12月26日・27日に金沢21世紀美術館で「日中韓学生アニメーションフェスティバル」が開かれます。ここで上映される一部作品の試写が都内であったので足を運びました。
3カ国の学生5チームが10日間の合宿で作り上げた短編は、短い中でテーマと表現がぴったり重なっていてなかなかキュートな仕上がりでした。
試写のもう一つは長編「ウリビョル1号とまだら牛」。 チャン・ヒョンユン監督は、中短編を作っていた個人作家だそうで(NHKのデジタルスタジアムにも参加)、昨年初の長編が220スクリーンで公開されたとのこと。これはまた不思議な作品で、いろんな人に感想を聞いてみたい作品でした。
「ウリビョル1号とまだら牛」公式トレーラー
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1.最近のお仕事紹介
2.Q&A
3.前回のアニメの門チャンネル
4.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
5.お蔵出し原稿
最近のお仕事紹介
1.朝カル講座「アニメを読む」(東京)
12/19 現代アニメのターニング・ポイント ポスト『涼宮ハルヒの憂鬱』の10年間
1月~3月の予約もスタート。
1/16 京田監督ゲストの絵コンテ講座
2/20 「アニメ・マンガの実写化はなぜ難しいのか」
3/19 「風立ちぬ」
https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/10fbb979-f4e6-3874-6d3e-5617227ea422
2.NHK文化センター青山教室「アニメを読む」
毎月第三土曜13:30~からの開講になりました。1月期はスタジオジブリ特集です。
1/16「スタジオジブリのあゆみ」
2/20「おもひでぽろぽろ」
3/19「千と千尋の神隠し」
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1096799.html
3.SBS学苑パルシェ校「アニメを読む」(静岡)
1/31 10:30~『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を取り上げます。
今もって傑作とよばれる作品の背後にある、劇場版『エースをねらえ!』の存在含めて考えます。
http://www.sbsgakuen.com/gak0130.asp?gakuno=2&kikanno=171101
Q&A
「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。
あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。
Q:学生の頃、戦車道は得意科目でしたか? それとも苦手でしたか?
A:戦車道は、男子できないので。
Q:アニメやマンガに登場する自動車の車種についてですが、主人公やそれに近い立場の登場人物が乗っているのがヨーロッパ車、とくに「ラテン系の小型車」の割合が比較的多いように感じます。メルセデスやロールスロイスが「金持ちの象徴」なのはわかりますが、他のドイツ車やアメリカ車・英国車ではなく、ラテンの小型車が登場するのは、どういう流れでこうなったのでしょう。
A:僕にもしかとその理由はわかり兼ねますが、輸入販売の段階で「遊び車」とブランディングされた車種が多かったのではないかと思います。ルパンのフィアットは大衆車だからセレクトされていますが、そうでない多くの場合は、かっこいいものとして扱われているわけで、'70年代の輸入車の広告によるブランディングが、車種選定に影響を与えいるのではないかと想像します。
前回のアニメの門チャンネル
前回のアニメの門チャンネルは、「誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくい3DCGアニメのポイントについて教えましょう」。『蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-』などを取材しているライター日詰明嘉さんをゲストに、3DCGアニメについて知っておいたほうがおもしろいことをいろいろ語りました。
配信はキーワードをあげてそれに関する解説をつけていくというスタイルで進行しました。
歴史に関するキーワードは「1995年」(藤津)「GONZOという梁山泊」(日詰)の2つ。
「1995年」は世界初の3DCG長編アニメ『トイ・ストーリー』が公開された年で、ここがまさに紀元1年とでもいうべき年なのであげました。そして、日本でもアニメの現場に3DCGが入ってくるようになる。GONZOのデジタル部は、後にサンジゲン、グラフィニカを設立するメンバーが揃っていたなど、現在の3DCGアニメのキーマンが揃っていた場所なのです。
