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日本共産党の志位和夫委員長が4日の衆院予算委員会で行った質問。戦争法廃止がなぜ一刻の猶予もならないのかについて、南スーダンPKO(国連平和維持活動)での自衛隊任務拡大と、米軍主導の「有志連合」による過激組織ISに対する軍事作戦への自衛隊参加問題を取り上げ、徹底追及しました。
かつてのPKOの主要任務は、国連の大原則である内政不干渉・中立性にもとづく、停戦監視でした。
しかし1994年に発生したアフリカ・ルワンダでの大虐殺を契機に、ある国で重大な人権侵害が起こり、その国の政府が何もしない、または加害側に立つ場合には、国連は武力行使をしてでも住民を保護すべきという考えが起こります。次第にPKOの主要任務が停戦監視から、国連自身が「交戦主体」として「住民保護」のため武力行使を行う形へ変容しました。首相も「国連PKOの任務は文民(住民)保護が重要性を増しつつある」と認めました。
現在アフリカで活動中の八つのPKO(地図参照)全てで、武力を行使しての「住民保護」が位置づけられ、停戦が破れて戦闘状態に入っても撤退しません。
志位氏は「武力を行使しての『住民保護』というのは生やさしい話ではない」と指摘。国連PKO幹部として東ティモールなど世界各地で武装解除などに携わった、伊勢崎賢治氏(東京外語大教授)の証言を紹介し、PKO部隊の実態を明らかにしました。(別項)
政府は、自衛隊が国連PKOに参加する際には「PKO5原則」(停戦合意の成立、すべての紛争当事者の受け入れ同意、中立的立場、いずれかが満たされない場合は撤収など)にそくして行う、「憲法9条で禁じた武力行使を行うことはない」としてきました。しかし伊勢崎氏は「停戦合意が破られてから住民保護という本来の任務が始まる。『それができないなら、初めから来るな』という世界になっていることに(政府は)全く気付いていない。PKO5原則や憲法9条との整合性は、PKOそのものの変質によって完全に破たんしている」と現場の立場で証言しています。
志位氏は「今日の国連PKOは、憲法9条をもつ日本がとうてい参加できないようなものに変化している。そこを見ずに政府は20年前の議論をしている」と批判しました。
政府はこう繰り返し、自衛隊派兵を正当化してきました。しかし実態はどうか―。
南スーダンでは、2013年12月に大統領派と副大統領派の内戦状態に入って以来、数千人が殺害、240万人が家を追われたとされ、国連は「恐るべき人権侵害」と告発しています。(2015年8月20日の専門家委員会暫定報告書)
中谷元・防衛相は、昨年8月に成立した「和平合意」などで「PKO5原則は維持されており、(自衛隊が活動する首都の)ジュバは平穏だ」と従来の認識を繰り返しました。
しかし志位氏は、「和平合意」後も国連報告書が「停戦違反と、和平合意実施の当初期限を当事者が守れなかった」と履行に懸念を示し、「武力紛争が継続」(15年11月23日の事務総長特別報告)と明記されていることを指摘しました。
志位 南スーダンでは現瞬間も武力紛争が続いている。
岸田文雄外相 暫定政府の閣僚の配分も決定され、政府側と反政府側の間で合意履行に向けて、取り組みが続いている。
志位 その認識は全くダメだ。(今年)1月22日が設立期限だった政府はつくられていないではないか。
志位氏は、このような現状を指摘した上で、今年1月21日に発表された直近の国連報告書を提示。同報告が「礼拝所や病院といった伝統的な避難場所、国連の基地まで攻撃され、安全な場所はきわめてわずか」、「情け容赦ない戦闘が続いている」(国連人権高等弁務官事務所とUNMISS)と、「和平合意」が全く実行されていない実態を記していることを指摘し、「この報告書を知らないのか」と迫りました。
岸田外相はそれでも「武力紛争が発生しているとは考えていない」と強弁。志位氏は、「これだけ国連報告書に基づいて事実を示しても、内戦状態、武力紛争と認めないのは、自衛隊を派兵しながらあまりに無責任だ」と述べました。
安倍首相は、相手国の「受け入れ同意の安定的維持」や「国や国に準じる敵対組織が存在しない」ことが派兵の要件であり、武力行使にあたらないなどとしました。
志位氏は、首相が武力行使にあたらない根拠とする「受け入れ同意の維持」や「国や国に準じる敵対組織が存在しない」という二つの条件は、どちらも南スーダンに存在していないではないかと追及。15年4~8月のUNMISSに対する危害行為・攻撃102件のうち92件は「政府軍・治安部隊による」とする国連報告(15年8月21日の事務総長報告)を示し、反政府勢力だけでなく政府軍によってもPKO要員が攻撃にさらされている深刻な実態を突きつけました。
