今回は一般社団法人 大日本猟友会さんのサイト『目指せ!狩りガール』からご寄稿いただきました。
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■目指せ!狩りガール no.11 日本古来の巻き狩り猟を見学に。(目指せ!狩りガール)
ありちゃん:食べることが大好き、アウトドアもちょっと好きな会社員。ひょんなきっかけから「ハンター」を目指すことに。東京都内在住。カリタロー:狩りガール活動を応援するジビエ好きの犬。ありちゃんと一緒に勉強して、いつかカッコイイ猟犬になるのが夢。
だいぞう師匠:猟友会に所属している優しきオジサマハンター。自然のことにも詳しく、ハンター仲間として若者を育てています。
大谷嘉兵衛さん:東京都猟友会檜原支部支部長。巻き狩りのリーダーを務めるハンター歴40年以上のベテランさんです。
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ありちゃん:ありです。前回「イズシカ問屋」*1でシカによる農林業被害のお話を聞きました。これって伊豆だけのお話じゃなく、全国的に問題となっていること。その対策も各地で必要とされているそうです。そこで、今回は有害鳥獣対策に狩猟捕獲で協力している猟友会のみなさんを訪ねて、東京都檜原村(ひのはらむら)へ。
ワタシにとっては超先輩のハンターさんたちに会えるチャンス!今まで聞いてきた狩猟の現場を見られるとワクワクしながら行ってきました。
*1:「no.10 狩猟した獲物を新しい地域ビジネスに!解体処理場を見学。」 『目指せ!狩りガール』
http://kari-girl.com/vol10.html
●巻き狩りの前に「見切り」あり。
だいぞう師匠:狩猟をする人々の集まり、猟友会。その役割のひとつに「有害鳥獣捕獲」があります。今、日本各地で野生動物による農林業の被害が増加。そこで、電柵やネットで畑などを保護する対策と併せて狩猟による捕獲も必要とされ、猟友会が協力してきました。ありちゃんもいずれ関わるかもしれない有害鳥獣捕獲の現場。長年携わってきた猟友会メンバーの話や、日本の伝統でもある「巻き狩り」という猟の方法をぜひ聞いてきてもらいたいな。
ありちゃん:おはよーございます。朝7時、村役場前で東京都猟友会檜原支部の支部長、大谷さんと待ち合わせています。寒い!
カリタロー:(ボクは毛皮で寒くないワン)いよいよ狩りの現場に行くんだね!ありちゃん。
大谷嘉兵衛さん:おはようございます。ありちゃん、カリタローくんようこそ!だいぞうさんから話は聞いているよ。
ありちゃん&カリタロー:よろしくお願いしまっす!
大谷嘉兵衛さん:あはは。気合い十分だね。メンバーはもう少し後に集合するんだけれど、まず我々は「見切り」に行こう。私の車で山に移動しましょう。
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ありちゃん:あの~、「みきり」ってなんですか?
大谷嘉兵衛さん:狩猟の前に巻き狩りをする場所の状態を見ておくことだよ。獲物がいるかどうか事前に知ることが大切だからね。よく見回って、いくつかある猟場からどこが良いか決めるための情報を集める。巻き狩りは山の広範囲に射手(しゃしゅ=銃で獲物を狙う人)や勢子(せこ=獲物を追い込む人)が散らばって獲物を追い込む猟だから、その日の山の状態を知っておくことが大切だよ。
ありちゃん:そういう準備も必要なんだ!
山々が連なる眺め。「え!猟場ってこんなに広いの!!」各尾根に”タツマを張る”巻き狩りの範囲に驚くありちゃん。
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大谷嘉兵衛さん:お!ここで止まるよ。降りてついて来て。
カリタロー:何か見つけたのかワン?
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大谷嘉兵衛さん:この斜面、まわりと様子が違うのがわかるかな?
ありちゃん:???
大谷嘉兵衛さん:獣道(けものみち)が続いているんだけどな。
ありちゃん:ああ!良く見たら細い道のようなのが森の奥に続いてますね。
大谷嘉兵衛さん:道路を挟んで下の斜面にもつながっているよ。
ありちゃん:ホントだ!言われなければ気付かないわ。草の切れ間にしか見えませんでした。
大谷嘉兵衛さん:こういったポイントを探して、獲物の動きを確認していくんだ。
カリタロー:ワンワンワン!なんか追いかけたくなってきた。
大谷嘉兵衛さん:おや、カリタローくんは獲物の気配を感じたかな?ほら、また移動するよ。
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大谷嘉兵衛さん:この藪の間、わかるかな。
カリタロー:わかったワン!
