170の世界主要国および各地域における2022年のビール消費量についてキリンがまとめたレポートによると、世界のビール総消費量は、約1億9,210万kl(前年比2.9%増)となりました(※1)。これは、2019年と比較して1.0%増加となり、コロナ禍からの回復傾向が見られます。

国別では、中国(前年比1.0%増)が20年連続で1位。日本(前年比2.5%増)はやや増加しましたが、2年連続で順位を落とし10位という結果に。

今回はそんなビール業界に注目し、2022年から最新の2024年前半にかけて、国内外のビールの広告・プロモーション15事例をまとめました。

1.対戦相手を煽っても、一緒に飲めば仲直りできる? ビール会社が提案する“最もおいしい平和協定”

アメリカのビールブランドMichelob Ultraは、スポーツをカジュアルに楽しむすべての人を応援したいというメッセージを込めて、キャッチコピー“THE MOST REFRESHING PEACE TREATY(最もおいしい平和協定)”を軸に、男女2人組がカジュアルにテニスを楽しむ様子を描いたCMを2022年に公開しました。

勝利直後に喜びを大きなジェスチャーで表現することは、対戦相手に対しての“煽り”と解釈されることもあり、スポーツやゲームでは度々議論の対象になります。それを踏まえてか、ラストカットでは「最もおいしい平和協定」のキャッチコピーが映し出され、どんなに悔しい試合結果でも終わった後にMichelob Ultraを分け合えば友情は続くというブランドメッセージをポップにアピールしています。

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2.アイスブレイクに失敗してしまう人々を描いた、Ice BreakerというビールのCM

イギリスのローカルビールブランドGreene Kingは、同社が展開するペールエールIce Breakerの名前にちなんで、さまざまな“はじめまして”の場面で間違った挨拶の仕方をしてしまう人々の様子を描いたCMを2022年に3本公開しました。

「アイスブレイク」は、コミュニケーションにおいて緊張を解きほぐすための意味合いでも使われますが、動画ではそれを逆手にとって、同商品を印象付けるためにあえて気まずいシーンを描いています。

日常的に使う機会の多いフレーズを斜め上からの切り口で描くことで、商品名の認知を上げようと試みた企画でした。

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3.ビール好きへの挑戦状 チャレンジングなノンアルビール認知拡大施策

アサヒビールが近畿エリアで先行販売する「アサヒ ゼロ」の認知拡大と飲用喚起を図ることを目的としたバーを、2023年10月24日(火)から10月29日(日)までの期間限定で阪急梅田駅ビックマン前にオープンしました。

「#ゼロの衝撃」をテーマにしたプロジェクトの一環として登場したこちらのバー。メニューは「アサヒ ゼロ」「アサヒスーパードライ」「アサヒドライゼロ」の3種の飲み比べセットで、それらは商品名が隠された状態で提供。“本物のビールを当てる”ゲーム感覚で飲み比べが楽しめる仕掛けです。

この企画を通じて狙っているのは「アサヒ ゼロ」がビールの代替品ではなく、むしろ積極的に「飲みたいから選ぶ」ノンアルコールビールテイスト飲料になること。簡単に本物のビールが見抜かれてしまっては、逆に評判を落としかねないリスクも考えられる中での大胆なチャレンジとなりました。

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4.醸造家の“もう一つの夢のビール”、スーパーリアリズムの巨大広告「超絶技巧美術館」

サントリーは、2023年11月14日(火)から数量限定で発売中の「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉2023」を記念した広告の掲出を実施。ビール醸造家の卓越した技術や情熱といったものを表現した、美術館風の巨大広告「超絶技巧美術館」を、12月4日(月)から10日(日)までの期間、新宿駅構内に掲出しました。

今回の広告では、クリエイターたちが、「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉2023」の商品ボトル・グラスを、膨大な時間と緻密な技術により克明に描写する“スーパーリアリズム”という手法を用いて、まるで写真であるかのように見えるリアリティと存在感のある絵画ポスターに仕上げて展示されました。

掲出場所では、異なる技法を用いた2枚の絵画ポスターを展示。さらに、QRコードを活用した音声ガイドや制作風景のタイムラプス映像、展示作品を解説したパンフレットも設置し、駅にいながら、まるで美術館に訪れたような空間が演出されました。

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5.苦い思い出を笑い飛ばす? ハイネケンによる苦くないビールのCM

ビール大手のハイネケンは、アイルランドで販売するスタウトビールIsland’s Edgeの“苦味ひかえめ”という特長を、人生におけるさまざまな苦い体験に喩えた動画「It’s Better, Less Bitter(苦味ひかえめはおいしい)」を2023年に公開しました。

