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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第140号(2018/6/22号/月2回発行)
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アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第140号(2018/6/22号/月2回発行)

2018-06-28 20:20

     Kindle同人誌「新聞に載ったアニメレビュー」(540円)は、ぼつぼつと売れております。同人誌の感想を募集しますので、気に入った原稿のスクショ1枚(必須)と感想を、ブログまたはtwitterにあげてたら、twitterで藤津にご連絡ください。
     確認できましたら、こちらから過去の同人誌「お試し版」(pdf)をプレゼントします。
     では、今回もいってみましょう。

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    1.最近のお仕事紹介
    2.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
    3.お蔵出し原稿
    4.連載一覧

    最近のお仕事紹介

    1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
     7月21日 教養としての高畑勲監督入門
     8月18日 アニメと戦争 80年代編
     ※『マクロス』や『FUTUREWAR 198X年』、『火垂るの墓』などを中心に取り上げる予定です。
     9月15日 『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』
     【受講申込】

    2.6月の「オタクの学校」(東京・浅草)
     6月30日の浅草・模型塾で行われる「オタクの学校」。15時からの「アニメを読む」は4KリマスターBOXのリリースに合わせて『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を取り上げます。齋藤さん講座は『クラリス・ド・カリオストロ』。
     【受講申込】

    2.7月のSBS学苑(静岡)
     7月29日は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を取り上げます。以前も取り上げた作品ですが、6月発売の4KリマスターBOXの取材の成果なども一部反映しつつ再演します。
     【受講申込】


    連載「理想のアニメ原画集を求めて」

    文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

    第68回『モブサイコ100原画集』

     この原画集は、「モブサイコ100 REIGEN ~知られざる奇跡の霊能力者~」というイベントのグッズの一つとして販売されました。自分はイベントの物販ではなく、その後に通販で購入しました。
     2000円という比較的安い値段ですが、A4の大きさで100ページ、本文はオールカラーと思っていた以上に満足感のある原画集でした。ファングッズ的な本ということで、キャラクターの顔のアップの絵が大きく掲載されているような原画集なのではないかと不安でしたが、動きのあるカットの原画を中心に掲載していて、どのページを開いても生き生きと動く本編の魅力を感じられる内容となっていました。
     『モブサイコ100』は、鉛筆らしい荒々しい線画の雰囲気を生かした特殊な画面の作品でした。原画集で改めて見てみると、デジタルで描かれたものから、筆ペンで描かれたものまで、様々な表現が混在する絵を見ているだけでも面白いと思います。

     アニメの作画の効果として、「筆ペン」の荒々しいタッチを全面に押し出して原画を描き始めたのは、この作品のキャラクターデザインである「亀田祥倫」さんでした。亀田さんが筆ペンを使って原画を描き始めたのが、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』です。当時、別のスタジオに所属していた亀田さんは、作品初期ではペンネームでの参加でしたが、作品が進むにつれてアクションシーンでの中心的なアニメーターとなっていき、そのお仕事は劇場版へと続いていきました。
     近年では、『映画 ドラえもん のび太の宝島』でキャラクターデザイン・作画監督として活躍されており、活躍が目覚しい亀田さんですが、この原画集はそんな亀田さんのお仕事をまとめた本としても貴重なものだと思います。
     筆ペンでの作画も、当時はかなり突飛な印象でしたが、亀田さんの活躍が広まっていくことによって、アニメ作画の描線に関する自由度が広まったような印象があります。

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     興味深かったのは、修正原画の中に、鉛筆で描いた原画の線の一部を誇張するために、筆ペンで線を書き足したようなものがあったことです。初期の頃の筆ペン作画は、アクションシーンの中で迫力を増すために用いられている印象でしたが、その後亀田さんの中でも様々な形で応用して使われているようです。
    原画集には掲載されていませんでしたが、OPの背景動画でカメラがビル街を動き回るカットも筆ペンやカラー筆ペンを併用して描かれていたようです。
     描線だけでなく、劇画タッチのカットやカケアミを多用したようなカットなど、様々な絵の表現が盛り込まれた作品でした。動きの面でも自由度が高く、亀田さんを代表とする金田系作画だけでなく、個人個人がその個性を発揮して絵を動かしている様子が原画集を見ていると分かって楽しい内容となっています。
     自由度が高い作品というだけでなく、ベテランはもちろん、若手のアニメーターが活躍している作品でもあり、紙面からエネルギーが溢れるてくるような原画集です。
     他にも、亀田さんが直前に参加した、同じ原作者のアニメ化作品『ワンパンマン』と見比べてみると楽しいかもしれません。もちろん、亀田さん以外のアニメーターの方たちでも『ワンパンマン』と『モブサイコ100』に参加している人は少なくありません。完成した作品を見比べてみると、なかなか印象が違って見えて面白いと思います。

     原画集を見ていて特に楽しかったのは、「手」の描写でした。超能力という実体のない物を取り扱っている分、その力の入れどころが「手」に集中しているような印象を持つ作品ですが、原画集を見ていると手が顔以上に物を言うカットが多いような気がしました。亀田さんの描く力の入った手はもちろん、色々な人の描く手に注目して原画集を見ても面白いかもしれません。
     また、今回は原画集にあまり掲載されていませんでしたが、個人的には亀田さんのレイアウトをもっと見てみたかったという気持ちもあります。『モブサイコ100』や『映画 ドラえもん のび太の宝島』のレイアウトの描写なども他の作品とは一味違う良さがあり、元々は背景美術志望だったという亀田さん独自のこだわりを感じるような気がします。
     『モブサイコ100』は現在第2期の放映が控えている所ですが、『ドラえもん』の劇場版というアニメーターとしての大舞台を経験した亀田さんや第2期に参加するアニメーターの方達がどのような活躍をしてくれるのか、この本を見ているととても楽しみになってきます。

    (『モブサイコ100原画集』/株式会社ボンズ/2,000円)


    お蔵出し原稿

    NT WEBの連載「アニメを見ると××になる」より『超力ロボガラット』です。執筆時期は2008年1月なので、ちょうど10年ほど前の原稿になります。

     
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