技術に関するキーワードは「手付け」(日詰)と「セルルックとフォトリアルとカートゥーン」(藤津)。
3DCGも初期はモーションキャプチャーを使うケースもありましたが、今の主流は「手付け」。ひとコマひとコマキャラクターにポーズをつけていくやり方で、アニメーターが手で描いていく方法と本質的に変わりません。長らく「3DCGが固い」という印象が強かったのは、動きをつけるアニメーターの練度が低かったのも一因と思われます。
そして、キャラクターの動きはどういうルックを採用しているかとも深い関係があります。3DCGアニメのルックは大きく3つに分類できます。藤津は便宜上それぞれを「セルルック」と「フォトリアル」と「カートゥーン」と呼んでいます。
「セルルック」は日本の手描きアニメに擬態する発想です。逆に実写に擬態するのが「フォトリアル」。そして、デフォルメされたキャラクターにリアリスティックなレンダリングの効果を加えるピクサー的なテイスト。これはアメリカのアニメの流れを汲んで生まれたのでいちおう「カートゥーン」と呼んでいます(本当はもっといい名前をつけたい)。
「セルルック」と「カートゥーン」は手付けで作られますが、「フォトリアル」に関してはモーションキャプチャーのほうがそれらしい動きになります。
さらにいうと、こうしたルックの選択やどういう作品を作るかは、それぞれのプロダクションがどういう方向に成長していこうか、という「大目的への戦略」とも繋がっています。これが「企画の目的を理解する」(日詰)と、よりいっそう楽しくみられるということに繋がります。
『アルペジオ』は「3DCGで萌えキャラを作ることができることを証明する」というミッションがあり、そうなれば、世界各地のコンベンションに集うようなファンにも届くという大きな目的を背負っています。
『シドニアの騎士』であれば、世界で見られているアメリカ製ドラマの市場に、日本のプロダクションがどうコミットしていくかという挑戦とみることができます。そのため『アルペジオ』とは逆に、リアルとマンガの絶妙な中間を狙ったデザインになっているわけです。
有料配信ではこれから期待のタイトルを列挙したりしました。
・『ルドルフとイッパイアッテナ』OLM・SPRITE ANIMATION STUDIOS制作
・『バイオハザード』マーザ・アニメーションプラネット制作
・『ブブキ・ブランキ』サンジゲン制作
・『正解するカド』東映? ※『楽園追放』の野口光一プロデューサー案件
・『BLAME! 端末遺構都市』ポリゴン・ピクチュアズ制作
連載「理想のアニメ原画集を求めて」
文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)
第8回「~シャフト40周年記念~ MADOGATARI展」
最近、アニメ作品の「原画展」が頻繁に開催されるようになりました。
この連載では、今まで原画集を話題に上げてきましたが、原画を直接目で見られる原画展にも同じように注目すべきものがあるということで、これからは原画展のレビューも折を見て書いていきたいと思います。その初回が、連載の1回目でも取り上げた『化物語』に関連した原画展というのは、偶然なんですが、面白い偶然です。
「MADOGATARI展」はアニメ制作会社「シャフト」の40周年記念イベントです。「MADOGATARI」という名前通り、シャフトのヒット作品である『化物語』、『魔法少女まどか☆マギカ』を中心として展示が構成されていました。
今までも原画展に足を運ぶことは多かったのですが、「原画を見る」という目的を持って原画展に行くと、がっかりして帰ることになる、という体験を何度もしています。1つは単純に量が足りない、2つ目は質的な問題、3つ目はそもそも「原画」ではなく原画のコピーが展示されている「複製展示」だった場合などです。その背景には、展示する側の様々な事情もあるとは思うのですが、今回のMADOGATARI展は先ほど上げた3つの問題を念頭に置いた上で、今まで行った「原画展」と銘打ったイベントの中でも、特に満足度の高いイベントでした。
『化物語』は第15話(「つばさキャット 其ノ伍」)の原画を中心にしたチョイスで、主に渡辺明夫さんの修正、田中宏紀さん、阿部厳一朗さん、今村亮さんの原画が展示されていました。渡辺さんの絵は美麗。田中さんの原画は絵全体がタッチだけの特殊な絵などが展示されており、加工された本編映像とは違う「鉛筆の迫力」が感じられて良かったです。阿部さんの原画も、筆ペンで描かれた特殊なエフェクトが展示されていました。田中さんも阿部さんも動きの面白いカットであることはもちろん、素材として特殊なもの、原画自体の質感を楽しめるものが選んで展示されていることが印象的でした。
