日本共産党の小池晃政策委員長は1月31日のNHK番組「日曜討論」で、甘利明・前経済再生相の口利き疑惑や、同氏が主導してきた「アベノミクス」、環太平洋連携協定(TPP)について、各党の政策責任者と議論しました。

甘利氏の口利き疑惑・閣僚辞任

最大の疑惑は口利き問題 国会招致で真相解明を

 甘利氏の疑惑をめぐり、自民党の小野寺五典政調会長代理は「甘利氏はしっかり説明している。秘書に脇の甘いところがあった」と、秘書に責任転嫁する姿勢に終始。「甘利氏の説明をしっかり受け止めていくことが必要だ」として、甘利氏自身による調査結果を待つ考えを示しました。小池氏は次のように指摘しました。

 小池 最大の疑惑は、現職閣僚が口利きして、その見返りに多額の金を受け取ったというものです。甘利氏は、現金を受け取ったことは認め、業者からトラブルの説明を受け、秘書が12回もUR(都市再生機構)と接触しながら、「口利きはしていない」と言っている。これは信用できない。疑惑は会見でさらに深まったし、関係者の言い分が違うわけだから、国会招致して、徹底的に真相解明する必要がある。辞任で一件落着にはなりません。

 企業は見返りを期待して献金するわけです。甘利さんは4年間でパーティー券(収入)は3億円を超えている。企業がパーティー券を買うことを含めて企業・団体献金禁止法案を私どもは提案している。継続審議になっていますから、ぜひこれを審議しましょう。

 総理の任命責任は重大で、疑惑解明の先頭に立つべきなのに、甘利氏の辞任表明後も「違法なことは一切ない」とかばっています。これではダメです。

企業・団体献金禁止法案

議論始め、国会の責任果たせ 秘書への現金、あっせん利得の違法性十分

 小池氏の発言を受け、民主党の細野豪志政調会長は「改めて企業・団体献金禁止法案を出したい」との考えを示し、維新の党、おおさか維新の会なども企業・団体献金禁止に向け各党で議論を行うべきだと明言しました。小池氏は次のように強調しました。

 小池 企業は善意でお金を出しているわけではなく、本質的に賄賂性を持っている。企業・団体献金を全面禁止する議論を始めないと、国会の責任を果たしたことになりません。

 経過を見ると、甘利氏の秘書がURに初めて面談した2カ月後に、URから業者に2億超の補償金が出され、その月に500万円が業者から秘書に渡っている。これで口利きがないといえるか。あっせん利得というのは権限に基づく影響力を行使して、あっせんで報酬を得れば成立するので、これが適用される可能性は高い。違法性が十分あるという行為ではないか。

甘利氏辞任の影響

経済の司令塔が腐りきっていた 閣僚交代より政治の転換を

 自民党の小野寺氏は企業・団体献金禁止をめぐり、「もっと大きな意味で各党が議論するべきだ」と甘利氏の問題と切り離す姿勢を示しました。司会や各党出席者からは、甘利氏が主導してきた経済政策やTPPをめぐる国会審議への悪影響を懸念する声が相次ぎました。小池氏は次のように指摘しました。

 小池 TPPは日本の食料・農業・食の安全・経済主権を米国に売り渡すもので、私たちは反対していますから、誰が閣僚になろうが反対の立場で臨みます。

 経済政策の司令塔というが、(甘利氏の疑惑は)その土台がもう腐りきっていたという話だ。だれが閣僚になろうが、「アベノミクス」の行き詰まりと破綻は明白だし、国民の暮らしを直接温める経済政策に転換しなければいけない。閣僚を代えるだけではなくて、政治を、政策を変えなければいけない。

安倍政権の賃上げ政策

同一労働同一賃金というが中身は従来の均衡処遇

 経済政策をめぐり、安倍政権が課題にあげる労働者の賃上げ問題が議論されました。

 小野寺氏は「賃金が目に見えて上がってこない。企業が内部留保をためるだけでなく、どう賃金に反映し、経済の底上げにつなげるか」と、「アベノミクス」の行き詰まりを認めました。安倍晋三首相が施政方針演説でふれた同一労働同一賃金の実現については、「正規(社員)と非正規(社員)で、責任の重さや役職に違いがある。そこのバランスをとって決めていくのがわが党の方針だ」と説明しました。小池氏は次のように反論しました。

 小池 同一労働同一賃金といいながら、今の説明はやはり「均等待遇」ではなく、従来からの「均衡処遇」なんですよ。バランスさえとればよく、差別をなくすという話ではない。それではダメだ。

 じつは昨年の労働者派遣法(改悪)の時に議論になって、安倍首相は「わが国は同一労働同一賃金は直ちに理解を得るのは難しい」と言った。では、その誤りを認めるのかという話だ。労働者派遣法の議論をやり直さないといけない。

 それから、ILO(国際労働機関)から日本は同一労働同一賃金で8回勧告を受けている。法律にちゃんと同一労働同一賃金の原則を書き込めと。ところがやっていない。だから、労働基準法にもちゃんと同一労働同一賃金の原則を書き込むのか。具体的に何をやるのか。これが問われている。すぐにできるわけですから、本当にやろうというのであれば、直ちにそういう作業に着手すべきだ。

 口だけ同一労働同一賃金をいって、中身は従来の「均衡処遇」ということではダメですよ。

格差是正と税制度

日本の貧困の現状を直視して 消費税増税の中止、大企業優遇の見直しを

 格差是正に向けた税制改正についても議論に。小野寺氏は、民主党が提案している所得税や相続税の累進課税の強化について「いろんな経済状況を見ながら対応していく」と慎重な姿勢にとどまりました。小池氏は次のように提案しました。

 小池 私は、日本の貧困が本当に進んでいる現状をしっかり見据えるべきだと思います。相対的貧困率がどんどん上昇している。貧困と格差を是正するのかどうかを、経済政策の基準にすべきで、そういう点で税制を考えれば、私は、消費税増税は全く間違いだと思います。「軽減税率」といわれるが、「軽減」ではなくて「据え置き」なわけで、しかも、1世帯あたり6万2000円の負担増です。

 消費税増税はきっぱり中止して、所得税や相続税の累進性を強化する。それから大企業に対しては、いろいろな優遇制度がありますから、これを見直す。これで貧困と格差をなくしていくことが、経済成長のもっとも大きなエンジンである家計を温め、持続的な成長になっていく。これこそ好循環だと思います。

「アベノミクス」

企業優先で破綻は明白 国民本位の抜本転換こそ

 「アベノミクス」の司令塔と言われた甘利氏が辞任したことに関わり、民主党の細野氏は「(大企業のもうけが国民に滴り落ちるという)トリクルダウン型の政策はうまくいかない」と転換を主張。小池氏は次のように強調しました。

 小池 「アベノミクス」は完全に破綻してきているわけで、トリクルダウンではうまくいかない。「アベノミクス」を継続したら日本の経済は壊れます。

 矛盾だらけなんです。賃上げといいながら、一方で労働の規制緩和を進める。内部留保はけしからんといいつつ、法人税は減税する。

 結局、「企業が活躍しやすい社会」をつくれば、いずれ富が国民に回っていくというが、回らないわけです。戦後、マイナス成長が7回あるにもかかわらず、企業収益が過去最高というのは異常事態なわけで、これをただす方向に抜本転換しなければいけない。