志位 政府軍が住民やUNMISSを攻撃すれば、自衛隊は政府軍と銃火を交えることになる。憲法9条が禁止する海外での武力行使そのものだ。
中谷防衛相 このような妨害は、現場レベルの偶発的なものだ。
中谷氏は現場自衛官の命を預かる立場とは思えない無責任な答弁に終始し、最後まで質問にまともに答えられませんでした。
その上で志位氏は、米英仏露などが強化する対IS空爆の実態を明らかにし、「日本はアメリカ主導の『有志連合』の一員だ。『有志連合』による空爆によってどれだけの民間人が犠牲になっているのか把握しているのか」とただしました。
岸田文雄外相は「空爆による犠牲者を各国政府は公表していない」とのべ、無責任な姿勢を示しました。
志位氏は、14年8月~16年1月29日までに2029人~2635人の民間人が犠牲になったとの民間推計も示して「総理は、『有志連合』を支持するというが、その空爆でどれだけの民間人が犠牲になったか把握すらしていない。都合の悪いことに目をふさぐというのはあまりに責任のない態度ではないか」と批判しました。
志位氏は、政府が対IS空爆への自衛隊の軍事支援について「政策判断として考えていない」としながら、「法律的にはありうる」と答弁してきたことの重大性を指摘。「国際平和支援法」が対IS軍事作戦での兵たん支援を可能としている三つの仕掛けを明らかにしました。
第一は、活動の根拠となる国連決議(総会または安保理)が存在することです。
国連安保理決議2170号と2199号は、ISが「国際の平和及び安全に対する脅威である」という旨を言及し、加盟国にISに対する措置を求めています。
志位氏は、これについて、中谷元・防衛相が昨年6月の参院外交防衛委員会で、「これらの安保理決議は同法(国際平和支援法)の3条1項1号のロに規定する決議に該当しうる」と述べていたことを改めて確認しました。
第二は、脅威を除去するために国際社会が共同して行動を行っていることです。「有志連合」は、国連決議に基づいて行動しているとしています。
第三は、わが国が主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められることです。
志位氏は「要は日本政府の『政策判断』いかんということだ。すなわち日本政府が『必要だ』という『政策判断』を行えば、対ISの軍事作戦への自衛隊の兵たん支援は法律上可能になるということだ」と強調しました。
そこで志位氏は、安倍首相が「政策判断としてISIL(IS)に対する軍事作戦に対して後方支援を行うことをまったく考えていない」と述べていることを挙げて、「軍事支援をやらないという『政策判断』を行っている理由は何か」とただしました。
首相は「非軍事分野において国際社会におけるわが国の責任を果たしていくことが適切である」と繰り返し、まともな理由を示せません。
志位氏は「『有志連合』による空爆の強化は賛成できないから日本は軍事支援を行わないというならば、そういう『政策判断』を行っている理由はよく理解できる。しかし、空爆を行っている『有志連合』を支持しながら、なぜ、日本は軍事支援をやらないという政策判断を行っているのか」と追及しました。
志位氏がさらに「アメリカが状況いかんで、対IS軍事作戦をエスカレートさせることは大いにありうることだ。そのときに日本に支援を要請してきたらどうするのか。その場合に『拒否する』と明言できるのか」とただすと、首相は「お断りする」と言いながらも拒否する根拠をなんら説明できませんでした。
志位氏は、米国のカーター国防長官が、昨年12月の上院軍事委員会で、対IS軍事作戦に関して「約40カ国に協力要請した」と発言し、航空機の派遣や武器と弾薬の提供を要求したと説明していると指摘。「先方がそう言っている。要請があったかどうか明らかにすべきだ」と重ねて迫りました。
米国からの支援要請の有無すら明らかにしない日本政府。オーストラリアの姿勢は対照的です。
志位氏はマリス・ペイン豪国防相が1月13日に、米国からの要請があったと明らかにした上で、「有志連合」への貢献の拡大に応じない声明を発表していると述べ、「要請があったらあったという。拒否したら拒否したという。これが普通の独立国ではないか」と批判しました。