「2013年のスポーツ大会で、俺じゃなくてOwenが選抜メンバーに選ばれたんだ。あのOwenだぞ? まあでも、結果的にあいつがいてくれて助かったけどな」と選抜チーム入りを逃してしまった男性や「わたしのお母さんは、わたしの結婚式で白いドレスを着てきたの……本当に美しかったわ」と母親に主役の座を奪われてしまった女性、長年通い続けたバーで常連客に別の名前で覚えられてしまった人など、さまざまな苦い体験が語られ、それでも前向きに振る舞う様子が紹介されます。

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6.架空の世界で製造過程&楽しみ方をアピール!タイガービールのZ世代向けブランディング動画

60を超える国と地域で販売されているシンガポールのビールブランド・タイガービールが、Z世代に向けて制作したブランディング動画を2023年に公開しました。ブランドの世界観を体現した架空の設定の中でタイガービールが出来上がる工程と、それを楽しむエンドユーザーの様子をスタイリッシュに描くことで同社が目指している姿をZ世代の興味を引けるように表現しています。

あえてCGを活用した架空の映像に仕上げることで、ブランドが見せたいことだけでなくユーザー目線で“見たい”と思われるような映像に仕上がりました。

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7.あえて商品ビジュアルを削除!?コロナビールが衝撃的なOOHを展開した理由

あらゆる商品広告における大原則として“商品を魅力的に見せる”という暗黙の了解があります。食品であればいかに食欲を刺激するか、ファッションアイテムであればいかに美しく見せるか、旅行であればいかに優雅な時間を過ごせるかなど、業界によってアピールポイントは異なるものの「購買行動を促す」という目的は共通しています。そんな中、南米発のビールブランド・コロナビールはあえて商品そのものを広告から消すという前代未聞のOOHを2023年に公開しました。

業界内でも高い知名度を誇るブランドだからこそできる思い切った表現方法を採用することで、環境改善に向けた真剣な思いと姿勢を印象的に打ち出すことに成功した意欲的な事例となっています。

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8.決めてはシンプルな言葉! スコットランドのビールブランドが公開した愉快なCM

スコットランドに拠点を構えるTennent’s Lagerは、300年近い歴史を誇る人気ビールブランドです。伝統的な製法を用いながらも現代的な宣伝手法を取り入れている同社は、世代を超えてさまざまな人に愛される存在でありたいというコーポレートメッセージを込めたCMを2023年に公開しました。

この動画では“Oooft!”というシンプルなセリフを通じて、嬉しい時も少し苦しい時も飲みたくなるビールであるとアピールしています。

CMと同時に公開されたOOHでも同様に“Oooft!”という言葉をフィーチャーし、さらに視覚的にわかりやすくなるよう工夫が施されています。

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9.まるで気分はシンデレラ!? 世界に32足しかない激レアスニーカーが当たるOOH

大手ビールブランドのハイネケンは2022年、Z世代向けに自社のビールを訴求するために“ソールにビールが入った限定スニーカー”を32足製造し世界中のファッション業界に衝撃を与えました。

ビールのCMには興味を示さないターゲット層であっても、ファッションの文脈に乗せてしまえば注目してもらえるはずだという願いが込められた施策は見事に成功。32足の内1足はタイのマーケットに輸出され、現地支社はそのプレミアムなスニーカーが景品のユーザー参加型OOHキャンペーンを2023年に実施しました。

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10.コロナビールの宝くじならぬ“宝ボトル”風プレゼントキャンペーン

軽やかな喉越しと印象的な酸味が特徴的なコロナビールは、夕暮れ時に飲むと最もおいしく感じられるという説があります。そんな言説を体現するべく、同社はビール瓶に実際に醸造された時間を印字し、その数字が事実上の抽選番号になる特殊なプレゼントキャンペーンを2023年に公開しました。

施策の名前は“Sunset O’Clock(夕暮れ時)” 。キャンペーンの仕組みとしては、それぞれ異なる時刻に醸造されたビール瓶に打刻された数字が抽選番号となり、ユーザーはその時間が見えるように写真を撮った上でコロナビールの公式SNSアカウントにダイレクトメッセージで写真を送信。醸造時間がその日の実際の日暮の時間と同じであればユーザーにはコロナビールの世界観を象徴するような豪華な旅行券がプレゼントされるというものです。

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11.全部知っていたらマニア!ビールの8種類の注ぎ方を味わえる体験価値の高いイベント

2023年7月、JR東京駅構内地下一階の改札外施設、グランスタ東京内に店を構えるノスタルジックバー&カフェ「Depot」において、ハーフ&ハーフビールの常識を覆すイベント「HAYASHI Beer Day HALF&HALF SPECIAL」が実施されました。

