「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」『輪るピングドラム』
弱いなら弱いままで。
話題のゾンビ映画『アイアムアヒーロー』を見てきました。
うん、面白かった。原作は未読だし、普段はあまり見ないタイプの映画なのだけれど、十分に楽しんで見ることができました。
あたりまえの日常がしだいにゾンビ(ZQN)に浸食されて崩壊していくくだりはコミカルでありながら説得力に富み、そこだけでも素晴らしくインパクトがあります。
じっさいに世界が亡びるときってこういう感じなのかな、と思うくらい。
特に「テレ東がアニメをやっている限り大丈夫」からの、突然ZQNの特番を放送しはじめる展開のコンボは笑った。国が亡びかけているのにアニメを放送しているテレビ東京っていったい。
で、あたり一面にゾンビが蔓延するようになってからは後半戦で、主人公はゾンビ相手に八面六臂の活躍をします。
このゾンビの造形が個性的でありながらチープさがないあたりが凄い。邦画でもここまでできるんだなあ。
なんでも韓国でロケを行っているそうで、迫力満点のカーアクションシーンなどはそのあたりに原因があるのかもしれません。
クライマックスの主人公とゾンビの死闘は圧巻の出来。もうこれどうしようもないのでわ?というところから過激なサバイバルが続くのです。
この映画、主人公はクレー射撃が趣味で、ショットガンを持ち歩いているという設定なのですが、いったいいつこのショットガンが火を噴くのか、わくわくしながら見ていました。
その時こそダメ人間の主人公がヒーローに変身する瞬間であるのに違いないのですが、なかなかそのタイミングは訪れないのですね。
結局どうなるのかはネタバレなので語ってしまうわけにはいきませんが、当然、最後まで撃たないで終わるということはありません。
「アイアムアヒーロー」。意味深なタイトルの意味がはっきりとわかるその瞬間は、ゾクゾクするようなカタルシスがあったことは報告しておきます。
ただ、もともとぼく、ゾンビ映画、というかホラー映画全般がそんなに好きじゃないんですよね。
というのも、ぼくは正義が勝たないと気が済まない人なので(笑)、秩序が回復されない物語は好きになれないのです。
でも、この映画は楽しかった。最後までマクロ状況は放置されたままなのだけれど、ミクロスケールのカタルシスに的を絞ったシナリオが功を奏していると思う。
結局、この映画、オタクの願望充足映画なんですよね。
いまはそうでもないのかもしれませんが、昔ながらのオタクは日常生活のあまりの退屈さに耐えかねて「あーあ、世界亡びないかなー」とか考えたことがあるはず。
たぶん、この映画の主人公もその種の人間だろうと思うのですが、この映画のなかではかれの内心に反応したように世界はほんとうに崩壊してしまいます。
本編中のセリフにもあるように、主人公は「きっと何者にもなれない」ことに悩む現代的なキャラクターで、かれの願望は日常が崩壊し非日常が現出することによって叶うのです。
ダメ男がヒーローになれる世界が訪れるわけ。そこで現実世界では能なしだった主人公はまさにヒーローへと成長していくのですが――それでいいのか?という気もしなくもない。
有村架純が演じる女の子がいったい何者だったのか最後までわからないとか、シナリオ的にも色々問題がある作品ではあるかと思いますが、まあ、あくまで願望充足映画でありジェットコースターエンターテインメント作品なので、深く考えたら負けなのかもしれません。これはこういうものだと受け止めるべきなのでしょう。
なんといっても、
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