穀田氏は、同調査会が「定数削減ありき」で議論を進めていることを批判しました。
さらに「国民の意見を議会に反映させるツールである議員の削減は、主権者の民意反映に逆行し、国民の声を切り捨てるものだ」と強調。「主権者である国民の代表で構成される国会の役割でもっとも大事なことは、政府監視機能だ。定数削減によってその機能が低下することは明らかだ」と述べました。
穀田氏は、日本の国会議員定数が少ないことを示し、「定数削減の合理的根拠はどこにもない」と批判。今の自民党・安倍政権が有権者全体の17%の支持で獲得した「多数議席」のもと、国民多数の意見に反して安保法制を強行したことにふれ、「多くの国民が国会の議席と民意の乖離(かいり)を目のあたりにして、自分たちの声を無視するなとの思いを強めている」と指摘。「調査会が国民の意見も聞かず、国民的議論なしに非公開の議論で答申を決めるなどは禍根を残す」と述べました。
佐々木座長はこの日の会見で、次回調査会(16日)で議員定数の削減幅を示し、年内に答申をまとめる考えを示しました。
穀田氏の意見陳述
7日の「衆議院選挙制度に関する調査会」で行った日本共産党の穀田恵二国対委員長の意見陳述要旨を紹介します。小選挙区間の人口格差、最高裁判決について
昨年の総選挙において小選挙区間の人口格差が2・129倍で実施されたことをめぐり、先月、最高裁大法廷が「違憲状態」と判断しました。最高裁が、3回連続して、現行小選挙区制が投票価値の平等をめぐって憲法違反の欠陥をもっていることを、厳しく断罪したことは、重大です。
日本共産党は、1993年に「政治改革」と称して現行の小選挙区比例代表並立制が提案された時から、小選挙区制導入そのものに反対するとともに、小選挙区の区割りが発足当時から2倍を超える格差を容認しており、「投票価値の平等を踏みにじる違憲立法だ」と批判してきました。
小選挙区制の導入以降、区割り変更が行われても格差の問題は続き、一度も投票価値の平等を保障する抜本的格差是正ができていません。小選挙区制のもとでは、「格差」是正のために、市町村の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きが避けられず、有権者は選挙区の不自然な変更を強いられることになります。これは、小選挙区制がもともと、投票権の平等という憲法の原則とは両立できない制度であるということを明らかにするものです。
出発点から根本矛盾がある制度を強行し、維持し続けてきた各党の責任が厳しく問われています。
選挙制度の在り方について
選挙制度を考えるにあたって、基本にたちかえることが必要です。選挙制度は、民主主義の根幹であり、主権者である国民の参政権の問題です。選挙制度を考える基本原則は、国民の多様な民意を鏡にうつすように、できる限り正確に反映することでなければなりません。
では、現行制度はどうか。最大の問題は、小選挙区比例代表並立制によって、得票率と獲得議席に著しい乖離(かいり)をつくりだすことにあります。また、議席に反映しない投票、いわゆる「死票」が、各小選挙区投票の過半数にのぼることです。
比較第1党の「虚構の多数」をつくり出す一方で、少数政党は、得票率にみあった議席配分を得られず、獲得議席を大幅に切り縮められ、民意の反映を大きくゆがめています。
今の自民党・安倍政権も、昨年末の総選挙で、有権者全体の16・99%の支持で獲得した「多数議席」のもとで成り立っています。
先の通常国会で、国民多数が反対する中、安倍政権は安保法制を強行成立させました。まさに、小選挙区制の害悪を明白に示すものです。
わが党は、現行制度の提案当初から、「小選挙区制が、選挙制度の基本である民意の公正な議席への反映をゆがめ、比較第1党が虚構の多数を得ることで強権政治を推し進めようとするものだ」と批判してきました。この制度は廃止するしかありません。
議員定数削減について
調査会への諮問事項に、「各党の総選挙公約にある衆議院議員定数削減の処理」とありますが、ここで言われている「総選挙公約」とは2012年総選挙のことです。
その後の13年参院選、14年総選挙の各党の選挙公約を見ると、定数削減の数字は示さず、形だけのスローガンになっているのが現状です。しかも、各党とも、なぜ、どの程度、定数削減をしなければならないのか、まったく根拠を述べていません。にもかかわらず、調査会が「定数削減ありき」で検討を行うことは、甚だ疑問です。
議員定数のあり方は、国民の代表をどう選ぶかという選挙制度の根幹をなす問題です。来年の参院選から、選挙権年齢が18歳に引き下げられます。
わが国の議会制民主主義の発展のため、国民の代表の在り方について国民的議論をする機会とすべきです。しかし、定数削減の議論が、この点から出発していないと思います。
11年から14年にかけて行われた、全党が参加した実務者協議では、「議員定数がどうあるべきか」について、まともに議論されず、わが党以外からも「議論が不十分だ」との指摘がありました。
最近の調査会でも、「どの程度の国会議員数で国会がきちんと機能するのか、選挙の形で国民の声を吸い上げるのに国会議員1人当たりの人口はどの程度が適正かということを議論したうえで定数削減を考えるべき」との発言があったとされています。議員定数のあり方の議論をつくさず、「どれだけ定数を減らすか」という議論には、まったく道理がありません。調査会は、定数削減について、どのような合理的根拠を示そうとしているのでしょうか。
国民の意見を議会に反映させるツールである議員の削減は、主権者の民意反映に逆行し、国民の声を切り捨てるものです。
主権者である国民の代表で構成される国会の役割でもっとも大事なことは、政府を監視し暴走させないようにすることです。定数削減によって国会の政府監視機能が低下することは明らかです。
また、わが国の国会議員総定数は、わが国の議会政治史上から見ても、国際的に見ても、少ないことは明瞭であり、定数削減を行うことの合理的根拠はどこにもありません。ましてや、投票価値の不平等や民意の反映が問題になっているときに「身を切る改革」といって定数削減を持ち出すのは、きわめて不当であるとともに、筋違いであることも指摘しておきます。
現行選挙制度の検証について
この調査会の諮問事項の第1は、「現行制度を含めた選挙制度の評価」です。諮問事項の中に、この事項が入った経緯は、各党協議の中で、唯一、全党が合意した「確認事項」(13年6月)で「よりよい選挙制度を構築する観点から、現行並立制の功罪を広く評価・検証し…」としたことも踏まえたものです。
ところが、調査会の議事概要を見ると、第10回、第11回の議題として「小選挙区比例代表並立制の検証」がありますが、その中身は各党陳述を受けての試算や重複立候補についての議論でした。なぜ、現行制度そのものの評価・検証を行わないのでしょうか。
◎選挙制度と主権者・国民の関係について
この夏、安保法制をめぐって、多くの国民が、民主主義が問われていると発言し行動を起こしました。その中で、国会の議席と民意の乖離を目の当たりにし、国民は「自分たちの声を無視するな」との思いを強めています。
この調査会で、「国民の視点で議論すべき」との発言もあったようですが、調査会として、国民に向き合い、国民の声を反映させるための努力をしたのでしょうか。
主権者である国民の意見も聞かず、国民的な議論なしに、調査会の非公開の議論で、現行小選挙区制を温存し、議員定数削減をする答申を決定するなど、後々まで禍根を残すと指摘し、意見陳述を終わります。