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篠塚恭一:旅を支える仕組み ── 高齢者大国の前線から(12)
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篠塚恭一:旅を支える仕組み ── 高齢者大国の前線から(12)

2014-07-28 13:42
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    今年は大雪に悩まされる地域が多く、雪不足のソチに少しでも届けられないかと思った。

    偏西風の異常が原因というが、記録的な豪雪は日本に限ったことではない。北米東部では都市機能が麻痺して観光地の混乱も続いている。旅に出ると「今年は異常気象です」という話をよく聞くが、それが30年も続けば何が異常かわからなくなる。

    先日、出張で沖縄に出かけた帰りに首都圏の大雪で足留めとなった。那覇入りする航空便があっても本州へは出発できず、空港は人であふれかえっていた。仕事の合間に部屋探しを試みたが那覇のホテルはもちろん、主な観光地は民宿やゲストハウスまで瞬く間に満室となっていた。空港で一夜をあかす覚悟をしたが思わぬ助けで難を逃れることができた。

    仕事で一緒になった地元の看護士が状況を知り、いつの間にか親戚や友人にかけあってくれ夕食の間に私と連れの宿を確保してくれた。心細い思いをしていた旅先で暖かい人の情にふれ沖縄が一層好きになった。

    客室の販売ルートが多様化して予約係でさえ正確な空室状況を把握できないと断られた時には、こういう異常時にはプロもあまり頼りにならないと自分の初動の甘さを反省した。

    バブル景気がはじけ日本は長いデフレ時代に入り、客離れを恐れた価格競争が招いたものは、強い消費者と薄い儲けで、余裕のない仕事が増えたように思う。ネットの普及で広がったデジタル社会は通信コストを下げて企業を助け、客は喜んだが雇用を奪う負の遺産も残している。まだ多くの人がデジタル革命という社会環境の変化から取り残されているのも事実だろう。

    テクノロジーは人に役立つ技術というのだから、このデジタル社会においてはもう少し暖かい人間味が必要だと思う。ロボット技術など進化は止まらないが、まだしばらく人としてのバランスが狂わないように、非効率でもアナログ世界も広げる努力が必要だろう。

    消費者が安全、安心、快適に旅を楽しむには影で多くの人がその仕組みを支えている。以前、旅行会社は客を土産屋に連れまわして手数料を稼いでいると非難されたが、その土産屋の人達が影で旅人を助けてきた事実を語る人は少ない。迷子を助け、忘れ物を届け、食べ損ねたと聞けば握り飯を差し入れ、病人や怪我人が出ればその面倒までみてくれた。

    不慣れな道中、困った人を助けてくれるのは、その土地で暮らす人々だ。そうした人の縁、お互い様の助け合いを世界中で構築してきたのが旅行業ではないだろうか。

    旅先の思わぬところで人の情けにふれる、思わぬ出会いや数々のセレンディピティが観光産業を感動ビジネスといわせる理由だろう。時間と空間を感動という商品にして高齢者から若者へと資産移転を図るような公共装置としての役割についても期待されている。

    雪の夜、那覇から戻れず残念なのは、もうすぐ退役する747に乗りそこねたことだった。最新のテクノロジーを駆使して環境負荷を抑えた新型機は快適だが、去りゆくジャンボには多くの思い出、ノスタルジーも乗せていた。

    役割を終えたものが退くように旅を支える仕組みも新旧交代が続いている。


    【篠塚恭一(しのづか・きょういち )プロフィール】
    1961年、千葉市生れ。91年(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。



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