ミステリー小説『世界でいちばん透きとおった物語』(杉井光・著/新潮文庫nex/5月1日発売)が、大ヒットを記録しています。全国書店で次々にベストセラー1位を獲得、完売店続出、数々の著名人から熱いコメントが届くなど話題沸騰中の同作品。発売直後から「今までに読んだ本で一番の衝撃」、「本の形をした芸術作品」、「何を言ってもネタバレになるから、スゴイとしか言えない」など次々に口コミが寄せられ、さらなる重版が決定。発売から約1か月で累計発行部数10万部となりました。

本書には紙の書籍でしか実現できない、ある仕掛けが施されています。読者に“体験”をもたらす驚愕の企みについて口コミが次々と広がり、普段はあまり本を読まない読者、とくに10~20代にまで広がる異例のヒット現象となりました。紙の書籍ならではの仕掛けの裏側を著者の杉井光さんはこう語ります。

「これまでの読書人生において一度だけ、読み終わった後にただ言葉を失うしかなかった、という本がありました。それに匹敵する純粋に強烈な読書”体験”を、読者にぶつけてみたい。そんな想いでこのアイディアをプロットに落とし込み、多くの方々の協力を得て本の形にしました。出版できたこと自体がすでにひとつの奇蹟です」

全国の書店員さんからも、「紙の本が持つ可能性、本への愛情を感じた」「本の素晴らしさを改めて教えてくれた1冊」などの感想が寄せられ、かつてないヒット現象をTBS系「王様のブランチ」ほか、数々のメディアが取り上げています。

また、5月16日に公開されたYouTuber「TERUちゃん」の紹介動画が大反響となり、「Amazon本の売れ筋ランキング2位」に急上昇、ネット書店とリアル書店ともに品切れが続出する事態となりました。

*【TERUちゃん@teru5300】今後の人生で記憶が消えない限りもう二度と見ないと思ったほどの衝撃作が爆誕した件について

 

2022年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比6.5%減の1兆1,292億円と1兆2,000億円を下回りました。内訳は、書籍が同4.5%減の6,497億円、雑誌が同9.1%減の4,795億円となっています。いっぽうで、電子出版市場は前年比7.5%増の5,013億円。コロナ禍の好調からは鈍化しているものの、出版市場における電子出版の占有率は30.7%と3割を超えています(※1)。

そんななか、紙の書籍でしか体験できない仕掛けを持つ書籍が異例の大ヒット。デジタルコミュニケーションの常態化は、その反面アナログな体験型コンテンツの優位性を明らかにしつつあります。デジタルの波に押されている出版の分野においても、絵本や児童書が好調なように、紙の本でしか表現できないことには、その圧倒的な体験価値によってヒットを生むという傾向はこれからも続くと思われます。

・※1出典元:2022年出版市場(紙+電子)を発表しました(出版科学研究所)

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