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菊地成孔さん のコメント

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菊地成孔
>>35

 会場でのご鑑賞ありがとうございます!「2つボタン1つ掛け」のマナーに反しているのはどうして?というご質問が、いつ来るかいつ来るかと思いながら、二十年ぐらい来なかったんで笑、変な話ですが「やったー!」と思いました笑

 あれは(ご指摘の通り)一種の無作法です。第一の理由としては無作法がしたい。というのがあります。配信をご覧になった方ならお分かりだと思いますが、僕はアンコールの時、全力疾走し、バンドネオンの位置でジャンプして、サックスの前に着地していますが笑、あんなデリケートで「走ったらダメ(下手に着地したら、最悪ハープが横転しますし笑)」な場所で走ったり飛び上がったりしたいんですね笑。これがまあ、やんちゃな理由としては一つあります。

 あれは、サウンドチェックの後、周到に練習しています笑。サントリーホールでは、はっきりと「舞台上を走らないでください」という注意書きがあるんですが、アンコール後の退場時に、スキップしてから全力疾走して舞台袖まで走り込みました笑。

 もう一つはジャズ界の伝統で、ビッグバンドジャズのサイドメンはディナースーツやタクシードというより、ユニフォームとしてスーツを多く着用していて、多くはボタンは全掛けです(3ボタン全掛け。というユニフォームもあります)。この伝統にひっそり乗っていたいな、という、隠しトリビア(&リスペクト)もあります。

 調子に乗って、ぺぺの衣装について書きますが、ぺぺは活動三年目からジャズやラテンのビッグバンドと同じく、完全なユニフォーミティを標榜していて、少なくとも男性は、同じブランドの、同じタクシード(採寸したフルオーダー)で、ボウタイが義務付けられていました。女性も、パンツルックはNGでした。その時は、スーツ側の作法に則り、下ボタンは外していました。演奏する上でも、こっちの方が楽なのは言うまでもありません。

 が、フルオーダーあるあるで、主に肥満によって笑、入らなくなってしまった。というメンバーが、自前でスーツを用意し始め(おかげさまでと言うかなんと言うか、僕はそこまで肥満していませんが)、タイドアップも義務ではなくなってきました。大儀見は、配信のセット以外はノータイで第一ボタンも開けています笑(地方のホールとかだと、ジャケット脱いじゃって腕まくりして、刺青見せまくっています笑)。

 本当は僕は、またフルオーダーのユニフォームに戻したいのですが(胸にバンド名入れたりして笑)、完璧にやっちゃうとスカパラさんみたいになっちゃうし(スカパラは一番好きで尊敬しているダンスバンドなので、彼らを批判しているわけではありません)、ジャズではなく、ラテンのビッグバンド、例えばファニアオールスターズなんか見ると、バラバラなんですよね。なので、「一見、ユニフォーミティなんだけど、よく見るとバラバラ」というラティーナな現状を良しとしながら、ジャズのビッグバンドへの隠しリスペクトを続けています。

 配信で着ていたのは、スーツもインナーもシャツも(映らない)シューズ全部同じ、アレキサンダーマックイーンのセットアップです。でもそれは、ショーで見たときにノータイがかっこよかったので、ノータイにしています。「なんで菊地さんだけタイドアップしないんですか?」という質問は、未だに頂いていません笑。ある意味、お客様は「それどころではない」のかも知れませんが、まあなんと言うか、自己満足的な遊びですね。ご質問ありがとうございました!

 
No.36
34ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
 今年、「正月がなかった」のは僕だけではないのではないだろうか、多くの芸能人がハワイで正月を過ごし、年末年始番組の多くは撮り溜めであって、ホノルル空港やワイキキの5つ星ホテルの前にはテレビクルーが待ち受けていて、という光景は、そうでなくともアウトオヴモードになりかけていたとはいえ、ここ数年は構造的に無理になったままだ。    もちろん僕がいかにハワイを愛していても(恥ずかしながら初めて書くが、僕は二度目の結婚式はハワイアンヴィレッジーワイキキビーチで最も偉大なレトロホテルーで挙げ、パーティーはハワイでも有数な、新興おしゃれ地区の、かなりイカした巨大なカフェ空間で行なった。思い出すに我ながらーというか、2人目の、女優の様に美しく聡明な妻が全部仕切ったのだがー腹が立つほどお洒落なパーティーだった。ブルータスが取材に来てもゼクシィが取材に来てもなんら問題はなかったと思う。というか、両誌にとって、かなり有益な記事になった筈だ)、正月をハワイで過ごすほど儲けていない。というか、正月は東京に限る。    僕は、とにかく東京の正月が好きである。東京が好きで正月が好きなのでワンプラスワンがいくつにカウントされるのかわからない。伊勢丹で10月には節を予約し、知人の酒造りから最高の純米吟醸無濾過を一升便で送ってもらい、行きつけの寿司屋から鯛の塩焼きをやって貰って、丸鶏1匹から清湯を作って雑煮にし、東宝60年代の DVD を見ながら数日ゴロゴロするために生きているのだな、と思う時さえある。    しかし今年は違った。僕は「新音楽制作工房」の立ち上げに際して PC に LINE まで搭載し、「岸辺露伴」のオンエア日にチャンネルを立ち上げるべく奮闘し(僕以上に奮闘したのがあのギルドのメンバー達だが)、大晦日の DJ のために選盤とサバールの練習をし、正月は、セブンで売っている、よく知らないビオワインでモスチキンを食いながら2日間だけゴロゴロし、「お正月」は高速で通り過ぎていった。<疲れて2日ぐらい何もできず、ぐったりしていた>という、半年に1回ぐらいやるアレと何も変わらない。  
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