このイベントは、レトロサーバーであるスイングカランを使用し、エビスプレミアムブラックとサッポロ黒ラベルのハーフ&ハーフビールを8種類の注ぎ方で提供することが決定。鮮やかな見た目も楽しめる新たなビールイベントとして、体験価値の詰まった、じつに魅力的なイベント施策となりました。

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12.足跡がビールグラスの形になる!? ギネスが限定ブーツを開発

ギネス世界記録の企画元としても知られるギネスは、アイルランド発祥の老舗黒ビールブランドとして日本を含む世界各国で販売されています。高い企画力を誇るブランドでもあるギネスは広告賞における常連としてその名を馳せています。

そんなギネスから、またもや意外性抜群のプレゼントキャンペーンが2024年に公開されました。“Foot Pint(フットパイント)”というタイトルがつけられた施策は、雪面を歩くたびにギネスを彷彿とさせるビールグラスの形をした足跡を残せるブーツを、ユーザーに配布する施策。“足跡”を意味するfoot printから1文字抜くことでビールグラスのサイズ(pint)になる言葉遊びからも伺えるように、ギネスならではの遊び心が詰め込まれています。

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13.日本人はまだ知らない? クラフトビールの知られざる魅力を発信する体験型イベントが開催

キリンビールは、クラフトビールの体験型イベント「実は、今まで同じようなものばかり飲んでいたかもしれない。あなたがまだ知らないビールの世界 Produced by SPRING VALLEY」を、2024年3月8日(金)から10日(日)までの期間、新宿で開催しました。

イベントは、日本で主流のピルスナービールとクラフトビールを飲み比べる「ビアフライト」体験や、CMセットを模した150種のクラフトビール展示が楽しめる空間に。また、日本や世界のビールの「意外な真実」を巨大スクリーンで掲示。さまざまな情報を通じて、来場者にクラフトビールの魅力をアピールしました。

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14.喉ごし、香り、コクを楽しむ!サッポロ生ビール黒ラベルの3WAYグラスプレゼントキャンペーン

サッポロビールは、サッポロ生ビール黒ラベル「ザ・パーフェクト3WAYグラス」プレゼントキャンペーンを2024年2月1日(木)より実施しました。

今回のキャンペーンでは、対象の黒ラベル缶商品を購入した時のレシートで、ポイントをためて応募することができます。一口6ポイントで応募でき、抽選で4,700名に「ザ・パーフェクト3WAYグラス」と専用の洗浄用スポンジが1セット当たります。

一杯のビールには「最初のひと口」「中盤」「終盤」と複数の異なる味わいがあることに着目。いっぱいのその魅力に注目した、ビールのコクや香りを最大限に引き出せる3種類の異なる飲み口が特長のオリジナルグラスとなっています。グラスの正面と背面はベーシックなストレートな形状で、左側はくびれ、右側は膨らんだアシンメトリーな形状です。3種類の異なる飲み口によるビールの味わいの変化を、「サッポロ生ビール黒ラベル」で楽しんでほしいという思いが込められています。

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15.6,200万人分の歓声を聴きながら育った南アの限定ビールはどんな味なのか?

2023年の9月から10月にかけて開催されたラグビーワールドカップ・フランス大会(以下RWC 2023)は、多くの強豪国を退けた南アフリカが3回目の優勝を果たし、ニュージーランドとともに歴代優勝回数が最も多い国に並びました。2019年に開催された日本大会での優勝がまだ記憶に新しい中での2連覇は南アフリカ国民を大いに沸かし、同国内でスポンサーを務めていたさまざまな企業が優勝記念キャンペーンを公開しています。

南アフリカの地ビールブランド・Castle Lagerもその内の一つで、RWC 2023の感動を自社商品に文字通り“詰め込んだ”期間限定のビールを発売しました。“Beers of Cheers(歓声で完成するビール)”というタイトルが付けられた商品の最大の特長は、RWC 2023における南アフリカ代表戦で実際に録音された国民6200万人分の歓声を醸造中のビールに聴かせたことです。

実際に味や喉越しに影響があるかどうかは定かではありませんが、一生に一度の体験となったRWC 2023優勝をビールメーカーならではの手法で祝福しました。

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ビールの広告・プロモーション事例まとめ

コロナ禍を経て、家消費だけでなく外での消費も回復傾向にある中、これから迎える夏商戦でもさまざまなビールにまつわる施策が展開されるのではないでしょうか。

今回まとめた事例を念頭に、どんな変化やトレンドが生まれるのか、予測とともに違いを楽しむのも一興かもしれません。

・※1参照元:2022年 世界主要国のビール消費量~不安定な世界情勢の中、コロナ禍前の規模に回復~(キリンホールディングス)

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