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批判の品格
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批判の品格

2012-11-23 12:00
    批判の品格

    この記事ははせおやさいさんのブログ『インターネットの備忘録』からご寄稿いただきました。

    ■批判の品格
    拝啓 さかもと未明様

    森園みるく*1氏と貴女の区別がつくようになって何年経つでしょうか。

    *1: 『森園みるく 公式ホームページ』
    http://morizono.babymilk.jp/

    朝の情報番組を始め、しばらくワイドショー的なものからも遠ざかっていたせいで、ご活躍の姿をしばらく拝見しておりませんでしたが、元気でお過ごしですか。

    面識もないわたくしからこんな便りを寄越されてもお困りかと存じますがご容赦くださいませね。

    さて本日、こちらの記事を拝読いたしました。

    「再生JALの心意気/さかもと未明(漫画家)」 2012年11月19日 『Yahoo!ニュース』http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121119-00000002-voice-pol

    1. 移動中の飛行機で同席した赤ちゃんが泣き通し、なだめても泣き止まないことを不愉快に感じた

    2. クレームをつけたところ、謝罪のみで具体的な解決策を明示されないことも不満であった

    3. そのため、取材名目でJALにアポを取り、訪問・取材を行い、記事にした

    という主旨で、公共交通機関の搭乗制限についての試行錯誤や現在の取り組みについて知ることが出来る、たいへん興味深い内容でした。

    「どうして個室がつくれないのですか? ファーストクラスはそもそも個室でしょう?」

    「いえ、ファーストクラスでも、音はどうにもできません。個室のようにみえても、上部空間はオープンなんです。これは、『離陸及び着陸のために着席可能なすべての乗客用座席とすべての乗客用非常脱出出口とのあいだには、いかなる避難経路(通路、交差路及び座席列間の通路を含む)も横切るような扉を装備してはならない』という航空法の規定によるものです。これは、万一の際に避難の妨げとなるものがあってはならないという、お客さまの安全を守るための規定なんです」

    「じゃあ乗客マナーの告知は? 電車内の携帯電話のマナーとかも、みんなで大騒ぎしてつくられたじゃない? 機内誌とかワイドショーとか使って議論しようよ」

    というと、

    「お子さまをお連れの方には、機内でのマナーをまとめた『mama&baby』という冊子をお渡しし、ご協力をお願いしています」

    との回答。

    泣きやまない場合もあるんだし、マナー的に、まず親が「2歳くらいまでは乗せないほうがいいかもね」くらいのコトを考えたらいいと思う。そういうと、

    「公共交通機関である私どもから、乳幼児のご搭乗を規制することはできません」

    とのご回答。

    なるほどこれは興味深いお話です。

    なぜ、飛行機に個室が作れないのか、その理由。

    お子さんを連れた親御さんたちが機内でどのように振舞ったらよいかを検討推敲し、冊子にまとめ配布していること。(これ、航空会社が自社負担で冊子を作り無料配布しているってことですよね?)

    航空会社が公共交通機関と自負し、安全を阻害することがなければ搭乗を規制することを避けたいと考えていること。

    わたしたちの知らないところで、航空会社はこのような努力をされていたのですね。

    あと、ユーザーも「ただ安ければいい」といういまの流れが本当にいいのかは客観視しないとね。「安全」と「質」を担保するには、ある程度の出費は必要だもの。

    わたしはめったに飛行機には乗ることがありませんが、人命を乗せて運ぶことを生業にしている企業が、その空間を快適にするため今までどれだけ苦心してきたのだろうと思うと、本当に頭が下がります。

    札幌や沖縄に日帰りで行けるようになったのも、飛行機のみならず、その他交通機関が日夜努力し、安全を保とうと腐心してくださっているおかげなのですね。そういった努力の上に、わたしたちの快適な旅があるのだということを、貴女の一文でもしみじみ実感いたしました。

    このように目からうろこが落ちる思いで記事を拝読いたしましたが、ただひとつだけ、申し上げたいことがあります。

    怒りや不満を感じ、それを相手に伝えるというのは、他者と意思疎通をはかるためには必要不可欠です。自分が気にしなければいいのだとガマンしすぎたり、諦めてしまうことが、意思表示をしたことであり得たよりよい未来の芽を摘むことになるとも思います。

    ただし、その怒りや不満を、相手に伝わりやすいように、本質が感情で見えなくなることのないように、心を砕いて相手に伝える、ということも必要ではないでしょうか。ただ怒りに任せて怒鳴ったり、暴言を吐いたりするのは、赤ん坊が不満を訴えるために泣き叫ぶのと同じこと。

    理由を表明するより先に、「怒り」という激しい感情だけをぶつけられたら、相手は疲弊するだけです。わたくしも自分自身のことを棚に上げて申し上げておりますが、本来であれば、成人したオトナとして、なんと恥ずかしい、みっともないことでしょう。

    今回の出来事をきっかけに取材をし、文章を書き上げたそのバイタリティに心から敬意を表すると共に、こんなにおもしろい内容が、「怒り」という激しい感情表現で上書きされてしまって、意図せぬ形で相手に届いてしまうことを残念に思います。

    わがままなうえに身体も弱く、さらにファーストクラスに乗るお金はない勝手な私ですが、途中下車できない空の旅には、やっぱり快適性を求めずにはいられません。どうぞ妥協を許さず、改良し続けてくださいね。日本のJALから世界のJALへ。心身一如の真のブランドであり続けてください!

    冒頭の批判部分のみでなく、最後に添えられたこのエールが、JALの皆様のもとへ届くことを願ってやみません。

    また、この記事を読んで「やはり子供の泣き声は迷惑なのだ」と余計な負担を感じるお母様方がいるかもしれないと思うと、とても心が痛みます。そんな無用の心配をする方が一人でも減ればと思い、僭越ながら筆を取らせていただきました。(実際はPCを立ち上げたんですが)

    立冬を過ぎ、日中もぴりりと冷え込む日が続いております。どうかご自愛くださいませ。

    かしこ

    はせおやさい

    執筆: この記事ははせおやさいさんのブログ『インターネットの備忘録』からご寄稿いただきました。

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