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「共産党への攻撃は市民への脅し」「反共は戦争の前夜」 識者も指摘
日本共産党を「現在においても、破壊活動防止法(破防法)に基づく調査対象団体である」「『暴力革命の方針』に変更はない」などとした安倍内閣の答弁書(22日閣議決定)に、怒りが広がっています。メディアでも「過熱する反共」(「東京」24日付)、「政府の時代錯誤」(日刊スポーツ24日付コラム)と、政府の対応を問題視しています。権力を使った「反共キャンペーン」からみえてくるものは――。(若林明)「共産支持者ではないが、共産党に破壊(活動)防止法適用のニュースには怒りを感じる。国民の支持を受ける公党への誹(ひ)謗(ぼう)とうつる」、「自民党こそ、日本の平和を破壊しようとしている」。党本部への電話・メールやツイッターなどの投稿で、こんな批判が広がっています。
国民は分かっている
法政大学元教授(政治学)の五十嵐仁氏は、閣議決定に対し「古色蒼然(そうぜん)です。共産党は暴力的な方法で政権転覆を考えていないし、暴力革命を方針としていないことは多くの国民はわかっています」と指摘します。日刊スポーツのコラム「政界地獄耳」(24日付)も、「多くの国民が(共産党を)暴力革命を画策する政党とは思っておらず議席も増えている。いつの時代の話をしているのか」との政界関係者のコメントをひき、「政府の答弁書の時代錯誤の方が問題だ」と断じています。
安倍内閣の答弁書が、日本共産党の綱領路線を百八十度ねじまげ、歴史の事実をわい曲した悪質なデマであることは、22日の山下芳生書記局長の会見や本紙24日付の論評「『議会の多数を得ての革命』の路線は明瞭」で、疑問の余地なく明らかにされています。
日本共産党は戦前も戦後も党の正規の方針として「暴力革命」の方針をとったことは一度もありません。多額の税金を使って不当な手段で「調査活動」を行っている公安調査庁が60年以上「調査」しても、「暴力革命」の「証拠」など、一つもあげることができません。
憲法軽んじる内閣が暴力的
五十嵐氏は共産党へのデマによる誹謗は戦争前夜の声であると指摘します。「戦前日本もドイツも、戦争へと突入できるようにするために、もっとも頑強に戦争に反対した共産党を弾圧しました。ナチスは国会議事堂放火事件をでっち上げ、それを口実に共産党を弾圧し、ヒトラーの独裁体制を確立しました。やがてその弾圧は自由主義者やカトリックへと拡大し、ドイツは世界を相手に戦争をする国になっていったのです。同じように、安倍政権は、共産党を狙い撃ちにした攻撃によって戦争をする国づくりをすすめようとしています」と戦前と共通の危険性を語ります。
まさに「反共は戦争の前夜」との指摘です。
政府答弁書の閣議決定を共産党への攻撃にとどまらないと指摘するのは、同志社大教授の岡野八代さんです。
「共産党は、安保法制に反対する運動の中で市民と一緒に活動してきました。その共産党を破防法の調査対象団体だという政府答弁書は市民への威圧、脅迫と考えられます。憲法違反の安保法制に反対する市民の活動は憲法を順守した活動です。それにたいして、『違憲内閣』が振り下ろしてきた弾圧が今回の閣議決定です」
岡野さんは「私たちの人権を守ってくれているのが憲法です。破防法よりも上位にある憲法を軽んじ、憲法改悪を公言する安倍内閣こそ『暴力的』です」と指摘します。
野党共闘への焦りの表れ
なぜ、閣議決定による答弁書という方法まで使って、共産党攻撃に出てくるのか。前出の五十嵐氏は「安倍政権は、野党共闘がどれほど大きな政治的転換をもたらすかをわかっています。だから、その推進力となっている共産党へ攻撃を集中している」と分析します。「東京」24日付も「自民党の反共キャンペーンの背景には、野党共闘の進展がある」と指摘します。
自民党は、「『野党統一候補』=『民共合作候補』」と誹謗中傷するビラを作成。「私たちが戦うのは、“ひ弱な野党”ではありません。相手はその裏で確実に勢力を拡大しつつある共産党」と反共主義をむき出しにしています。公明党も根拠もない日本共産党への悪口を並べ立てた『日本共産党のウソを暴く』というパンフレットを「非売品」として流布させています。
しかし、政界に詳しいメディア関係者は「『合作』や破防法を持ち出すのは古すぎる。これは自民党、公明党の焦りの表れだ」と指摘。自民党関係者からも、「“容共=自由の敵”のような構図は、古い冷戦構造を前提にしたイデオロギーで、現在の状況には合わない。逆効果ではないか」との声ももれます。
悪質なデマまで使ったなりふり構わない安倍自公政権の反共キャンペーンにどう立ち向かうか。
岡野さんは「一定の国民の支持を受け国会に議席を有する公党である共産党への弾圧は、結社の自由の侵害、議会制民主主義の破壊です。共産党以外の野党も含めて、市民からも批判の声を上げていくべきです」とのべます。