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何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)
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何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

2014-07-24 18:00
    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    今回は豊田長康さんのブログ『ある医療系大学長のつぼやき』からご寄稿いただきました。

    ※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/629391をごらんください。

    ■何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)
    今回は、各学術分野別の論文数の推移を、論文絶対数および人口当り論文数で列挙していきます。日本の「強み」「弱み」を知ることが目的だったのですが、前回のブログで、日本はすべての学術分野で弱くなっており、すでに効果的な「選択と集中」ができるような状況にはないことをお話ししましたが、今回の検討でも、同じ感想を持ちました。

    特に、日本のお家芸と言われた「物理・化学・物質科学」分野の論文数が、2004年の国立大学法人化を契機に、明確に減少しているカーブは、何度見ても衝撃的です。もう、そんなカーブを見せられても慣れっこになって、何も感じない人もいるかもしれませんが・・・。

    そして、韓国、台湾、中国などの新興国が、日本が過去に優位性を保っていた産業競争力を凌駕したことについて、技術の流出や経営戦略の失敗が原因であると言われていますが、今回の分析結果から、彼らは一朝一夕に日本を抜き去ったのではなく、大学の研究力を高めてその分野の学術論文数を増やすという正攻法でもって、日本を抜き去ったことがわかります。

    日本人はもっと謙虚になるべきだと思いました。

    ***************************************************************

    ●3)日本と海外の分野別論文数の推移
    日本および海外諸国における、各学術分野別の論文数(絶対数および人口当り)の推移を図85~図102に示した。なお、論文数は3年移動平均値で示してあり、例えば2000年の論文数とは、1999年~2001年の平均値である。

    情報・エンジニアリング以外の分野では2000年~2012年の推移を示したが、情報分野(computer science)の論文数がトムソン・ロイター側の学術雑誌の分類変更によると考えられる階段状の減少が2006年から2007年にかけて見られるので、情報・エンジニアリング分野の論文数については、2008年以降の3年移動平均値で示した。

    臨床医学分野については、論文絶対数(図85)では米国の強さが目立つ。日本は5位につけており、緩徐な増加傾向を示している。しかし、人口当り論文数(図86)では、日本は先進国中最低となっており、また、台湾や韓国よりも少ない。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    薬・バイオ分野(図87、図88)についても臨床医学と同様の傾向である。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    情報・エンジニアリング分野では、論文絶対数(図89)では中国の躍進が目覚ましく、アメリカをすでに追い越している。日本の順位は7位であり、人口が5千万人しかいない韓国に、すでに絶対数で追い抜かれている。なお、情報分野(computer science)だけに限ると、日本は11位であり、韓国はもちろん、人口が2300万人しかいない台湾にも追い抜かれている。

    情報・エンジニアリング分野の人口当りの論文数では、台湾の健闘ぶりが目立つが、日本は、他の多くの国とは一線を画す形で低い値である。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    物理・化学・物質科学分野では、論文絶対数は中国の躍進が目覚ましく、すでに米国を上回っている。日本は、この分野では過去に強みをもっていたが、2004年以降明確に論文数が減少し、現在4位となっている。人口当り論文数でも、2004年以降その順位を大幅に下げている。ただし、米国はこの分野は比較的弱い部分であり、日本よりも低い順位となっている。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    農林水環境分野では、論文絶対数では米国が1位、中国が2位であり、日本は8位となっている。人口当り論文数ではニュージーランドが健闘し、日本は先進国中最下位である。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    地球・宇宙分野では論文絶対数では米国が1位、中国が2位、日本は8位、人口当り論文数では日本は、最下位ではなく韓国よりも上の順位となっている。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    数学分野では、論文絶対数では中国が米国に追いつき、追い越している。日本は7位である。人口当り論文数では、日本は他の諸国よりも一線を画して低い値であり、韓国にも引き離されている。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    社会科学分野では、論文絶対数については、米国、イギリスが多く、中国は8位にとどまっている。日本は15位であり、人口が2300万人の台湾よりも少ない。人口当り論文数では、日本は韓国よりも少なくなっている。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    複合分野では、日本も海外諸国と同様に増加傾向にあるが、論文絶対数では5位、人口当り論文数では、韓国よりも上回っているが、低い順位である。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    図103、図104に、日本および全世界の各学術分野別の論文数の推移を示した。日本の場合、メジャーな存在であった「物理・化学・物質科学」の論文数が2004年以降、顕著に減少していることがわかる。また、薬・バイオについても、減少しつつある。一方臨床医学については、最近やや増加傾向にある。

    他の分野については、情報・エンジニアリングについては停滞~減少傾向、それ以外の分野については増加傾向にあるものの、図104に示す海外の論文数の増加率に比較してわずかであり、その差は拡大し続けている。

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    何度見ても衝撃的な日本のお家芸の論文数カーブ(国大協報告書草案18)(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康)

    ●<含意>
    各学術分野の論文数の推移を日本と海外諸国で比較検討したが、いずれの分野においても、日本の凋落ぶりが目立つ。特に、日本の「強み」であった「物理・化学・物質科学」の論文数が2004年という国立大学が法人化された年に一致して明確に減少に転じているカーブは、衝撃的である。

    他の分野においても、停滞~減少している分野が多く、また、多少増加傾向にある分野もあるが、海外諸国の増加率に比較すると微々たるものであり、海外と日本との差は広がる一方である。

    過去に日本が優位性を保っていた産業競争力が、韓国、台湾、中国などの新興国に追い抜かれていることについて、日本の技術の流出や、経営戦略の失敗などがその理由として挙げられているが、学術分野別の論文数の推移をみると、新興国は一朝一夕に日本を凌駕したのではなく、大学の研究力を高めるという正攻法によって、日本を抜き去ったことがわかる。例えば、韓国や台湾という、日本よりもはるかに人口の少ない国における情報・エンジニアリング分野の学術論文数は、絶対数で日本と同等もしくは多いわけであるから、日本のこの分野の関連産業が両国に負けることは当然であると思われる。

    「選択と集中」(重点化)よりも、日本の研究力、あるいはイノベーション力の”底力”を高める抜本的な対策を今すぐに取らない限り、日本は二度と再起できない国家になってしまう可能性がある。

    執筆: この記事は豊田長康さんのブログ『ある医療系大学長のつぼやき』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2014年07月24日時点のものです。

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