菊地成孔さん のコメント
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セネガル人のママドゥは、ルノアール渋谷店のソファに座り、スマホをいじっていた。色々な手配が必要だからだ。ミリ単位で綺麗にシェイヴされた髭、アフリカ人の特権である、どれだけ宝石を身につけても下品にならない茶褐色の肌、痩せ型でとても静かに話す。北米だったらゲイピープルと目されるだろう。ママドゥは足元の大きな袋を指差し、在日アフリカ人独特の無表情で「あ、この中にあるから」と言った。
元 DMR 、現在は HMV ヴァイナルシブヤの上にあるルノアール渋谷店は、他の多くのルノアールと同じ、壁面ウインドウを誇っていた。僕は基本的に渋谷は使わないが、ヴィロン(パン屋がやっているブラッセリー)とプラザ(水槽型の巨大なプールが設置されているラブホテル)といくつかの映画館をごくごくたまに使うので、道玄坂より東へはストリート1本でも全く通らない。
まあ、日記を読んだところで、内容は一緒ですよね笑。最初にお願いがあります。他のことならともかく、この件に関してのみは、裏回しに、つまり僕と私信で往復しましょう。でないと、コメ欄に独立区ができることになりかねません。
お父様が病床に伏された、というのは、端的に、まだ、という意味では、最も来て欲しくなかったネクストステージですから、さぞかしめんどくさく、さぞかし辛く、さぞかし苦しいと思いますが、これは仰る通り、これから去来する感情と仲良くすべきですし、お父様への殺意を取り払うか、解除するか、とうとう取り払えずにお父様が亡くなってしまうのか、お父様は意外としぶとく、今回の入院ではとりあえず寛解して退院なさるか、誰にも読めません。僕からは、最初に申し上げた「ボクシングを始めてくれ」「続けてくれ」という提案以外、一切何もありません。
ただ一点だけ、あなたは大変な文才があります。すごく簡単にいうと、このコメントも、大変なことを書いているのに、「感動させるし、かっこ良い」文章なんですね。プロフェッショナルと言えると思います。文章力がある人間は、本当の本当の感情を外に出さなで隠す能力を持っています。あなたのお父上が亡くなった時、あなたがあなたの本当の本当の心の声耳を澄ます一手前に、あなたの文章が、ある構造を持ってあなたを代弁してしまう可能性もあるんです。
僕の勝手な欲ですが、あなたには、自分と向き合ってもらいたいです。そもそも「父親に殺意」があり、それにそれなりの説得力の根拠があっても、あなたは根底からの声に動かされているだけで、あなたと全く同じ境遇うに生きて、良いうか、あなたの代わりに、あなたとして生きて、お父様に殺意を全く抱かない人もいるんです。ここが重要です。あなたは大分タフになったり、大分落ち着いたので、自分で乗り越えられるでしょうが、これからの日々は正直言えばきついと思います。何かあったら私信でください。日記にフックしたコメントまで禁じている、ということではありませんので、あしからず。いつでも応援しています。
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