主張

法人税の連続軽減

稼ぐ企業減税おかしくないか

 自民・公明の与党が2016年度の税制改定大綱で、一部の品目の税率を8%に据え置くだけで17年4月からの消費税の10%への増税を押し切るとともに、法人税については計画を前倒しして法人実効税率を20%台まで引き下げることを打ち出しました。ほとんど大企業への恩恵にしかならない法人税減税は3年連続です。見過ごせないのは大綱が、「『稼ぐ力』のある企業等の税負担を軽減する」と、大企業が対象であることをあからさまに主張していることです。なりふり構わない大企業減税は税の民主主義をゆがめ、経済の立て直しにもつながりません。

3年間で7ポイントもの減税

 国税の法人税と地方税の法人事業税や法人住民税などの税率を合わせた法人実効税率は引き下げが続いており、安倍晋三政権になってからも14年度には東日本大震災の復興財源に充てるため上乗せされていた分を廃止、その後も首相の強い指示で15年度、16年度と実効税率の引き下げが打ち出されてきました、今回の大綱では17年度以降に予定していた20%台の実現を前倒しし、実効税率を29・97%にするとして3年連続の減税を狙います。実効税率は、37%だった13年度に比べれば7ポイント以上も下がります。さらに19年度には29・74%に引き下げるとしています。

 本来税金は、直接税中心で所得や資産が多い人ほど多く課税するのが民主的な原則です。安倍政権は昨年6月、政府の税制調査会に法人税改革の方針を出させており、16年度はその2年目だと前倒しを強行します。消費税の導入などで日本の税制は大きくゆがんでいますが、法人税も「稼ぐ企業」は軽減することが続けば税制はさらにゆがむことになります。税金をたくさん負担すべき「稼ぐ企業」が負担しなければ税収も減ります。

 大綱は「稼ぐ力」のある企業の税負担を軽くする理由として企業に収益力拡大に向けた投資や賃上げが可能な体質への転換を促すことを明記しました。大企業のもうけを増やせば回りまわって国民が潤うという「トリクルダウン」(したたり落ち)の経済政策「アベノミクス」は安倍政権の売り物ですが、税制改定大綱はそれに拍車をかけて露骨に推進するものです。

 しかし、実際には安倍政権になって大企業は記録的なもうけを続けているのに、大部分が企業の内部留保や手持ちの現金・預金などに回り、設備投資にも、労働者の賃金にもほとんど回っていないのが現実です。安倍政権がいうような「経済の好循環」は実現しておらず、「アベノミクス」の破綻は明らかです。「稼ぐ企業」の税負担を軽減するような法人税減税を強行する道理はありません。大企業減税は中止すべきです。

中小企業に犠牲押し付け

 大綱では法人への「課税ベースの拡大」などで財源を確保するとして大企業中心に減税する一方、外形標準課税の拡大などでこれまで法人税を負担していない赤字企業や中堅企業への課税を強化することを持ち出しています。まさに赤字企業などの負担で、もうけている大企業に大盤振る舞いするのが「稼ぐ企業」の税負担軽減の正体であるのは明らかです。

 大企業の「一人勝ち」を促進する法人税減税などだれも求めていません。実効税率の引き下げは中止し民主的原則を実現すべきです。