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 一歳になったばかりの我が子。主な移動手段はハイハイだが、近頃少し歩くようになってきた。そこで先日、初めての靴を買った。
 ファーストシューズは、5、6歩出る頃に買うものと思っていた。だが、最近はそうでもないらしい。某子供服メーカーの店員さん曰わく、「つかまり立ちをしたら早めに靴を履いて慣れさせる」そうだ。つかまり立ちだけでは外で立たせられないのではと思ったら、どうやら室内履きの靴のことらしい。バレンタインよろしく靴屋の陰謀だろうか。思わず斜めに考えてしまったので、室内履きは買わずに帰った。

 靴を履かせてみると、ものすごく嫌そうにしていた我が子。靴下も気に入らないらしい。靴履いてすぐにぐずり始めた。新生児のころは素直に靴下を履いていたのに、どうしたことだろう。夏の間、毎日素足でいたら忘れてしまったのだろうか。それとも、裸足の快適さを知ってしまったのか。しばらくの間はこちらが罪悪感を覚えるほど泣いたが、外出の度に履かせていたら少しずつ慣れるらしい。今思えば、順応するのに一週間もかからなかった。

 そして、先日はいよいよ初めて外で歩かせた。いわゆる公園デビューだ。
 近所の公園の近くまで抱っこして、公園までの残りの道のりを手をつないで歩く。たかだか数十メートル歩くのに、十分以上もかかった。
 歩き始めてすぐに側にある薬局のおばちゃんに声をかけられたり、すぐ脇の駅に止まった電車に目を奪われていたり、途中でひっくり返ったり、土いじりをしたり落ちている枝をさわったり。そんなこんなで、十分なんてあっという間に過ぎてしまっていた。
 特に急がないし、忙しいわけではない。とはいえ、普通にすれば一分もかからないことに何倍もの時間がかかる。せっかちな人間には辛いものがあるが、ここはじっと我慢なのだろう。

 時間が許す限り、安全な範囲でしたいようにさせてやりたいし、触りたい物には触らせてやりたいと思っている。けれど、手にした物は何でもすぐに口へ持って行ってしまう。すぐに転ぶし、しゃがめるけれどひとりで立ち上がることはまだできない。砂の上でハイハイされようものなら、洗濯する時が恐ろしい。
 我が子が何か触る度に、ひとりでハラハラしていた。見守りたいと思いつつ、どの程度手を出して良いものかと思案している。新たな悩みがまたひとつ増えた。

 とはいえ、わたしが思うよりも、子どもは案外たくましいのかもしない。公園の中でひとりで歩かせてみると、思いの外よく歩く。
 大きな石がゴツゴツした足場の良くない場所でもひとりで歩いていたし、転んでもきちんと手を前に付けた。ひとりで立ち上がれないが、立たせてやればまたヨチヨチと歩き始める。どれも当たり前のことと言えばそれまでだが、つい最近までハイハイもできなかった我が子。そう思えば、いちいち感動できてしまう。

 小さな手を取って歩くのは大変だった。子どもも初体験なら、親のわたしも初体験だ。だが、その反面こんなに大きくなったのかと実感もできた。
 我が子が自分でしっかり歩けるようになるまで、じっくり向き合っていきたい。手をつないで一緒に歩いてくれるのは、果たしてあと何年あるだろう。考え始めると少し切ないが、今を楽しんでおこうと思う。

※写真は筆者撮影

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(執筆者: 高梨 廉) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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