ありちゃん:えーと・・・あ!これ、足跡ですか?う~んと・・・このカタチは・・・。
カリタロー:シカ、シカ、ありちゃん、シカだよ。
大谷嘉兵衛さん:そうだね。シカが上から下へ駆け下りていった様子がわかる。
ありちゃん:移動の方向までわかるんですか?
大谷嘉兵衛さん:シカやイノシシのヒヅメの向きを見ればわかるよ。巻き狩りは、こうした動物たちのサインを丁寧に見ていくことからはじまるんだ。
ありちゃん:なんだか足跡をたどる刑事さんみたい!狩猟読本のイラストで見てはいたけれど、やっと本物の足跡を見られてうれしいです。でもこれ、自分で見つけられるかなぁ~。
大谷嘉兵衛さん:大丈夫、先輩について見慣れるうちにわかってくるから。こうして情報を集めてからチームで打合せをするよ。さあ、そろそろ集合場所で仲間と合流しよう。
見切りの途中でサルと遭遇。東京都とは思えないほど自然豊かな檜原村。
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●巻き狩りってチームワークの狩猟なんだ!
だいぞう師匠:見切りを終えた大谷さんとありちゃんたちはメンバーの集合場所へ。メンバーは打合せの後、射手がタツマを張って(配置につく)、勢子は犬を入れる場所で待機。無線で準備完了を確認後、リーダーの大谷さんの指示で犬を放ち、巻き狩り猟がはじまりました。 ありちゃんは大谷さんの無線を聞きながら、地図で射手の配置を教えてもらっています。獲物が獲れるといいね。
檜原村で行われている巻き狩り猟。
配置や追い込み方は地域によって変わります。
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ありちゃん:カリタロー、憧れの先輩たち(猟犬)がいっぱいいたね。
カリタロー:う、うん。ク~ン(先輩たち、カッコイイけど迫力がすごくてちょっとコワイ~)。
ありちゃん:猟犬たちは皆さんを見るだけで楽しそうに吠えていましたね!
大谷嘉兵衛さん:早く猟に行きたくて興奮しているんだよ。
ありちゃん:犬を連れていた勢子は、獲物を追い出す役割の人なんですよね?
ありちゃん:そうだよ。犬に続いて獲物を追って、それぞれの射手が待機している場所に追い込むんだ。今日は勢子が2人、射手が8人。だいたいタツマを張って準備完了までに1時間くらいはかかるよ。
ありちゃん:さっき皆さんが話してて気になったんですけど、そのタツマって何ですか?
大谷嘉兵衛さん:タツマとは射手が配置される持ち場のこと。地域によっては違う呼び方をしているみたいだけどね。
ありちゃん:独特の狩猟用語っていろいろあるんですね。
大谷嘉兵衛さん:覚えることが色々あるね(笑)。タツマについたらしゃべっても動いてもダメ。犬や勢子の動きに集中して獲物を待つ。
カリタロー:ジッと待っているシャシュも大変そうだけど、追い込むのに走り回るセコも大変そう。
ありちゃん:そうだね~。体力も必要だし、獲物の動きも予測できないといけないだろうし。大谷さんのような全体を指揮するリーダーも誰でもなれるってワケじゃないんですよね?
大谷嘉兵衛さん:そうだなぁ。タツマを張る場所を決める立場としては、まず地形を良く知っていて、巻き狩りの経験も積んでないといけないだろうなぁ。もちろん射手や勢子も地形をわかって、獲物がどこから来るか動きを読む必要があるけどね。
ありちゃん:自信ない。何かひとりだけ山で迷子になっちゃいそう~。
大谷嘉兵衛さん:わはは。一人前になるまでは先輩がタツマまでちゃんと連れて行ってくれて、獲物がくる方向も教えてもらえるから心配しないで。巻き狩りはみんなの連携プレーで行うからね、狩猟に関わることは先輩から後輩にしっかり教えて育てていくんだよ。
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ありちゃん:有害鳥獣捕獲で年間どのくらい出猟するんですか?
