主張
甘利経済相の疑惑
徹底解明し責任を明確にせよ
安倍晋三政権の重要閣僚で、首相とも親しいといわれる甘利明経済再生相をめぐり、千葉県内の建設会社と独立行政法人都市再生機構(UR)とのトラブルにさいし、補償交渉を口利きし、見返りに現金などを受け取っていたなどの疑惑が週刊誌で報道されました。甘利氏側が受け取った現金や飲食接待は総額1200万円にのぼり、甘利氏にも少なくとも100万円が手渡されていたとされています。政治資金収支報告書に記載されていたのはごく一部です。事実なら政治資金規正法だけでなく、あっせん利得処罰法にも違反する可能性がある重大問題です。
当事者の重い告発もとに
甘利氏は報道に対し、「国民に説明責任を果たしていきたい」と述べる一方、「私自身は国民から後ろ指を指される行動は取ったことはない」と主張しています。21日の国会答弁でも、「しっかり調査し説明責任を果たす」というだけです。「私自身」といって自らの法律違反は認めず、秘書などに責任を押し付ける姿勢をにじませました。
週刊誌が報道した疑惑は、現金などを渡した建設会社の関係者が資料やメモ、録音データなどとともに告発したものだとされています。伝聞ではない重いものです。
報道された内容は建設会社とURとの道路建設や土地買収をめぐるトラブルを解決するため、まず2013年に建設会社側が甘利氏の公設秘書や神奈川県大和市にある甘利氏の地元事務所の口利きでURと交渉、補償金を手に入れ、見返りに500万円を甘利氏側に提供したといいます。当時の政治資金収支報告書に記載されたのは200万円だけです。
建設会社と甘利氏側との付き合いはその後も続き、一昨年には新たなトラブルが発生して、建設会社は再び甘利氏の事務所の口利きで、URと交渉を続けています。国土交通省の局長の関与も疑われます。この間提供された現金などは総額1200万円に達します。
重大なのは甘利氏自身の関与で、13年11月には建設会社社長らが大臣室で甘利氏に有名和菓子店のようかんと50万円入りの封筒を渡し、14年2月にも大和市の地元事務所で甘利氏に新たなトラブルについて説明するとともに50万円を渡したといいます。甘利氏は国会答弁でそれぞれ面談は認めましたが、現金の受け渡しについては調査したいと答えただけでした。
2000年に制定されたあっせん利得処罰法では、国会議員が請託を受けて官庁やURなどに職務上の行為を働きかけ、見返りに現金などを受け取れば3年以下の懲役です。国会議員の秘書にも2年以下の懲役などの罰則があります。ことは重大であり、甘利氏が説明責任を果たすのは当然ですが、責任はそれだけでは済まされません。
安倍政権の姿勢問われる
国会はもちろん、URを監督する国交省なども徹底して甘利氏をめぐる疑惑を究明すべきです。
甘利氏を一貫して重要閣僚として処遇してきた任命権者の安倍首相の責任はとりわけ重大です。甘利氏の重大な疑惑が明らかになってもなお、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の司令塔役や、環太平洋連携協定(TPP)の交渉責任者の任を甘利氏にゆだね続けることができるのか。安倍政権の姿勢が厳しく問われています。