おもしろい話はカタチが決まっている

 

 すごくおもしろい出来事に遭遇したのに、うまく話せず、相手にそのおもしろさが伝わらない・・・。

 一方で、同じ出来事に遭遇した人が、おもしろおかしく伝えて、みんなを楽しませていたらとても悔しいですよね。

 そんな思いをしている人は、まず「おもしろい話のルール」を覚えましょう。

 じつは、話をおもしろく伝えるにはルールが決まっているんです。

 お笑い芸人さんや、タレントさんの話がおもしろいのは、この「おもしろい話のルール」を守って話しをしているからです。

 逆にいえば、あなたもこのルールさえ覚えてしまえば話をおもしろく伝えることができるようになるわけです。

 

 では、「おもしろい話のルール」を紹介する前に、先日、私がテレビ局のディレクターの方から聞いた話をご覧ください。

 

 「最近の若いAD(アシスタントディレクター)はみんなネットしか見ないから、スポーツ新聞なんて読まないだろ。だからこの間、ADに『東スポ』買ってきて言ったら、そいつわざわざ喫茶店行ってこんがり焼けた『トースト』買ってきたんだよ」

 

 落語みたいなおもしろい話ですが、これは実話です。

 そしてこの話もちゃんと「おもしろい話のルール」に則っています。

 「おもしろい話のカタチ」は、「フリオチ」といいます。

 「フリオチ」は、「フリ」と「オチ」に分かれ、「オチ」は、落語やお笑いに詳しい方は聞いたことがあると思いますが、話の最後のおもしろい部分、結末のことです。

 「フリ」は、その「オチ」を盛り上げるための助走のようなものです。

 音楽でいったら、「オチ」がサビで、「フリ」はサビを盛り上げるためのAメロ・Bメロといったところでしょうか。

 例に挙げた「ADさんの話」のフリとオチは、

 

・フリ:『東スポ』買ってきて

 

・オチ:『トースト』買ってきた

 

 ディレクターさんが『東スポ』を買ってきてと頼んだ。

 それなのに、ADさんが聞き間違えて『トースト』を買ってきたからおもしろいわけです。

 もしもこの話にフリがなかった場合、

 

ADに買い物頼んだら、聞き間違えて、トースト買ってきたんだよ」

 

 という風に、「へえ、それで?」、「オチは?」と聞かれてしまうような、おもしろくも何ともない話になってしまいますね。

 でもこの話を聞いて、「テレビの人や芸人さんだからフリオチを使えるんでしょ?」と思うかもしれませんので、次はAKB48の横山由依さんが、後輩の川栄李奈(元AKB48)さんについて語ったお話を紹介しましょう。

 

 横山由依:「この間、二人で買い物一緒に行った時に、川栄が『ちょっと横山さん、銀行にお金下ろしに行っていいですか?』って言ったので、『うん、いいよ。行ってきな』って言ったら、川栄はそのまま証券会社に入って行ったんです」(「踊る!さんま御殿!!」より)

 

 AKBイチのおバカキャラだった川栄さんは、証券会社でも銀行のキャッシュカードが使えると思っていたそうです。

 この話を披露した横山由依さんはアイドルですが、ちゃんとフリオチを使っています。

 

・フリ:川栄は銀行でお金を下ろしてくると言った

 

・オチ:証券会社に入っていった

 

 フリオチはお笑い芸人さんだけが使う特別なテクニックではありません。

 あなたの周りの話がおもしろい人も、よく聞いていればフリオチを使っているはずです。

 話をおもしろく伝えるためには、“おもしろい話のカタチである”フリオチを使う以外に方法がないからです。

 

 

フリオチを簡単に使いこなす方法

 

 ・・・とはいっても、「フリとオチを使いこなすのって難しそう・・・」と思う人がいるかもしれません。

 でも、心配は無用、じつはフリオチには、ある一定の法則性があるのです。

 だからその法則さえ覚えれば、誰でも簡単にフリオチを使いこなせるようになります。

 では、ここでもう一度、例に挙げた「ADさんの話」のフリとオチを見てみましょう。

 

・フリ:『東スポ』買ってきて

 

・オチ:『トースト』買ってきた

 

 このフリとオチを眺めて、何か気づくことはないでしょうか?

 勘の良い人はお気づきだと思いますが、フリとオチが逆の意味になっていますよね。

 つまり、

 

・フリ;『東スポ』買ってきて

 

 と、頼んだ。なのに・・・

 

・オチ:『トースト』買ってきた

 

 このように、じつはフリとオチは「必ず逆の意味になる」という法則があるのです。

 その理由は、フリとオチの役割にあります。

 フリとオチ、それぞれの役割は、

 

・フリは、オチとは逆の話の結末を予想させるようにミスリードする役割

・オチは、フリとは逆の結末となり、話を聞いている相手に想定外を引き起こさせる役割

 

 人間は、想定していた展開がひっくり返されると「おもしろい!」と感じる生き物です。

 手品を見て、びっくりしたり、ミステリーを見て、犯人が意外な人物だとわかった時に驚くのはこのためです。

 そうした人間の性質を利用し、話をおもしろく感じてもらうテクニックがフリオチなのです。

 だからフリオチがある話は相手におもしろく感じてもらえるわけです。

 フリとオチは必ず逆の意味になるという法則を、先に挙げた横山由依さんの話でも確認してみましょう。

 

・フリ:川栄は銀行でお金を下ろしてくると言った

 

 なのに、

 

・オチ:証券会社に入っていった

 

 

 ご覧の通り、法則に当てはまっていますよね。

 「この本に挙げた例がたまたま法則通りなんじゃないの?」と思っている方は、今度、テレビでもネット動画でもいいので、試しに芸能人がトークを披露する番組で確認してみてください(とくに『踊る!さんま御殿!!』や、『人志松本のすべらない話』などが確認しやすいでしょう)。

 必ずどの話も法則通り、フリオチを使っているのがわかるはずです。

 

 人間はオチから思い浮かぶものです。

 だから先にオチを言ってしまって、「で、オチは?」と冷たいツッコミを受けることがあります。

 なので、たとえオチから思い浮かんでも、かならず法則に従って、フリを入れて話すように心がけましょう。

 他の雑談術、それぞれのシチュエーションで誰が空気の発生源であるか、その後、どう雑談をしていけばいいかは『雑談の心得。〜気まずーーい空気を一瞬にしてとかす40のテクニック〜』を参照してください。


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