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■どうしてネットの破天荒すぎる人たちと有料チャンネルをやったのか(深水英一郎/ふかみん)
ネットには、すごく面白いけど、ちょっと常識のタガがはずれた人たちがいます。
面白いので、個人的にそういう人たちは好きなんですが、正直、まともに考えて一緒に仕事をしようとは思わないタイプです。普通だったら。しかし、その破天荒ぶり非常識ぶりが、奇跡を生み出す可能性があると思い、ネット生放送の仕事をやってみたことがあります。
例えばある配信者はガジェ通で結構な期間あーでもないこーでもないと試行錯誤した後、自分自身の会員制有料チャンネルをニコニコチャンネルで持ち運営開始。今は著名な雑誌編集者や、哲学者さん達とコラボするという活躍をみせています。
さて、僕達が一体何を考えてそういう配信者さんたちと試行錯誤をおこなったのかというと、つまるところこの2点です
1.神がかり的に面白い番組をつくれる可能性があるなぁと考えた
2.課金なんかするもんかと長年言っている人が課金でうまくいったら、おそらくあらゆる人にとって参考になるノウハウを得られるかもしれんなぁと思った
ネット配信者には、いわゆるフツーの常識的な感覚ではついていけない配信をする人たちがいて、刺激を求めるリスナー(ネット生放送では、映像を伴うコンテンツでも「リスナー」と呼ばれることがある)に煽られて、さらに刺激的な放送を模索しています。この原稿のタイトルでは「破天荒な人たち」とやや遠慮して書きましたが、要するに問題ある人達もいる世界です。
そういう人たちはかつて、大抵無料放送をしていて多くのリスナーを集めていました。ネット放送の世界で抜きん出るには、露出が多ければ多いほど自然と有利になります。つまり総ての時間を放送に捧げる、ぐらいの勢いで放送を続ける人が残っていく。無料放送でそういうことを続けるわけです。ずっと放送できる時間のある人ってどんな人かというと、「働いてない人」なんですよね。もし働いていたとしても、リスナーに職場を暴かれて、最終的には職場にいたずら電話をされたりするので、仕事が長続きしない。仕事を転々としたりしている。イタ電されても新人を守ってくれる職場ってのはなかなかありません。
つまり、ネット生放送をずーっとやってて露出が多い人ってこんな人たちということになります
・無職の人
・ニート
・もともと家が裕福で働かなくて良い人
・とりあえず今貯金がある人
・えーいままよ、と破滅的な生活をしている人(無計画)
■収入を得られている配信者もいる
ネットで放送しながら収入を得ている人たちもいます。とはいえ、ここ数年の話ですが。
「王道」コースとしてはこんな感じです
・ネット生放送の公式番組などに定期的に出演する(ギャラを得る)
・ブームに乗り、一定数のファンを獲得する(そのファンに対し広告を配信したり有料会員限定コンテンツの配信をおこなう)
いわゆる「ネットタレント」と呼ばれる人たちです。ここ最近、動画共有サイトがグイグイとプッシュしはじめたのはこういった人。
また、こんな人達もいます
・グッズやパッケージをつくって売り続けている(CD、DVD、書籍など)
・銀行口座の番号を晒して、そこに振り込んでもらう
前者のグッズ販売は結構つらいです。お金に困ったら「グッズ売ればいいじゃん」てのはよくある考えです。しかし「メインの収入があってそれにくわえてグッズ販売」ならいいのですが、グッズ販売には浮き沈みがありますのでそれが柱だとしたらつらい。いいときはいいですが、それはバブルでいつか弾けます。
ともあれ、ネットで生放送しながら生きていく、いろんな方法があるわけですが、なにより大事でもっとも主軸になるのは、
「ファンを集め、登録してもらって、ファンに最新情報を送る手段をつくる」
という部分です。ネットの世界で「ここ大事、超重要」ってのは、今にはじまったわけではなく昔から変わりません。最近だと動画共有サイトに直接登録してもらうという方法もありますし、TwitterやFacebookに登録してもらい、そこから発信するという方法もあります。
もちろん、それだけでは収入になりません。
動画や生放送の世界で収入を得るには、
A.あくまで無料で続けて、広告を掲出し、その広告料からいくらかもらう。スポンサーをつける
B.有料会員制にして、月額で会員から会費をもらう
という2つのやり方があります。
前者はファンを広告主に売ることにより間接的に収入を得るモデルであり、後者はファンから直接お金をもらうモデルです。テレビでいえば前者がCMの入る民放で、後者が受信料を取るNHKみたいな感じです。
ネット配信者によって、どっちのモデルが向いてるのかは違います。前者のモデルでいく場合、あくまで背後にスポンサーがいるわけですから、それを配慮した表現ができる人が向いてます。後者の会員モデルは、もともとその配信者のことが好きなファンが集まって会費を払うわけですから、ファンが期待し喜ぶコンテンツを継続的に出し続けることができる人がよいでしょう。アーティストタイプと言ってもよいと思います。
と、ここで話が元に戻りますが、「破天荒すぎる人たち」。彼らは歯に衣着せぬ正直な発言で支持を得ている人が多いです。これって、「スポンサーに配慮した表現」とは真逆です。場合によっては、最も言ってほしくないことを言ったりするわけです。
要するに、「破天荒すぎる人たち」にとってスポンサーモデルは難しい。
しかしながら何を勘違いしたのか、スポンサーモデルでもいけると思っている「破天荒」な人もいる。
ちょっとした不幸の始まりです。スポンサーつきの放送がおこなわれるごとに、いろんなトラブルが起きる、スポンサーが継続しない。
そもそも配信者としての「芸」のスタイルと合わないので、無理があるのです。
そして番組としても、配信者の最もよい部分を引き出せないので、なかなか面白いものになりません。
これって、スポンサーにとっても、リスナーにとっても、そして配信者本人にとっても不幸な結果です。
僕らも、試行錯誤の中で、こういった方向性を模索してみたこともありましたが、やはりうまくいかないとの結論となりました。
じゃぁ、どうしようか。
とりあえず残された道は有料会員制で好きな表現を続ける、ということになりますが、配信者本人達は頑なにリスナーから会費をとることを拒みます。
はてさて、どうしようか……次回につづきます。
(深水英一郎/ふかみん)