと考えています。
本気で、戦争法を廃止し、立憲主義を取り戻そうとすれば、実行する政府が必要
メディアの報道では、私たちが選挙協力を呼びかけたことに、注目が集まっています。しかし、私たちの「提案」の一番の要は、「国民連合政府」という政府を提唱したことにあります。もちろん、「国民連合政府」という名称は仮称でありまして、みんなで決めればいいと考えています。なぜ「国民連合政府」か。
一言で言えば、本気で日本の政治を立て直そうとすれば、いまどうしてもこうした政府を実現する必要がある。これが私たちの考えです。
私は、三つの点を強調したいと思います。
第一に、本気で、戦争法(安保法制)を廃止し、日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻そうとすれば、それを実行する政府が必要になります。
すでに国会論戦で明らかになったように、戦争法は、憲法9条をじゅうりんして「海外で戦争する国」へと日本をつくりかえる違憲立法です。それを進めたやり方も、60年余にわたる政府の憲法解釈を一内閣の専断で覆すという、立憲主義を乱暴に破壊するものでした。戦争法は、内容でも、やり方でも、二重に憲法を破壊するものであり、この法律ばかりは与党の「数の暴力」で成立させられたからといって、それを許したままにしておくことはできません。私たちは戦争法廃止の新たなたたかいを、国民とともに大きく発展させていきたいと強く決意しています。
戦争法を廃止するためには、廃止を求める勢力が衆議院と参議院で多数を獲得し、廃止法案を可決することが不可欠となります。同時に、それだけでは足りません。それだけでは集団的自衛権行使を容認した昨年7月1日の「閣議決定」が残ります。これが残る限り、自衛隊の海外派兵の大きな火種が残ります。デタラメな憲法解釈が続き、立憲主義がないがしろにされた異常事態が続くことになります。ですから、この「閣議決定」はきれいさっぱりと撤回されなければなりません。
そして戦争法廃止、「閣議決定」の撤回という二つの仕事を、本気でやろうとすれば、安倍政権のもとではもとより不可能です。それを実行する新しい政府をつくることが必要不可欠となってきます。
本気で、安倍政権を打倒しようとすれば、それに代わる政権構想が必要
第二に、本気で、安倍政権を打倒しようとすれば、それに代わってどういう政権をつくるのか。安倍政権を打倒した後の政権構想を、野党が責任をもって示すことが、どうしても必要となります。野党間に、国政の基本問題での政策的一致が存在する場合には、本格的な野党連立政権をつくることが現実的な課題になるでしょう。しかし、現実にはそうした一致が存在しません。だからといって野党間で基本政策が一致するまで待つわけにはいきません。それでは、安倍政権がいつまでも続くことになります。
それではどうするか。私たちの「提案」は、野党間で政策的な相違点があるもとでも、それを横に置いて、“戦争法廃止、立憲主義の回復”――この一点で、この国民的大義で、一致するすべての政党・団体・個人が共同して連立政府をつくろうというものです。「小異を捨てて大同に」という言葉がありますが、私たちの提案は、「大異を横に置いて大同に」というものです。
この政府は、この一点での合意を基礎にした政府ですから、その性格は暫定的なものとなります。すなわち、この政府は、その任務を達成した時点で、解散・総選挙を行い、その先の日本の進路については、国民の審判をふまえて選択すべきだと考えます。そのことを、私たちは「提案」のなかに率直に明記しています。
安倍政権を打倒した後に、どのような政権をつくるのか。それはそれぞれの野党に問われている問題です。それはまた多くの国民にも問われている問題だと思います。打倒した後も、自民党内の政権のたらいまわしで、安倍政権の亜流政権に交代するだけでは、何の意味もありません。私たちは、「国民連合政府」という政権構想が、現時点で、安倍政権に代わる唯一の現実的で合理的な政権構想だと確信するものです。
本気で、選挙協力を成功させ、自公を打ち負かすためには、国民的大義が必要
第三に、本気で、野党の選挙協力を成功させ、自民党・公明党を打ち負かし、安倍政権を退陣に追い込もうとすれば、野党の側が明確な国民的大義を掲げることが、どうしても必要となります。昨年12月の総選挙で、私たちは、沖縄1区~4区までのすべてで選挙協力を行い、すべてで自民党候補を打ち破って、勝利をかちとりました。なぜ勝利ができたか。その最大の要因は、「辺野古新基地反対」という「オール沖縄」の声――県民的な大義を、高々と掲げてたたかいぬいたことにありました。
野党が選挙協力を行ったとしても、自公に打ち勝つのが容易ではないことは明らかです。勝利するためには、国民的大義をはっきりと示すことが必要です。私たちは、「戦争法廃止、立憲主義回復、国民連合政府」という国民的大義を明確に示し、そのもとで野党が結束してたたかってこそ、勝利をつかむことが可能になると考えます。野党が、共同して政権を担うというところまで互いに腹を固めてこそ、そして、その本気度が国民に伝わってこそ、激しい選挙戦を勝ち抜くことができる。これが私たちの考えです。
