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マルクスもケインズも触れなかった
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(本文)
先週の日曜日に
「ギフト 僕がきみに残せるもの」
を鑑賞した。
映画の予告動画はこちら
↓
https://youtu.be/4WNmizgsDRs
原因不明で治療方法も存在せず、体の全ての機能を奪っていく
難病中の難病と言われる病気ALSにかかった元アメフト選手の
病気の進行具合を詳細に記録したドキュメンタリー映画だ
発症率は世界ほぼ共通で10万人に5人ほどで、日本には約1万人の患者がいる。
この映画は、ALSという病気について知ってもらうということと共に
難病を前にして奮闘する家族の物語である。
公的な面と私的な面の両面が全面的に打ち出された映画だった。
この映画が打ち出している公的な面はALSという病気の性質に根差している。
病気が本人の全ての身体機能を奪っていくものであり、家族や社会の全面的な
援助なしには生きていく事が出来ないものだからだ。
特に、元アメフトのスター選手の強靭な肉体が、全く動かなくなっていく過程は
衝撃であり、この病気の深刻さを見るものに伝えている。
そのため、介護、医療、補助器具、社会保障と様々な病気とかかわる問題が
米国社会のシステムと共に述べられていく。
グリースさんと家族はグリース基金を立ち上げ、ALS患者のための生活補助器具の
保険適用などを、議会や大統領に働きかけ、法案を成立させるなどの活躍をしていく。
ALSは平均余命が2~5年と言われる。
指や足などの身体機能だけではなく呼吸機能も奪っていくためであり、
患者は呼吸ができなくなり多くの場合、窒息のような状態で死ぬことになる。
それを避けるためには、呼吸器をつけなくてはならないのだが、呼吸器をつけると
声が全く出せなくなり、24時間介護が必要になり、患者の家族に経済的な面でも
労力の面でも莫大な負担がかかる。
そのため、米国では95%の患者が呼吸器の装着による延命を拒否して死んでいく。
医療制度が整っている日本の場合は3~4割の患者は呼吸器をつける。
(それでも6割は呼吸器はつけない)
ここに自己責任で保険制度を整備してこなかった米国社会の厳しい現実があるのだ。
この映画の主人公のグリースさんは元アメフトのスター選手だったために、
映像を見る限りリッチな生活をしており、療養における金銭面での負担は
殆ど映画では描かれていない。
そのため呼吸器をつけ、5%の仲間入りをする。
呼吸器をつけられない95%の人々の置かれている現状と、
今後、どういう対策を行っていくべきかという提言を取り上げて欲しかった。
映画の私的な側面では、生まれてきた息子のために、何ができるか、
妻や父との関係をどうするかといった家族関係の側面が強調されている。
これにより、この映画はALSという特殊な難病だけの話にはならずに、
より一般的な普遍的な話にさせることに成功している。
特に介護に献身的な奥さんが非常にすばらしい価値観の持ち主で、
「私は聖人にはなりたくない。人間でありたい」
という本音は多くの人を共感させるだろう。
また、病気治療に父親の勧めによる宗教で治そうという場面があり、
宗教と科学の関係というものを考えさせる。
グリースさんと妻は、宗教には頼らずに、自分たちで解決をしていこうと
していく。
うまれたばかりの子供に、病気でも自分が残せるものを次世代に伝え
ていこうという前向きな姿勢は、多くの鑑賞者に感銘を与えるだろう。
ALSに対する姿勢は、重度障害介護全般の問題になる。
社会はどのように、向き合っていけばよいのか?
必要な価値観は何か?
また個人はどのように困難に向き合っていけばよいのか?
公的な面と私的な面の両方から多くの事を学べる素晴らしい映画ですので、
是非、ご覧ください。
※私自身も、先日ALS患者の介護のために重度障害訪問の介護研修を受けた。
下はALS患者として本を出版されたり、テレビなど特集されている佐々木公一さん
の介護を行っているところです。
佐々木公一さんの本はこちら
↓