菊地成孔さん のコメント
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もう解散したので、バックヤードの話を少々しても良いだろうと思う。バックヤードの話のが演奏よりも、時間換算して数千倍あるのは言うまでもない。僕はステージ上でオルガン弾いたり、指揮したり、最近はカウベル叩いたりしているけれども、最も細心の注意を払っているのは実はタイムキープだ(因みにぺぺでも)。
コロナ以前の世界でも「もう、やりたいだけやっちゃいましょうよ」なんて言う粋な計らいをするクラブはなかった。全ての楽団は充てがわれたランニングタイムを遵守しないといけない。
増してやコロナ禍の中では、完全撤収時間が厳格に決められるようになり、「やりたいだけやり切って、尚且つ時間は守る」というライブショー・ビジネスの基本が、さらに厳しいものになった。<会場を借り切って、無観客配信>というのは、僕はやらないが、アレだってさすがに家飲みみたいにはいかないだろう。
海外用のオプション、というのが、正直どうすれば良いのか全くわからないダメ社長なんですが笑、とにかく世界中で入手できるようにはしたいと思っています。行商しようかな笑。
20世紀は、「破壊が再生を生む」という極論が幅を利かせており、それは戦争イメージによるものも、死と誕生、という根源的なものもあったでしょうが、僕は今回「フレッシュで最高の状態で任務を終了すること」を21世紀的だと考えて解散を実行に移しました。言葉に慎重を期しますが、尊厳死の変形だとか、生前退位だとかと解釈してくださっても結構です。
正直言って、「ちょうどいい、もうやめたかった」というメンバーは一人もいません。破壊しなくてもいい、破壊はもう、腐敗とともにかなり進行しています。再び言葉に慎重を期するならば、関東大震災や東京大空襲や原爆投下や原発事故のような破壊はアナロジーとしても行うべきだはない。僕はシャネルやディオールみたいにブランドが継続することをまだ望んでいます。ただ、いろんなことに夢中になりすぎて、「跡目継儀」を育てる事を忘れていました。なのでブランドを閉鎖しますが、新しいブランディングは考えています。それには、莫大な欲求不満と、完全な納得がフィールドを覆う必要があります。そのことには成功したなと、安堵に胸をなで下ろしています。合衆国でのご健勝をお祈り申し上げます。
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