志位氏は、この質疑で、(1)日本政府が「必要だ」という「政策判断」を行えば、対IS軍事作戦への自衛隊の兵たん支援は法律上可能になる(2)首相は「政策判断」として「後方支援」を考えていないというが、そういう「政策判断」を行っている理由を説明できなかった(3)米国の支援要請を拒否すると言ったものの、その理由を説明できなかった(4)米国から支援の要請があったかどうかについても、要請の有無さえ明らかにしなかった―という四つのことが明らかになったと強調。「こんな姿勢でどうして『主体的判断』ができるか。アメリカが対IS軍事作戦を拡大し、自衛隊の支援要請をしてきた場合には、対IS軍事作戦の兵たん支援に自衛隊を参加させることになるのは明らかだ」と厳しく批判しました。
任 務
「住民保護」のために武力行使
首相「認識している」
志位氏は、国連PKOの任務がこの20年間余で大幅に変化し、任務部隊が「交戦主体」として武力の行使を求められる実態を明らかにしました。かつてのPKOの主要任務は、国連の大原則である内政不干渉・中立性にもとづく、停戦監視でした。
しかし1994年に発生したアフリカ・ルワンダでの大虐殺を契機に、ある国で重大な人権侵害が起こり、その国の政府が何もしない、または加害側に立つ場合には、国連は武力行使をしてでも住民を保護すべきという考えが起こります。次第にPKOの主要任務が停戦監視から、国連自身が「交戦主体」として「住民保護」のため武力行使を行う形へ変容しました。首相も「国連PKOの任務は文民(住民)保護が重要性を増しつつある」と認めました。
現在アフリカで活動中の八つのPKO(地図参照)全てで、武力を行使しての「住民保護」が位置づけられ、停戦が破れて戦闘状態に入っても撤退しません。
志位氏は「武力を行使しての『住民保護』というのは生やさしい話ではない」と指摘。国連PKO幹部として東ティモールなど世界各地で武装解除などに携わった、伊勢崎賢治氏(東京外語大教授)の証言を紹介し、PKO部隊の実態を明らかにしました。(別項)
政府は、自衛隊が国連PKOに参加する際には「PKO5原則」(停戦合意の成立、すべての紛争当事者の受け入れ同意、中立的立場、いずれかが満たされない場合は撤収など)にそくして行う、「憲法9条で禁じた武力行使を行うことはない」としてきました。しかし伊勢崎氏は「停戦合意が破られてから住民保護という本来の任務が始まる。『それができないなら、初めから来るな』という世界になっていることに(政府は)全く気付いていない。PKO5原則や憲法9条との整合性は、PKOそのものの変質によって完全に破たんしている」と現場の立場で証言しています。
志位氏は「今日の国連PKOは、憲法9条をもつ日本がとうてい参加できないようなものに変化している。そこを見ずに政府は20年前の議論をしている」と批判しました。
伊勢崎賢治さんの証言
インドネシアから独立した東ティモールの暫定知事を務めて、PKF(平和維持軍)を統括していたとき、反独立派の住民によってPKFの一員であるニュージーランド軍の兵士が殺されました。彼は首が掻(か)き切られて耳がそぎ落とされた遺体で見つかりました。
その時、僕らは復讐(ふくしゅう)に駆られてしまった。僕は武器使用基準を緩めました。敵を目視したら警告なしで発砲していいと。法の裁きを受けさせるために犯人を拘束するという警察行動ではありません。敵のせん滅が目的です。現場はどんどん「復讐戦」の様相を呈してきました。
結果、全軍、武装ヘリまで動員して追い詰めていったのです。民家などしらみつぶしにして、十数名の敵を皆殺しにした。全員射殺したので、そのなかに民間人がいたかどうかは分かりません。
現 状
内戦状態、武力紛争が続く
国連も「情け容赦ない戦闘続く」
「南スーダンはおおむね平穏であり、停戦合意などのPKO5原則は守られている」政府はこう繰り返し、自衛隊派兵を正当化してきました。しかし実態はどうか―。
南スーダンでは、2013年12月に大統領派と副大統領派の内戦状態に入って以来、数千人が殺害、240万人が家を追われたとされ、国連は「恐るべき人権侵害」と告発しています。(2015年8月20日の専門家委員会暫定報告書)
中谷元・防衛相は、昨年8月に成立した「和平合意」などで「PKO5原則は維持されており、(自衛隊が活動する首都の)ジュバは平穏だ」と従来の認識を繰り返しました。
しかし志位氏は、「和平合意」後も国連報告書が「停戦違反と、和平合意実施の当初期限を当事者が守れなかった」と履行に懸念を示し、「武力紛争が継続」(15年11月23日の事務総長特別報告)と明記されていることを指摘しました。
志位 南スーダンでは現瞬間も武力紛争が続いている。
