先週末に2泊3日で那覇を訪れて、辺野古基地阻止闘争の中心幹部や翁長県政を支える与党県議の主だった方々と懇談したが、皆さん一様に、行政裁判の行方にはまったく幻想を持っておらず、審議を通じて国の理不尽さを全国民に知ってもらう宣伝の場くらいにしかならないだろうと思っている。それは当然で、日本には3権分立も司法の独立もなく、裁判所は大事な問題では常に政府の言いなりであることを彼らが一番よく知っている。それよりも、辺野古基地のゲート前の座り込みや大浦湾の海上デモを一段と強化して、工事強行を実力で阻止する闘争を進めると同時に、本土や国際社会の世論に訴えて日本政府を追い詰めて行こうとしている。
本土の側では、安保法制反対の国会デモをあそこまで盛り上げてきた諸団体が、引き続き、安保法制廃止と共に辺野古基地反対を2本柱に運動を継続し、当面、来夏参院選で安倍政権を敗北に追い込むことをめざして態勢を整えようとしている。
そこで問題は、野党第一党の民主党の姿勢である。民主党内のリベラル派や社民、共産、生活、社会大衆などは辺野古反対で一致するが、肝心の同党執行部は、岡田克也代表が「自分が(鳩山政権の)外相として『辺野古しかない』と苦渋の決断をしたので、いまさら反対できない」という考えで凝り固まっているので、この野党共闘に加われない。おまけに、沖縄現地の民主党は、オール沖縄の翁長選挙にも加わらず、もはや組織的に壊滅状態にある。
沖縄と本土が連帯して運動を盛り上げて、参院選ではこれを日本の民主主義と地方自治の根本を問う大きな争点にして行こうとしているときに、民主党が独り野党共闘の輪に加わらず、運動の足を引っ張る存在になりかねない。選挙でも当然、惨敗だろう。私の意見では、あの時は力不足でああするより仕方がなかったが、オール沖縄を背景にした翁長県政の誕生で「局面は変わった。沖縄の民意に添わなければならない」と、アッケラカンと君子豹変すればいいと思うのだが、変に生真面目に古証文にこだわり、民意よりも自分の面子を大事にする岡田にそれができるのかどうか。▲
(日刊ゲンダイ10月22日付から転載)
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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
コメント
コメントを書く民主党の硬直化した姿勢は、政権獲得時の混乱、分裂、政権禅譲などで、一貫しているが、初心に立ち返れるかどうかが、問われているのでしょう。
沖縄県民の意思は、仲井真元知事の時から、辺野古移転反対で明確化しているが、仲井真元知事が背信行為をしたに過ぎない。後の選挙で、移転賛成の国会議員は選出していないし、移転反対の翁長知事を選出していることで、沖縄県民の意思は明確化しているのです。
県民の意思を無視するのであれば、先進国でなければ、民主主義国でもない。間違いは間違いとして反省することから、民主党の未来は開けるのであって、高野さんのお話の過去を捨てるのでなく、反省し、新たな気持ちで、出直すことが大切です。