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円安は安倍ラリーか?
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円安は安倍ラリーか?

2013-01-24 16:32
    円安は安倍ラリーか?

    今回は脇田栄一さんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

    ※記事のすべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/285043をごらんください。

    ■円安は安倍ラリーか?
    ここのところ、昨年末からの「円安トレンド」について、以下の論調を見掛ける事がある。

    「ECBによるOMT(一般的には無制限緩和といわれる財政支援策)によって、欧州危機が沈静化し、円やドルからユーロに資金が流れるといったリスクオンが生じた」。

    よって、「安倍総裁の(日銀への)強力な緩和要求によって円安トレンドが発生した訳ではなく、たまたま(円安発生)」といったものだ。

    ----------------

    これはどこまで本当なのだろうか?

    結論からいってしまえば、今回の円安トレンドの原因は、米大統領選と11月のファンド解約期を通過した機関投資家が、ユーロリスクを取るようになった。しかし安倍首相の「日銀への脅し」も、それを助長している。米株、米国債利回り、ユーロドル、ユーロ円、上昇し始めたのはすべて11月中旬からだ。(以下説明)

    まず、この話の前提となっているような、「ECBの財政支援政策(OMT)によって、欧州危機が沈静化」、という論調はどうだろうか?ECBのOMTが公表されたのは9月5日、ユーロ(ユーロドル)が上昇し始めたのは11月の中旬からなので、1ヵ月以上のタイムラグがある。この事実だけを踏まえれば、OMTが発表されて欧州危機が沈静化したとは言い難いように思える。タイムラグがあったのかも知れないが、実際のところ(欠陥だらけの)OMTが欧州危機を沈静化したとは考えていない。

    円安は安倍ラリーか?

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    http://px1img.getnews.jp/img/archives/new01.jpg

    OMTは各国政府への緊縮条件付きの政策であり、それに対してスペインが(条件を)すんなりと受け入れる事がなかった為、ECBとスペインとでもめていたのは周知の事実。OMT発表は9月5日だが、解決までに少々の期間を要し、そして危機が沈静化した、と見る事も可能だが、このユーロドルが上昇し始めた11月中旬、スペイン国債利回り(10年)はどうだったかといえば、11月15日には「危機水準」手前、5.9%を付けており、とても危機が終息した、といえるような状況ではなかった。(下図、スペイン国債利回り)

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    実際のところ、ECBとスペインの主張は平行線を保ったままであり、折り合う気配がつかなかった。そうするうちに、市場の話題は欧州危機から米国の危機、すなわち「財政の崖」議論へと焦点が(自然と)移っていった。つまり、ECBの財政支援策OMTは、実際には欠陥だらけのシステムで、スペインはそれを信用していなかった。そうこうしているうちに、市場の焦点が勝手に米国に向かったものだから、何となく危機は沈静化していった、という風に見られるようになってしまった。(市場はそんなもの)

    欧州危機は忘れ去られ、「結果として」沈静化した。なので、「欧州危機の沈静化によってユーロ投資(リスクオン)が促進された」というのは、その経緯うんぬんを差し引けば、この表現自体は間違いではない。 ただ、ここで言いたいのは、「11月中旬からのユーロ上昇」となったのには、(冒頭で述べたように)機関投資家が、2つのイベントを通過して、運用リスクを取るようになった事がその要因となっている。

    当レポートでは、「11月のアノマリー」といって米系ヘッジファンドの解約期に、毎年注目しているわけだが、今年も注目していた。下図(07年ー11年、11月ダウの値動き)は、11月に大きな下落の時期(黒枠)が市場アノマリーとして存在する事を示している。 (10月ニューノーマルレポートから)

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    そしてもう1つ、11月といえば、6日に米大統領選が行われている。

    この「2つの時期」を跨ぐ事によって、機関投資家はリスクをとれるようになった。というのは、株式市場の中心である米株の値動きは、機関投資家の運用面に大きな影響を及ぼす。簡単にいえば、米株が上昇すれば、機関投資家は運用リスクを取れるようになるし、米株が下落すれば、(国債投資など)「質への逃避」が起こる事になる。

    今年の米大統領・議会選は「ねじれ議会」が再び注目されていた。接戦選挙を嫌う米株式市場は、神経質な展開となる事が多いが、下チャートのように、米株(NYダウ)は、11月6日の大統領選、そして中旬(解約期)に掛けて下落していった。2つのイベントを終え、米株が上昇(下図)するとともに、機関投資家のリスクを取る動きが活発化、米株はさらに上昇し、ドル・円は売られユーロが買われる事になった。

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    前述のように、スペイン国債は、11月15日に5.9%付けており、完全に危機が沈静化したとはいえない状況だったが、身軽になった機関投資家は円売り・ユーロ買いを進める事になった。これは、安倍総裁が「日銀への脅し」を公に主張し始めた(11月17日)事が関係している。同時期(11月中旬)からのユーロ上昇と、円下落は「たまたま」と言うわけでは無い。円売りもユーロ買いも全く同じ時期に始まっている事が各チャートから確認できる。

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    ついでに米国債10年利回り。機関投資家の「質への逃避」は11月中旬まで続き、そこから(利回り)反発している。

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    個人的に、安倍首相の「アベノリスク」*1は大変滑稽だと言わざるを得ないが、円安トレンドに関しては安倍首相も一役買っている。ただし、彼一人で起こした事では決してない。機関投資家のリスク運用は11月中旬以降、始まる予定だった、といっても過言ではない。安倍首相の発言が、機関投資家のリスク運用を(たまたま)サポートした、というのが実際のところだといえるだろう。

    *1:「アベノリスク」 2012年12月25日 「BLOGOS(ブロゴス)」
    http://blogos.com/article/52920/

    執筆: この記事は脇田栄一さんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

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