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なぜ、子供はYouTubeを観るのか?
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なぜ、子供はYouTubeを観るのか?

2017-09-25 08:30
  • 1

■YouTube好きの子供たちは嗜好が変化したのか?

先日、YouTuberのマネジメントを手がけるプロダクション「UUUM」が上場した。
「YouTuber」は、子供たちのなりたい職業の常連になり、
テレビでもセットトップボックスを使い、子供たちはYouTubeを観るようになった。

なぜ、今の子供たちはYouTubeを観るのだろうか?
大人たちは首を傾げている。

今の子供たちは、昔の子供たちと嗜好が違うのだろうか?

否、子供たちの嗜好は今も昔も同じである。
結論を先に言ってしまうと、変わったのはテレビの方で、変わってしまったテレビの代わりに、昔のテレビの役割をYouTubeがしているだけなのである。
一体、それはどういうことなのか?


■過激YouTuberが人気の理由

前回、

「5年以内にトヨタやソニーがアナウンサーを雇う時代になる」
http://ch.nicovideo.jp/minobe/blomaga/ar1333282 | 

という記事でも書いたが、テレビを最も観ているのは、F3層(50歳以上の女性)である。
その次は、M3層(50歳以上の男性)である。
つまり、この十数年で、若者から高齢者へとテレビの視聴者の中心層が変化したのである。
すると、高視聴率の番組は、テレビの中心層で、最も母数が多い、F3、M3層を取ることが不可欠になった。
ゆえに、ゴールデン帯のテレビ番組は、旅、グルメ、健康の企画が多いのである。
「ワイドショーで不倫ばかりやってうんざり」と文句を言う人が多いが、それも仕方がない。
F3層が最も好む話題だからだ。
だから、ドラマでも不倫をテーマにしたストーリー、「昼顔」、「あなたのことはそれほど」は高視聴率なのである。
さらに 、高齢者になると、新しもの、刺激的なものを好まなくなる。
新しい音楽を聞かなくなり、新しいテクノロジーには興味がなく、過激、刺激的なものを極端に嫌う。
だからドラマはベタベタな、結末がわかりやすいものが好まれる。
かつて「水戸黄門」がお年寄りに高視聴率を取ったのはこのためで、その流れを継いでいるのが「ドクターエックス」である(主人公は絶対に失敗しない、悪に負けない勧善懲悪のストーリーを好むのだ)。

そんなF3、M3層の高齢者の嗜好と、キッズやティーンズの子供たちの嗜好は真逆である。
子供たちは新しいものを、刺激的なものを求める。
しかし、現在のテレビ番組では、「新しい」「刺激的」はNGワードである。
つまりは、子供たちはテレビから斬り捨てられたのである。

そんな子供たちの需要を取り込んだのがYouTuberである。
VALU問題で消えてしまったが、ヒカルや禁断ボーイズ、他にも東海オンエア、へきトラハウスの過激な動画は、子供たちに人気である。


【絶対見るべき!】過激・下ネタ動画満載のオススメYouTuber!
http://youtuber-mania.com/2017/08/30/post-2223/

子供たちは“悪いこと”が大好きである。
自分たちではできない、「マジ、ヤベえ」ことを代わりにやってくれる人間を見たいのである。
彼らが人気なのは、そんな願望を叶えてくれるからだ。

今の子供たち、若者たちには信じられないだろうが、YouTuberがやっているような過激的で、刺激的な企画を、昔はテレビでもよくやっていた。

例えば、B21スペシャルの「1or8」(ワンオアエイト)。
ヒロミが花火で怪我をした番組と言えば、思い出すおっさんおばさんもいるだろう。
この「1or8」では、ヒロミが花火で火傷をする以前にもたくさんの過激な企画があった。
例えば、
・「チンがラブホテルのベッドの下に潜り込み、ベッドの上の客の様子を実況中継」
  →OAでは、チンがベッドの下なのでほとんど真っ暗、しかも、チンの鞄の中には
   こっそりポケベルが仕込んであり、ベッドの上のカップルが真っ最中の時に鳴らし、
   チンをパニックにさせるというオチだった

・「デビがファッションヘルスのマットで多摩川を下り、東京湾まで行く」
  →そのロケ日がテレビで告知され、多摩川の両岸には見物客が。
   食糧にと、川岸の見物客たちがデビにおにぎりを投げまくるが、デビはうまく取れず、
   何度も川に落ちた。そうした苦労の末、ついにデビは東京湾へと辿り着く

