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TRUMPシリーズ短篇小説「今日も生き延びましたね」
TRUMP シリーズ短篇小説「今日も生き延びましたね」 月は誰にも見上げられることなく、静かに夜を照らしている。 山の斜面に縋りつくようにして、その集落はあった。二十戸ほどだろうか。ほとんどの家はとうに屋根を失い、剥き出しになった梁を、雨と風と歳月に食ませている。人が去って三十年。或いは、それよりも長い時間が過ぎているのかもしれない。もとは畑だった土地には、名も知らぬ草が腰の高さまで生い茂っていた。石組みの井戸は塞がれることもなく、暗い口をぽっかりと開けたまま、なにかが落ちてくるのを待っている。 家のひとつに、屋根と戸が残っていた。二十戸のうち、それだけである。蝶番の片方が外れた戸が斜めにぶら下がったまま、風のたびに戸口の枠を打っている。打つ音の間隔が、風の強さを教えていた。その先にある柱に、誰かの背丈を測ったと思われる傷が刻まれていた。横線が七本。一番下から数えて、四本目までは幅
1時間前
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