マルコさん のコメント
このコメントは以下の記事についています
先日放送したラジオをLDさんがYouTubeにアップロードしてくれました。
https://www.youtube.com/watch?v=Sb1djTbIymM
このラジオのなかでバトルロイヤル系の話が出ていますが、これがなかなか面白かったので、きょうはその話をしましょう。
バトルロイヤル系とは何か? それは1999年の『バトル・ロワイアル』をとりあえずの嚆矢とする物語の形式で、複数人のプレイヤーが命をかけて戦いあう形式の物語を指しています。
LDさんによると、バトルロイヤル系はセカイ系の亜種でもあり、セカイ系と同じく『新世紀エヴァンゲリオン』の影響を大きく受けて発生したものであるということになります。
つまり、『エヴァ』で碇シンジが「ロボットに乗らない」という選択をしたところからすべてが始まっているのだと。
自ら行動して物語をひっぱる動機を喪失した碇シンジをいかにして物語に参加させるか、という問いに対して、「戦わなければ死んでしまう」という状況を設定したのがバトルロイヤル系ということになるわけです。
このバトルロイヤル系は、もちろんさかのぼれば山田風太郎までさかのぼれるわけですが、しかし、現代のバトルロイヤル系は山風とはあきらかに違う文脈から生まれているといえるでしょう。
LDさんの話で面白かったのは、純粋な意味でのバトルロイヤル系が広まるまでにはそれに対する「抵抗」が存在するということです。
たとえば、『仮面ライダー龍騎』。たとえば、現在、テレビアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』として放送されている『Fate/stay night』。
これらの作品においては、主人公は「バトルロイヤルを止めようとする者」として行動します。つまり、ここには「主人公が嬉々として殺し合いに参加することは倫理的に問題がある」という意識がまだ存在しているのではないか、というわけです。
ところが、後年の『Fate/Zero』においては、もはやバトルロイヤルを制限する倫理的な制約は存在しません。各登場人物は、テロリストであろうと殺人鬼であろうと、思うがままに行動します。
その結果、いかにすさまじい光景が現出したことか、それは皆さん、ご存知のことと思いますが、とにかく純粋な意味でのバトルロイヤル系は徐々にひろまっていったということになる。
もちろん、2003年の段階で『DEATH NOTE』のような作品もある。しかし、『DEATH NOTE』においては、やはり夜神月は「悪」として処断されることになってしまったわけですよね。
わかってもらえるでしょうか? 革命は一日にしてならず、ということなのですね。クリエイターやコンシューマーの意識は少しずつ移り変わっていくのであって、急に一変するわけではないということ。
バトルロイヤル系も、たとえば『東のエデン』に至る頃にはずいぶんと変質して、セカイ系とはかけ離れたものになっていますが、そういう変化も徐々に進んでいくものなのです。
その意味では、『Fate』や『DEATH NOTE』もひとつの「過程」であって、その「結果」としての現在をぼくたちは生きているということになる。
そしてまた、その「現在」ですらもひとつの「過程」であるに過ぎず、また未来に向かって変わりつづけているわけです。
それでは、「現在」を代表する作品とは何か? 衆目の一致するところ、それは『進撃の巨人』でしょう。『進撃の巨人』のイマジネーションは、紛れもなくセカイ系的バトルロイヤルの先へ行っています。
LDさんたちは『進撃の巨人』に見られる物語形式を「新世界系」と名づけました。『ONE PIECE』や『HUNTERXHUNTER』などの作品に登場する「新世界」という概念から採ったジャンル名です。「新世界系」については、以下の記事を参照してください。
http://ch.nicovideo.jp/cayenne3030/blomaga/ar563640
http://ch.nicovideo.jp/cayenne3030/blomaga/ar644469
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龍騎もFateもエヴァの戦いから逃げたいけど戦わなければ死んでしまうといった文脈というより、正義はあるのかを問う正義と悪の文脈から生まれた作品です。
何でもエヴァの影響を受け作られたとするのは視野が狭い意見に思えます。バトルロイヤルの流行がエヴァの影響はさすがにちょっとこじつけ過ぎると私には感じられました。
戦わなければ死んでしまう作品はエヴァ以前にもガンダムなど幾らでもあり、バトルロイヤル系も新世界系もカイジや寄生獣やガンツと古めの有名作品が沢山あります。
それらに言及せずに全部をエヴァが起源にあるとするのは偏見に思えます。物語類型としての新世界系は面白かったんですが、残念ながら時代の流れ云々からは結論ありきの分析に感じられました。
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