岸田文雄外相 暫定政府の閣僚の配分も決定され、政府側と反政府側の間で合意履行に向けて、取り組みが続いている。
志位 その認識は全くダメだ。(今年)1月22日が設立期限だった政府はつくられていないではないか。
志位氏は、このような現状を指摘した上で、今年1月21日に発表された直近の国連報告書を提示。同報告が「礼拝所や病院といった伝統的な避難場所、国連の基地まで攻撃され、安全な場所はきわめてわずか」、「情け容赦ない戦闘が続いている」(国連人権高等弁務官事務所とUNMISS)と、「和平合意」が全く実行されていない実態を記していることを指摘し、「この報告書を知らないのか」と迫りました。
岸田外相はそれでも「武力紛争が発生しているとは考えていない」と強弁。志位氏は、「これだけ国連報告書に基づいて事実を示しても、内戦状態、武力紛争と認めないのは、自衛隊を派兵しながらあまりに無責任だ」と述べました。
国連南スーダン派遣団(UNMISS)
2011年7月9日にスーダンから分離・独立した南スーダンの治安維持を目的として創設されました。「住民保護」を重点的に行い、そのための「必要なあらゆる措置」-武力行使も認めています。
現在で軍事要員1万1892人、うち自衛隊は353人となっています。要員の死者は文民を含めて36人に達しています。
自衛隊
政府軍が国連PKOを攻撃
任務拡大すれば武力行使に
志位氏は、改定PKO法で南スーダンの自衛隊部隊に「安全確保業務」「駆けつけ警護」の新任務が与えられれば、「自衛隊が戦後初めて『殺し、殺される』危険が現実のものになる」と強調。新任務での武器使用が憲法9条の禁じる「海外での武力行使」になぜあたらないのか、根拠を示すよう首相に迫りました。安倍首相は、相手国の「受け入れ同意の安定的維持」や「国や国に準じる敵対組織が存在しない」ことが派兵の要件であり、武力行使にあたらないなどとしました。
志位氏は、首相が武力行使にあたらない根拠とする「受け入れ同意の維持」や「国や国に準じる敵対組織が存在しない」という二つの条件は、どちらも南スーダンに存在していないではないかと追及。15年4~8月のUNMISSに対する危害行為・攻撃102件のうち92件は「政府軍・治安部隊による」とする国連報告(15年8月21日の事務総長報告)を示し、反政府勢力だけでなく政府軍によってもPKO要員が攻撃にさらされている深刻な実態を突きつけました。
志位 政府軍が住民やUNMISSを攻撃すれば、自衛隊は政府軍と銃火を交えることになる。憲法9条が禁止する海外での武力行使そのものだ。
中谷防衛相 このような妨害は、現場レベルの偶発的なものだ。
中谷氏は現場自衛官の命を預かる立場とは思えない無責任な答弁に終始し、最後まで質問にまともに答えられませんでした。
駆けつけ警護 “安全確保”
武器使用拡大
戦争法のうちの一つ、改定されたPKO法(国連平和協力法)では、自衛隊の任務が大幅に拡大しました。
同法では、第一に、「安全確保業務」と「駆けつけ警護」の二つの活動が従来のPKO法に加えて新設されました。第二に、武器使用基準が拡大され、任務遂行・業務を妨害する行為の排除のための武器使用が可能となりました。従来は「自己保存」のため武器使用のみの容認でしたが、戦後初めて自衛隊が海外で「任務遂行」のための武器使用に踏み出します。
安倍首相はこうした任務について「検討している」と明言しました。
対IS軍事作戦参加問題/「政策判断」で不参加いうが
志位氏は対IS軍事作戦問題をめぐり、2001年のアフガニスタン報復戦争と03年のイラク侵略戦争がISのような残虐で憎むべきテロ組織を生み出したと強調。イラク戦争を引き起こした当事者であるイギリスのブレア元首相が、イラク侵攻がIS台頭の主要な原因だという見方には「真実が含まれている」と語り、「03年にサダム(フセイン大統領)を排除したわれわれが、15年の状況について一切の責任がないとはいえない」と責任を認めていることを示し、首相の見解をただしました。空爆強化は憎しみの連鎖をつくるだけ
外相 民間人犠牲者把握していない
志位氏は「この歴史の教訓にてらしても、ISに対する空爆など、軍事作戦の強化では問題は決して解決しない。多数の罪なき人びとを犠牲にし、憎しみの連鎖をつくりだし、テロと戦争の悪循環をもたらすだけだ」と強調しました。その上で志位氏は、米英仏露などが強化する対IS空爆の実態を明らかにし、「日本はアメリカ主導の『有志連合』の一員だ。『有志連合』による空爆によってどれだけの民間人が犠牲になっているのか把握しているのか」とただしました。
岸田文雄外相は「空爆による犠牲者を各国政府は公表していない」とのべ、無責任な姿勢を示しました。
