主張

アベノミクス破綻

“継承”では経済再生できぬ

 口利き疑惑で辞任した甘利明氏に代わって石原伸晃氏が経済財政・再生担当相に就任し、国会の予算審議が再開しています。2日の衆参本会議でも3日からの衆院予算委でも、安倍晋三首相や石原氏は、「これまでのアベノミクスの成果の上に、デフレ脱却・経済再生と財政健全化をさらに前進させる」と判で押したような答弁です。安倍政権の経済政策「アベノミクス」が成果を上げるどころか国民生活の向上に結び付かず、自ら掲げた物価上昇目標の達成さえ先延ばしを重ねるように破綻は明らかです。その反省もなく継承するだけでは経済再生は実現しません。

物価目標達成も先延ばし

 国会答弁で安倍首相は、「正念場にあるアベノミクスを前進させるため成長戦略の実行に全力を挙げる」などと主張し、石原氏は「2%の物価安定目標を実現することを引き続き期待する」と述べるなど、アベノミクスには何の問題もないような態度です。全く現状を見ようとしないものです。

 もともとアベノミクスは、異次元の金融政策と財政出動、規制緩和などの成長政策で2%を目標に消費者物価を上昇させ、円安と株高を実現すれば、雇用や消費も増え、経済再生が実現するというものです。ところが安倍政権発足以来3年間たっても、記録的に増えたのは大企業の利益と内部留保だけで、雇用は不安定で賃金も上がらず、消費も増えていません。

 経済成長で最も大切なのは国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費ですが、最新の家計調査でも、2人以上世帯の昨年12月の消費支出は1年前に比べ名目で4・2%、実質で4・4%も減っています。雇用は上向いても不安定な非正規が中心で、消費税の引き上げもあり、実質賃金は3年間で5%も減っています。大企業がもうかれば家計も潤うという「トリクルダウン」(したたり落ち)の筋書きは成り立ちません。

 深刻なのは、消費の不振や石油などの国際価格低下が続く中で、日銀や政府が掲げてきた2%の消費者物価上昇目標の達成自体困難になり、株価も乱高下を繰り返すようになっていることです。金融を緩和し、2%の物価上昇目標を達成すれば賃金や消費が増えるというのは根拠のない主張ですが、その目標を掲げる日銀が、目標達成を「2017年度前半ごろ」と先延ばししたうえ、目標達成のためさらに金融を緩和するとして異例な「マイナス金利」の導入を決めたのは、アベノミクスの文字通りの破綻を証明するものです。

 銀行が日銀に預ける当座預金の金利を「マイナス」にしたため、国民が銀行に預ける預金金利などが相次いで引き下げられています。破綻したアベノミクスを続けるため、間違った政策をさらに積み重ねるのは悪政の極みであり、経済のゆがみを拡大するアベノミクスは直ちに中止すべきです。

暮らしを立て直してこそ

 経済紙として有名なイギリスのフィナンシャル・タイムズは今年初めの特集で、「アベノミクスは日本経済を不振に陥らせているものが何かを正しく特定しているのか」と批判、企業の利益でなく労働者の所得を高めない限り、経済は立て直せないと指摘します。

 破綻したアベノミクスは継承するが暮らしの立て直しには背を向けるでは、国際的に通用しません。