坂や階段が持つ空間のダイナミズムとは何か? これは、実はものすごくアニメ的なのだが、「近景と遠景の移動速度が違う」ということである。従って、近景に隠されていた遠景が、急に目の前に現れるということがある。これが空間のダイナミズムである。
山道を想像してみてほしい。登り坂の途中は、たとえ頂上の付近でも視界が悪い。目の前を坂が覆っているからだ。しかし頂上に出た途端、急にパノラマが目の前に広がる。それも、手品のようにパッと現れるのではなく、下から竹の子が生えてくるみたいにニョキっと現れるのである。
この「ニョキっと新たな景色が現れる」ことこそ空間のダイナミズムである。これは左右の曲がり角でも起こることだが、上下動の方がよりダイナミックである。
いい建築というのはこれが意識されている。すなわち坂を登り切ったとき、あるいは降りきったときに広がるパノラマが魅力的なものになるよう演出されているのだ。