同人誌やイラストの美しいデザイン100―レイアウトの基本から配色、文字組みまで

 また本を作りたいなあ、と思う。この場合の本とは同人誌のことだ。かつてぼくは二冊だけ同人誌を制作し、発売し、まあ、それなりに売れた。

 同人誌の良いところはセールスなどをあまり考慮に入れずに好きなことを好きなように書けることだ。ぼくは自己満足を唯一の目標に置き、好きなテーマで好きな話題を好きなだけ書いた。

 その結果としてできあがった本は商業出版ではなかなか書けないようなものに仕上がった。それが『BREAK/THROGH』であり『戦場感覚』である。

 この二冊の特徴はとにかく改行が少なく、文字が詰まっているということだ。そういう意味では読みづらい本だったと思う。しかし、そのときは読みづらくても良かった。

 「読みたいひとだけ読んでくれればいい」「わかるひとだけわかってくれればそれでいい」とは、いかにも傲岸な態度だが、そのときはまさにそういう気分だった。

 『BREAK/THROGH』にしろ、『戦場感覚』にしろ、文体はきわめて硬く、内容は難解でこそないが錯綜しており、一読ですべてを把握し切ることはそうたやすくはない。しかしまあ、そういう本を作りたかったのである。

 『戦場感覚』を書き終えたあと、ぼくは本を作ることをやめた。それは二冊ぶんも文章を書いてそれなりに満足したからでもあるし、その二冊で「もうこれ以上のものはできない」と思ってしまったからでもある。

 さまざまな試行錯誤の末、最終的にできあがった二冊は、客観的な出来不出来はともかく、自己満足としては十分なしろものだった。