大谷嘉兵衛さん:猟期以外はほとんど毎週日曜に出猟しているね。年間を通して役場から有害鳥獣の駆除をお願いされているんだ。チームのみんなは休日返上でやってくれているよ。さすがに8~9月半ばは暑さで犬も人もバテちゃうから出ないけど。
ありちゃん:毎週!!そっか、巻き狩りってチームで動くからみんなが毎週集まらなくちゃいけないんだ。これは大変そうだ~。
大谷嘉兵衛さん:1回で獲れるのはせいぜい1~2頭。続けていかないと、どんどん増えて山から里に下りてきてしまうからね。檜原の農家は我々を頼りにしてくれているんだ。
ありちゃん:1~2頭か……。貴重な獲物なんだなぁ。そんな獲物が自分の前に出てきて外したらどうしよー。みんなに悪いです~。
大谷嘉兵衛さん:あはは。獲るために最善を尽くしていることはお互いわかっているから仲間を責めないよ。もちろんボウズ(捕獲数ゼロ)の日もあるけれど、1人ひとりが自分の役割を果たせるように地形を頭に入れたり、責任を持って自分の持ち場で動いた結果なんだから。
ありちゃん:それぞれの責任か。皆さん、チームとして狩猟に誇りを持っているんですね。
カリタロー:ナカマで信頼し合ってて、かっこいいワン。
銃声の後、シカを捕獲したとの連絡が入りました!
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だいぞう師匠:シカが獲れたようですね。これから猟犬たちを回収して、皆さんは狩猟小屋に集まります。巻き狩りで山にいる時間は日によってまちまち。タツマを張ってすぐ獲れて犬も戻ってくれば短い時間で済みますが、犬がどこまでも獲物を追って戻って来なければ夜までかかり、探しに行くこともあります。大変な作業ですが、そこには巻き狩りに参加するハンターだけがわかる「みんなで成功させる」喜びがあるんですね。
※狩猟(発砲)できる時間帯は日の出から日の入りまで。
●終わった後は鍋を囲んで狩猟話、それも大切なことでした。
大谷嘉兵衛さん:この後は狩猟小屋で猟師鍋を囲みながら、今日の巻き狩りの振り返りをします。おいしいからぜひ食べていって。
ありちゃん:やったー!やっぱり仕留めた射手の方が一番うれしいんでしょうか?
大谷嘉兵衛さん:私は自分が撃たなくてもチームとして獲れれば本当にうれしいよ。みんなで獲物に向かった成果だからね。自分の育てた猟犬が獲物を見つけてくれたらそれもうれしいなぁ。
カリタロー:獲物は撃ったヒトがもらうワン?
大谷嘉兵衛さん:いやいや、みんなで山分けするんだよ(笑)。
カリタロー:そっか!でも……獲物を見つけられなかった犬もゴホウビもらえるのかな……
大谷嘉兵衛さん:もちろん!みんなでがんばったんだからね。
カリタロー:よかった~。
狩猟小屋で地図を見ながら今日の猟を振り返ります。
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大谷嘉兵衛さん:はい、シカ鍋をどうぞ。あったまるよ。こうやって、みんなで料理を囲みながら猟の話をするのも大きな楽しみなんだよ。
ありちゃん:獲物をいただきながら狩猟の話、ハンターさんだけのお楽しみですね!
大谷嘉兵衛さん:ここでありちゃんにウチの若手を紹介しよう。今度24歳になる平野佑樹くんと36歳の峰岸博文くんだ。2人ともお父さんがハンターで、昔から勢子として山に同行していたんだよ。
ありちゃん:もぐもぐもぐ・・・よ、よろしくです!ワタシもハンターを目指しています。親子二代なんですね!