第15話以外にも各話数毎に分けられた展示もあったのですが、こちらの原画はコピーでした。しかし、モニターで完成映像と比較して見られる構成になっており、この点も非常に親切だと思いました。
順路を辿って行くと、『化物語』の後には、過去のシャフト作品の制作資料が天井まで覆い尽くすような量展示された「キーアニメーションゾーン」があります。『化物語』の薄暗い展示ゾーンから一転、真っ白な空間を白い紙で埋め尽くした、まばゆさが圧巻でした。展示は広い一部屋の壁を、絵コンテ、設定資料、修正用紙、原画で埋め尽くしてあります。そして、部屋の中心を分断する2組のパネルに横並びで、『魔法少女まどか☆マギカ』、『ひだまりスケッチ×365』、『化物語』の中から、キャラクターが走り続けるシーンの原画が展示されており、お客さんはそれを追いかけながら見るという、面白い展示の仕方でした。
ページを重ねられる本ならともかく、展示では壁という一面の空間に配置しなければいけない。そういう物理的な制約のある中では、激しく動く、枚数の多い原画は、展示するのも難しいと思っていました。ところがこれは、紙の中の走っているキャラクターをお客さんが追いかけながら見ていくという、面白い擬似体験的なアイデアですね。欲を言えば、この一連の完成した動く映像があれば、見ている人に展示してある原画をもっと楽しんでもらえそうだなと思いました。
壁の展示の選択の仕方もよく、シャフトの様々な作品の原画が勢揃いしています。中には「吉成曜」さんのような、有名アニメーターの本編クレジットでは名前の出ていないお仕事の貴重な原画が展示されていたり、マニアックなファンにこそ楽しんでもらえる、豪華な展示内容でした。
続いての「魔法少女まどか☆マギカ」ゾーンでは、展示は主にコピーされたものでしたが、作品のムードに合わせて額装されていて、雰囲気のよい展示でした。MADOGATARI展はメインの『化物語』、『魔法少女まどか☆マギカ』共に作品性を強く主張した展示で、原画だけでなく、作品を見たファンとしても、とても楽しめる空間でした。
まどかゾーンにある、「劇団イヌカレー」に関する展示も、過去の犬カレー関連の映像素材が、オブジェを中心に床まで空間を埋め尽くしていて、作品本編の魔女空間を見るように楽しめます。これも、アニメーションの素材なので、原画といえば原画なんですね。こうした変わった素材が楽しめるのも、シャフト作品ならではの展示の楽しみだなと思います。
展示自体は、他に色々な楽しみがあるのですが、ここではあえて原画を中心に語らせてもらいました。これから展示に行かれる方、また、行った上でこの文章を読んでおられる方がいるかどうかは分かりませんが、MADOGATARI展を見る上で一つ意識してもらいたいのは、シャフト作品を中心に活躍されている「今村亮」さんというアニメーターの名前です。
今村さんの原画は、今回のイベントの中でも特に展示数が多く、キーアニメーションゾーンで展示されていた『ひだまりスケッチ』、『化物語』の走りの原画等も今村さんの手がけられたものでした。『化物語』でも原画が、原本、コピーともども数多く展示されており、鑑賞する上で強く意識させられた方でした。アニメーターは仕事上、もちろん複数の作品に携わっていきますから、こうして様々な作品の原画を一度に目にできる展示は、作品の中で活躍するアニメーターという存在を意識するには、よい機会なのではないかと思います。
今回の展示は、過去シャフト作品の原画集を手にした方なら、その本物を目にすることのできる貴重な機会でもあります。展示に接することで、モニターの向こうにある絵が本当に人間が描いたものであることを実感できると思います。また、作品のことはもちろんとして、せっかく本物を見られる機会ですから、「誰が」という意識を持って見る機会としても良いのではないでしょうか。
今回は偶然にも、以前紹介した本の内容が一部ながら直接見られるよい機会でした。原画集・原画展というものは、作品だけでなく、それを描く人を意識させてくれるきっかけになるなと改めて思いました。もし、今後開催される地域に足を運べるようならば、一見の価値がある原画展だと思います。
(「~シャフト40周年記念~ MADOGATARI展」 /前売券1800円、当日券2000円)
[http://www.madogatari.jp/]
お蔵出し原稿
『毎日中学生新聞』に連載していた「空もとべるはず」の中の1本。ファイルの日付が2006年1月5日なのでほぼ10年前の原稿ですね。