出版不況、そして少子化が続いているなかでも、近年、児童書は好調に売上を伸ばしています。児童書といっても、児童読み物、図鑑、学習漫画などさまざまなジャンルがありますが、2021年版出版指標年報によると、その35.5%を占めているのが絵本です(※1)。主に自治体による、赤ちゃんのいる家庭に無償で絵本を提供する「ブックスタート」という活動や、学校の始業前に10分間読書をする「朝の読書」活動をはじめ、書店では読み聞かせ会やおはなし会が実施され、コロナ禍ではオンライン開催も広がりました。

そして、今年は「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」第4回の投票が開始されています。

「こどもたちが本と出会う機会を作り、本をもっと身近に感じてもらいたい」という思いから、小学生に「1番好きな本」への投票を呼びかけ、選ばれた本のランキングをこどもたちと発表するイベントです。2017年の初開催以来2年に一度のペースで実施され、過去3回でのべ約54万人の小学生が投票に参加しています。結果発表時には、こどもたちが選んだ本の作者を、こどもたちが表彰する結果発表会を行ない、その模様は200以上のメディアで紹介されました。さらに全国2,000店舗以上の書店で上位ランクイン作品が大きく展開され、児童書のみならず出版業界をにぎわすイベントとしても定着してきています。

また、過去ベスト10にランクインした「ざんねんないきもの事典」シリーズや「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」シリーズは今ではこどもたちに大人気のシリーズとなり、こどもたち自身が起こしたムーブメントが出版業界を大いに盛り上げました。

電子書籍の普及も進む中、それでも「記憶の仕組みを考えた場合、紙の本には電子書籍にない優位性がある」と強調するのが、生態心理学の観点から記憶について研究している松島教授。

同じ文章を読むにしても、「本を手に取って読むとき、書かれている内容を記憶するのと同時に、ページのどの位置に、どんな内容が書かれていたか、ページの肌触りや紙の質といった無数の情報を無意識に五感で受け取っている」ことを指摘されています(※2)。

デジタルネイティブな世代にこそ、実際に五感で味わう体験の機会をつくることに意義があるのかもしれません。

・※1出典元:絵本市場のいま 少子化でも売上好調な理由とは?コロナ禍におけるプロモーション事例も紹介(図書印刷株式会社)

・※2出典元:「紙の本なくならない」ページめくる動作にカギ(産経新聞)

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