峰岸博文くん:(峰岸)実は三代目です。
平野佑樹くん:(平野)ボクは四代目(笑)。子どもの頃から自宅にハンターが集まっていたので、狩猟は生活の一部でした。
ありちゃん:じゃあ、地図なんかもう頭に入っているんですね。
平野佑樹くん:地元に住んでいるから地名もわかるし、小さい頃から山に入っているのでだいたいの地形はわかっています。
ありちゃん:なんともうらやましい!さっきタツマに着く話を聞いて、自分なら藪の中で迷子になるんじゃないかと思っていたんです。
峰岸博文くん:はじめから1人で行かされることはないから大丈夫ですよ。
平野佑樹くん:そうそう、勉強することはイチからみんなが教えてくれます。
ありちゃん:うまく撃てるといいんですけどね~。
平野佑樹くん:最初から当たるとは限りませんから。初猟から何年も仕留められない人もいるそうですよ。よく「外すのも勉強」って先輩たちに言われています。
ありちゃん:な、なるほど!ベテランハンターさんから習うことが多いんですね。若手として、普段から気をつけておくことってありますか?
平野佑樹くん:新人のうちはタツマでは勝手に動かないことですかね。
ありちゃん:怒られちゃうんですか?
平野佑樹くん:怒られるというより、危険ですから。そのうち、勢子や獲物の動きがわかってくると自分で考えて動くことも大切になってくるんですけどね。
ありちゃん:勝手に動かない・・・(メモを取る)。
峰岸博文くん:あと、みんなでああやってワイワイ話しているじゃないですか。
ありちゃん:はい(横では大谷さんはじめ、ベテランさんたちが楽しそうに談笑しています)。
峰岸博文くん:ああいった何気ない雑談の中に狩猟に関する知識や心構えが含まれているので、しっかりと聞くようにしています。
平野佑樹くん:狩猟の失敗談の中にもためになる話があるんです。
ありちゃん:そうなんだ~!ぼんやり食べてる場合じゃないですね。巻き狩りのメンバーとして参加して、どんなことがうれしいですか?
平野佑樹くん:勢子をしていて、自分がかけた犬が追った獲物を射手の誰かが仕留めてくれるとうれしいですね。
峰岸博文くん:あと、自分で見つけた足跡をきっかけにして獲物を仕留められた時もいいよね。
ありちゃん:そうか、巻き狩りには獲物との心理戦のような楽しみもあるんだ。撃つだけじゃなく、勢子や見切りの仕事にもやりがいを感じられるんですね。では、若手として気になることはありますか?
平野佑樹くん:今、自分がチームで一番の若手なんですが、自分の下の世代が猟友会に入ってきてくれるか気になりますね。
ありちゃん:確かに。ベテランさんの技を受け継ぎたいですものね。女性ハンターが増えることはどうですか?
峰岸博文くん:女性ハンターさんってかっこいいと思いますよ。男女ともにウエルカムです。
平野佑樹くん:巻き狩りでは1人でも多い方が猟果が上がりますからね。先輩たちに教えてもらって、タツマを覚えて、みんなで喜びを分かち合う。四季を通じて色々な経験ができますよ。
峰岸博文くん:ぜひ、檜原猟友会へ!
平野佑樹くん:みんな冗談は言うけど、紳士ばかりですから(笑)。
大谷嘉兵衛さん:お!ありちゃんも仲間入りしてくれるのかな?
ありちゃん:ぜひ!デビューしたあかつきにはまた色々教えてください!
大谷嘉兵衛さん:もちろん。見学もいつでもいらっしゃい。
ありちゃん:うれしいです。今日はありがとうございました。
地元の野菜もたっぷり入ったシカ鍋に大満足!の、ありちゃん。
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だいぞう師匠:ありちゃん、しっかり猟師鍋までごちそうになってましたね。若手の二人も話していましたが、狩猟の後に料理を囲みながらみんなで話をするのも大切なこと。チームの連携も、より強まります。このように若手がしっかり育っていることは猟友会の強みでもありますね。ハンターの1人に「百聞は一見にしかずだよ」と言われていたありちゃん、ますますデビューする日が待ち遠しくなったようですよ。
ありちゃん:あれー?カリタローどこに行ってたのよ。外にいたのね?
カリタロー:憧れの先輩たちと一緒にシカの皮をいただいてたんだ~♪おいしかったよ。ボクも先輩たちにたくさんお話聞いちゃったワン。
ありちゃん:それは良かったね(笑)。これからも二人、がんばろうね!
次回のありちゃんにはどんな出会いが待っているかな?お楽しみに!
次回12につづく!
執筆:この記事は一般社団法人 大日本猟友会さんのサイト『目指せ!狩りガール』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年06月24日時点のものです。
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