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虎山さん のコメント

 知人に商業作家を長くやっている人がありまして、その人は長年の作家業が原因で腰に注射を打ったりメスも入れましたが、いまは立って文章を書くようにしたと言っていました(正確には、座っても、寝ても、立っても文章を書けるように環境を整えた(主に小型のワープロのようなものを仕事道具の主軸にする)ことで姿勢を固定しないようにしたというわけなのですが、高級な椅子は痛みを脳に知らせるのを遅らせるので、むしろ身体には良くないと言っていたのも面白かったです)。そのようにありとあらゆる職業に、長年勤めたことの名誉の負傷があることは間違いなく、菊地さんのあのしぐさも、隻眼の軍人の眼帯を眺めるような気分で拝見しております。戦場には居たくても長くは居られないもまさにですね……菊地さんの武運長久を祈っておりますし、楽しく拝見しております。

 「現状が固定される」ことを、いとうさんはツイッターで「(他のみなさんや)菊地さんも出たあのイベントで話し合ったようにこれからも透明な板的なものがメディアから消えることはないのだから(要約)」とつぶやいておられまして、僕はそのイベントを観覧しておりませんでしたので、「え、菊地さんもかよマジで?」と思ったのですが、今回のエセーを拝読して「だよね!」と思いました(笑)(僕はあの透明な板を見るたびにドラマーなどの前に置かれた反響板のほうを連想します(笑))。
 ここではお名前が上がっていないので、匿名としますが、長年深夜ラジオのパーソナリティーを務め、菊地さんもゲスト出演された映画紹介のラジオ番組のホストも務めていた恰幅の良いタレントのかた(この氏もパロディー寄りではありますが、その昔ラップをしてました)もこの「現状が永遠に固定される。特に娯楽では」という未来展望に入っていまして、僕はそのかたの深夜ラジオを20年ほど聴いていて、ある時期は心のよすがに、ある時期はリラックスできる友人として聴いていたのですが、深夜ラジオなのでその展望を笑いを交えながら語るというスタイルでもあっても、あまりにも真面目で、あまりにもパセティックなので、ついに番組をリスニングするのを止めてしまいました。今回の流行病には僕の内外でほんと色々なきついことも起こりましたが、長年のことをやめる、というのはこれが最長の事でして、個人史としてとても大きなことでした。

 いとうさんと氏は共演も多く、共通点も多く、とても真面目で、知性があり、繊細で、才能があるサブカル、という方々がこの展望に入ったことに納得と悲しみがあります。氏のほうは、現状の初期に、自らの出自である落語を再び始めることを、そしてそのうち師匠と二人会を開くことまで取り付けたので「おぉ!」と思ったのですが、その後によりこの展望に向かったことも「うぉ」いう感じです。「現状が永遠に固定される。特に娯楽では」という展望、「しかし娯楽は必要で、そこに関わる人々の経済も回さなくてはならない。だから透明な板は永遠の固定のままで考えよう」という推論は、真面目で正しいようで、しかし菊地さんが仰るようにかなり精神的な未来展望を強く感じ、なおかつ不景気な考え(現状が続く、という時こそ人々は財布のひもを一番強く締めると思います)なので、嫌で嫌で仕方ないです。(このお二人ときたら、みうらじゅんさんだと思い、みうらさんはいま何をなさっているのだろう?と思い検索したら、「ステイホームをホームステイと間違えた。なので自宅をインド化している、これはビートルズのインド期に続く第2のインド化である。ここから日本のインド化を始める」というパフォーマンスをされておりまして、ゲラゲラ笑いました)。そんななかでこのなかでも菊地さんの舵取り、行動は気分よく、拝見しております。

 僕も全員が博徒でありこの状況下では特にそれを意識するべきだと思っているのですが、この掛けは実は勝ちが一切ない勝負だと思い始めています。でもそれは暗い諦観ではなくて、全員がこの病の展望を立てた上で、全員がスパっと負ければ良い、という感じなのですが。
No.8
46ヶ月前
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 今、お酒を飲んでから寝て(「酔っ払って寝てしまった」んではありません。あれはジミヘンや江利チエミさんの命も奪った非常に危険な行為ですし、僕そもそもーー今日のテーマみたいな話ですがーー逆流性食道炎にかかりやすい、つまり、噴門部が開きっぱなしになってるんで、アルコールの酩酊が収まるまでは絶対に横にならないし、アルコールが入らなくても、食後は横にならないです)、お酒の悪いところは「一瞬は寝かせてくれるんだけど、2~3時間で起こしてしまうところ」だと思いませんか?思いわないか笑?    何れにせよ、加齢とコロナの挟殺によって「バンド仲間と、非常に大量に飲む」ということが NG ガチンコになってしまったので、実に久しぶりでして(ウソ!ブルーノートの後にも打ち上げで8万ぐらい使ってしまった笑)、まあまあ「やっぱりコロナなんて早く明けて、みんなで飲みに行ける状態が戻って来ればいいな」なんてシンプルな結論ではなくて(笑。「みんなで飲みに行きたく」なったら、僕きっと戒厳令下でも行きますから)、っていうか、話逸れるんですが、ポストコロナに関して、以前「世論が二分される」という話を書きましたが、二分どころじゃないですね笑。  
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