結論未満
第10回「扉が閉じるまで」
エレベーターに乗ると、僕はすぐに「閉」ボタンを押す。
後ろから乗ってくる人がいないことを確認し、目的の階を押し、続けて「閉」を押す。特に急いでいるわけではない。数秒後に重大な締切が迫っているわけでもなければ、扉の外から何者かに追われているわけでもない。
それでも押す。
エレベーターの扉は、放っておいてもそのうち閉まる。そんなことは知っている。僕が押さなくても、エレベーターは自分の仕事を忘れたりはしない。待っていれば、自動で閉まる。だが、待てない。乗った瞬間に速攻で「閉」を押す。押したのにすぐ閉まらなければ、もう一度押す。連打はしない。ボタンが壊れてしまうかもしれないし、連打したところで早く閉まるとは思っていない。ただ、一度目の意思がきちんと伝わっていないような気がして、念を押すのである。
閉めてください。先ほども申し上げましたが閉めてください、と。
エレ