・「企画会議に参加したヒロミ、デビ、チン。しかしチンの弁当には、じつは強力な下剤が混入されていた」
  →気付かず弁当を食べたチン。会議中、何度もトイレに行く。トイレには隠しカメラが付けられ、
   悶絶する様子がモニタリングされた。何度もチンがトイレに行くので、ヒロミがわざと切れ、
   トイレに行くなと説教。苦悶の表情を浮かべながら我慢するも、最後はトイレに駆け込み、
   絶叫するチン。

こうした企画を毎週、OAしていた「1or8」は当時の中高生に大人気で、B21スペシャルはこの番組で(ヒロミが火傷をしたことでワイドショーにも取り上げられたことで)瞬く間に全国区の顔になったのである。
もしも「1or8」のような番組が、まだテレビで放送されていたらYouTuberたちはこれほど人気にならなかったであろう。
結局、YouTuberたちが人気になったのは、彼らが新しいわけでもなく、今の子供たちの嗜好が変わったのでもなく、テレビが過激な番組を放送しなくなったからである。


■ヒカキンは昔の所ジョージである

禁断ボーイズ、東海オンエア、へきトラハウスなどは中高生に人気だが、もっと年齢層が低い、小学生に人気なのが、ヒカキン、はじめしゃちょーだろう。
彼らが人気なのも、テレビの変化によるものだ。
ヒカキン、はじめしゃちょーは昔の所ジョージの代わりである。
所ジョージの人気になったキッカケは、「パオパオチャンネル」という番組だった。
「パオパオチャンネル」はテレビ朝日で夕方1hの帯番組として放送され、曜日ごとにMCが変わっていた。
「ヤーレンソーラン北海道」がヒットした番組といえば思い出すおっさんおばさんもいるかもしれない。
この「パオパオチャンネル」の火曜日のMCが所ジョージであり、火曜日だけが異常に子供たちに人気だった。
所ジョージは非常に子供心をくすぐる術を知っていた。
他の曜日がスタジオで、王道のバラエティ企画を展開している中、火曜日の所ジョージだけはスタジオではなくテレビ朝日の楽屋や廊下で、しかもぐずぐずのくだらない企画ばかりをやっていた。
それはあたかもヒカキンやはじめしゃちょーが自宅で、ゆるいぐずぐずの、しかし子供が気になる親しみやすい企画をやるのと同じだった。
子供に人気というイメージで火が点いた所ジョージはこの後、フジテレビで「ただものではない」という掛布くんなど人気子役と一緒に子供向けバラエティのMCをやることで、地位を確立していくのである。
「ぱおぱおちゃんねる」以前にも、夕方には「夕やけニャンニャン」や、アニメを放送していたりして、夕方から夜の早い時間のゴールデンタイムは、”子供がテレビを観る時間”だった。
しかし、視聴者の中心層がF3・M3層に移ってしまったために、子供は斬り捨てられ、子供がテレビを観る時間は消失、その穴埋めをYouTubeがしているというわけである。


■YouTubeも盤石ではない

視聴率獲得のために、F3・M3層狙いのテレビは、もはや子供のためのメディアに戻れるはずもなく、今後、高齢化社会になるにつれてますますジジババ・メディアとなっていくであろう。
その穴埋めを現在はYouTubeが担っているが、こちらは今後、変化していく可能性がある。
子供の嗜好は変わらないので、YouTubeよりももっと過激で、刺激的な動画や配信をOKするメディアがあれば、子供たちはそちらへとどんどん鞍替えしていくのはまちがいない。
ニコ動から若者が離れていったのも、過激で刺激的な配信を規制していったからである。
最近、AbemaTVが過激な方向へ番組をシフトし、若者の獲得に乗り出しているが、MCにテレビタレントを起用したり、亀田興毅を出演させても、それはおっさん、おばさん嗜好であり子供たちは食いつかないので、もっと子供たちの嗜好を研究して番組作りに取り組むべきである。
いずれにしろ、子供たちが観る動画や配信はどんどん刺激的で過激になっていくので、教育上心配な親は子供たちがどんなものを観ているのかぐらいは把握した方がよいと考える。

以上、私見。





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ブログイメージ
放送作家・美濃部達宏ブログ
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素晴らしい

No.1 79ヶ月前
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