志位氏は、14年8月~16年1月29日までに2029人~2635人の民間人が犠牲になったとの民間推計も示して「総理は、『有志連合』を支持するというが、その空爆でどれだけの民間人が犠牲になったか把握すらしていない。都合の悪いことに目をふさぐというのはあまりに責任のない態度ではないか」と批判しました。
法文上、自衛隊の軍事支援可能
米要請拒否できないのは明らか
首相「断る」言うが理由示せず
ここで大問題になるのが、安倍政権が戦争法を強行したもと、米国がISへの軍事作戦の支援を要請してきたら拒否できるのかということです。志位氏は、政府が対IS空爆への自衛隊の軍事支援について「政策判断として考えていない」としながら、「法律的にはありうる」と答弁してきたことの重大性を指摘。「国際平和支援法」が対IS軍事作戦での兵たん支援を可能としている三つの仕掛けを明らかにしました。
第一は、活動の根拠となる国連決議(総会または安保理)が存在することです。
国連安保理決議2170号と2199号は、ISが「国際の平和及び安全に対する脅威である」という旨を言及し、加盟国にISに対する措置を求めています。
志位氏は、これについて、中谷元・防衛相が昨年6月の参院外交防衛委員会で、「これらの安保理決議は同法(国際平和支援法)の3条1項1号のロに規定する決議に該当しうる」と述べていたことを改めて確認しました。
第二は、脅威を除去するために国際社会が共同して行動を行っていることです。「有志連合」は、国連決議に基づいて行動しているとしています。
第三は、わが国が主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められることです。
志位氏は「要は日本政府の『政策判断』いかんということだ。すなわち日本政府が『必要だ』という『政策判断』を行えば、対ISの軍事作戦への自衛隊の兵たん支援は法律上可能になるということだ」と強調しました。
そこで志位氏は、安倍首相が「政策判断としてISIL(IS)に対する軍事作戦に対して後方支援を行うことをまったく考えていない」と述べていることを挙げて、「軍事支援をやらないという『政策判断』を行っている理由は何か」とただしました。
首相は「非軍事分野において国際社会におけるわが国の責任を果たしていくことが適切である」と繰り返し、まともな理由を示せません。
志位氏は「『有志連合』による空爆の強化は賛成できないから日本は軍事支援を行わないというならば、そういう『政策判断』を行っている理由はよく理解できる。しかし、空爆を行っている『有志連合』を支持しながら、なぜ、日本は軍事支援をやらないという政策判断を行っているのか」と追及しました。
志位氏がさらに「アメリカが状況いかんで、対IS軍事作戦をエスカレートさせることは大いにありうることだ。そのときに日本に支援を要請してきたらどうするのか。その場合に『拒否する』と明言できるのか」とただすと、首相は「お断りする」と言いながらも拒否する根拠をなんら説明できませんでした。
志位氏は、米国のカーター国防長官が、昨年12月の上院軍事委員会で、対IS軍事作戦に関して「約40カ国に協力要請した」と発言し、航空機の派遣や武器と弾薬の提供を要求したと説明していると指摘。「先方がそう言っている。要請があったかどうか明らかにすべきだ」と重ねて迫りました。
米国からの支援要請の有無すら明らかにしない日本政府。オーストラリアの姿勢は対照的です。
志位氏はマリス・ペイン豪国防相が1月13日に、米国からの要請があったと明らかにした上で、「有志連合」への貢献の拡大に応じない声明を発表していると述べ、「要請があったらあったという。拒否したら拒否したという。これが普通の独立国ではないか」と批判しました。
志位氏は、この質疑で、(1)日本政府が「必要だ」という「政策判断」を行えば、対IS軍事作戦への自衛隊の兵たん支援は法律上可能になる(2)首相は「政策判断」として「後方支援」を考えていないというが、そういう「政策判断」を行っている理由を説明できなかった(3)米国の支援要請を拒否すると言ったものの、その理由を説明できなかった(4)米国から支援の要請があったかどうかについても、要請の有無さえ明らかにしなかった―という四つのことが明らかになったと強調。「こんな姿勢でどうして『主体的判断』ができるか。アメリカが対IS軍事作戦を拡大し、自衛隊の支援要請をしてきた場合には、対IS軍事作戦の兵たん支援に自衛隊を参加させることになるのは明らかだ」と厳しく批判しました。