要は、野党が、本気になって日本の政治を変える志をもつかどうか。私たち野党に問われている問題の核心はここにあると考えます。
本気で立憲主義を取り戻そうとすれば、本気で安倍政権を打倒しようとすれば、本気で選挙協力を成功させようとすれば、「国民連合政府」の旗を掲げることがどうしても必要となるのではないでしょうか。これが私たちの立場であります。
「政策的に違う政党が、政権を共にすることには無理がある」という批判にこたえる
先日、あるメディアからの取材で、「政策的に違う部分がある政党が、暫定的な政権であれ、政権を共にすることには無理があるという批判にどうこたえますか」という質問がありました。こうした質問に対して、私は、まず、「立憲主義の回復」という課題は、あれこれの政策問題とは次元の違う、この国の根幹、土台を立て直す大問題だということを強調したいと思います。どんなに国会で多数をもつ政権であっても、憲法の枠組みは守らなくてはならない。これが立憲主義の要請です。ところが現状は、この根幹、土台が崩されているのです。それをそのままにしておけば、日本は無法国家になってしまいます。独裁政治になってしまいます。すなわち、日本の政治は、あれこれの政策を論じる土台そのものが損なわれかねないという非常事態にあります。「立憲主義を取り戻す」という課題は、政権をつくるうえで、これ以上の憲政上の大義はないといってよいほどの、大きな国民的大義を持つ課題であるということを、私は強調したいと思います。
それではその他の国政上の課題をどうするか。私たちは、「立憲主義の回復」という国民的大義での大同団結がはかられるならば、その他の国政上の問題についても、「相違点は横に置き、一致点で合意形成をはかる」という原則で対応していくことが可能になると考えています。
たとえば、日米安保条約についてどうするか。私たちは(安保条約)「廃棄」という方針ですが、国民連合政府の対応としては「凍結」するということになります。「凍結」とはどういうことか。戦争法廃止を前提として、第一に、これまでの条約と法律の枠内で対応する、第二に、現状からの改悪はやらない、第三に、政権として廃棄をめざす措置はとらないということです。野党間の政策上の相違点については、こういう精神で対応していきたいと私たちは考えています。
もちろん、一致点では前向きの仕事にもとりくんでいきます。重要なことは、野党5党には、安倍内閣不信任案を共同で提出したことに示されるように、「安倍政権の退陣・打倒」という点では、政治的一致がすでに存在するということです。そういう政治的一致を基礎におけば、安倍政権の民意を無視したさまざまな暴走に対しても、これを許さず、転換をはかるという立場に立って、さまざまな協力の一致点が見いだされるのではないでしょうか。一例ですが、たとえば、労働法制の問題では、この政府のもとで前向きの改革が実行できるのではないかと考えています。
こういう立場で政策的な調整を行えば、国民に責任をもった政権運営を行うことは、十分に可能だと私は考えています。
「個人の尊厳」を守り、大切にする社会への歴史的一歩を踏み出す政府となる
最後に「国民連合政府」が掲げる「立憲主義を取り戻す」という課題が、国民のみなさん一人ひとりにとってどういう意味を持つのかについてのべたいと思います。いま安倍政権が行っている政治の特徴を一言でいうならば、国家の暴走によって、「個人の尊厳」を踏みにじる政治と特徴づけることができるのではないでしょうか。それは戦争法でも、沖縄問題でも、原発問題でも、労働問題でも、税と社会保障の問題でも、あらゆる問題で言えることです。
それはまた、この政権が突然持ち出した「1億総活躍社会」なるスローガン、菅官房長官の「たくさん産んで国家に貢献」という言葉にもあらわれています。“国家のために働け、国家のために子どもを産め、GDP(国内総生産)600兆円を達成せよ”。国家と個人の関係がまさに逆立ちしているではありませんか。国家のために国民があるのではありません。国民の幸せのためにこそ国家があるのではないでしょうか。
それは、日本国憲法第13条が国家に命じていることです。この条項では冒頭に、「すべて国民は、個人として尊重される」とあります。私は、「個人の尊重」「個人の尊厳」こそ、近代民主主義の原点のなかの原点であると考えるものです。
「国民連合政府」が目標とする「立憲主義の回復」とは、すべての国民一人ひとりの「個人の尊厳」を守り、大切にする社会をつくることにほかなりません。
この間、戦争法案に反対して立ち上がった多くの国民は、まさに一人ひとりの意思で、「個人の尊厳」をかけて立ち上がりました。
これらの人々が広く手を結んでつくる「国民連合政府」は、文字通り「すべての国民」の「個人の尊厳」を守り、大切にする社会への歴史的一歩を踏み出す政府になると、私は確信をもって言いたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。