今年2月から4月にかけて<LM.C Club Circuit '24 -Spring->と銘打ったツアーを行ったLM.C。彼らの最新アルバム『怪物園』を聴くと分かるように、ソリッドなロック・チューンや都会的な洗練感を活かしたスタイリッシュなナンバー、エモーショナルなスロー・チューン等々、色彩豊かかつ上質な音楽性と華やかなパフォーマンスをフィーチュアした彼らのライヴは高い評価を得ていて、今回のツアーも大成功で幕を降ろした。maya(vo)とAiji(g)両名に<LM.C Club Circuit '24 -Spring->を振り返ってもらったインタビューを、前後編でお届けする。
Interview:村上孝之
――<LM.C Club Circuit '24 -Spring->を行うにあたって、テーマやコンセプトなどはありましたか?
Aiji:今回の春のツアーは“Club Circuit”というタイトルで、僕らがそういうタイトルをつける時というのは、普段あまりやっていない曲を演奏する場だったりするんです。特定の作品を表現するというよりも純粋にライヴを楽しむようなツアーになっていて、今回も大枠はそういう感じでした。
maya:“Club Circuit”というタイトルのツアーは、公演の内容はどんなものにでもできてしまうということなので、今回タイトルを決めた時点ではライヴの方向性は定まっていなかったといえば、定まっていなかった気がしますね。そこからどういう気持ちで向き合ったかというと、最終的にはLM.Cが積み重ねてきた歴史を感じるツアーがいいだろうというところに落ち着きました。だから、演目としても特定の時期を選ばずに選抜していくという感じでしたね。LM.Cのある種の集大成のようなツアーにはなるといいなと思っていて、それが叶ったツアーだったなと思います。
――いろいろな時代の楽曲やレアな曲なども聴くことができて、お客さんはすごく楽しめたと思います。2022年4月にリリースされた『怪物園』はより音楽性の幅を広げた一作でしたが、その辺りは今回のツアーにも反映されましたか?
Aiji:どうだろう? 自分達的には『怪物園』の幅広さみたいなものは、あまり意識できていないというか。僕らは、どんどん自然体になってきているんです。最近は自分の音楽の原体験だったり、その時その時の衝動だったりを、なるべくダイレクトに出すようにしている。LM.Cはmayaにとっても、自分にとっても2度目のキャリアのバンドだったりするので、結成当初はLM.Cのブランディングというか、やりたいことをより明確にするために、敢えて音楽性を偏らせていたんです。そこから数年経って、レーベルが変わったりするようなタイミングで、自分的には新章が始まったような感覚だったんですね。
それまでで、もうブランディングは一旦形になったから、自分とmayaそれぞれがやりたい音楽だったり、“こういうのが好きだよね”というところに、より正直になっている感じがありますね。僕は今が最も自然体なんじゃないかなと思っていて、『怪物園』もより幅を広げようという意識のもとに作ったわけではないんです。
――自然体で幅広さと完成度の高さを兼ね備えた音楽を作れるというのは、LM.Cの大きな強みといえますね。
Aiji:環境的にも、制作という意味でも、わりと無理なくやっている感じがしますが、今おっしゃっていただけたように、常に完成度は高いところを目指しています。だからハードルがどんどん高くなっていて、自然体とはいえ気楽に音楽を作っているという感覚は全くない。僕らは単なる焼き直しとかは、もう一切排除しているんです。焼き直しにいくほうが、アーティストとしては楽じゃないですか。自分達はそこには絶対にいかないようなチャレンジをずっと続けているので、ある種のツラさはある。赤裸々に言ってしまうと、今は1番キツいです(笑)。
――ストイックなスタンスを貫くことでLM.Cはさらに魅力を増してきていますし、新鮮さを失うこともありません。そして、今回のツアーでもいろいろな楽曲を披露されたんですね?
Aiji:そういうライヴには、なりましたね。
maya:ライヴでいろいろな顔を見せるということに関しては、それまでの経験が積み重なってきているというのがあって、それぞれの曲が持っているキャラクターの違いというのを表現できた気はしますね。シンプルに言うと、今回は1番素敵だなと思えるツアーになりました。自他ともに認めるくらい、いいツアーになった。別に、タイミング的に区切りのいい15周年、20周年といったわけではなくて、17周年を超えた辺りで自然にそれが訪れたというのは素敵だなと思いますね。
Aiji:音楽性の広さということではLM.Cは正式メンバーが2名で、後はサポート・メンバーというのも大きいかもしれない。メンバーが4~5人いると摩擦が生まれたり、懸ける思いにズレが生じてきたりすることがあると思うんですよ。うちの場合はそういうことがなくて、それぞれの楽曲をより純度高く鮮明に表現できる。だから、恵まれているなと思いますね。今年でもう18年目になりますが、メンバーがずっと同じ思いでいて、新しい発見もありつつ楽しくやれていて、そういうバンドというのはほぼ無いと思うんですよ。
――たしかに、同じメンバーで長年に亘って結成当初と変わらないモチベーションを保ち続けるのは、難しいことですね。ただ、正式メンバーが2名の場合は自分達がやりたいことが本当に明確でなければ、ボヤケた音楽になってしまうと思います。
Aiji:それは、たしかにそうですね。なによりも自分達がしっかりしていないと、サポートしてくれる人もどうしていいか分からなかったりするだろうし。
――そういう意味で、LM.Cは芯の部分が、すごくしっかりしていることが分かります。Aijiさんはそれぞれの楽曲に合わせて幅広いギター・アプローチを採ることについては、どのように捉えていますか?
Aiji:そこも、あまり深く考えてはいないですね。曲を作る段階で、ギターのことは意識していないし。逆にいうと、ギターで奇をてらったことをしようとかも思わないところがあるんですよ。結果アウトプットされたものが、“いや、狙っているんじゃないの?”と思われるようなものになったとしても、本人は別に狙っていない。そういう面でも無理していないというのは、あるかもしれないですね。
――お二人はそれぞれの楽曲の世界に“スッ”と入ることができて、それこそ自然体で幅広い表現をされているんですね。では、それぞれここ最近ステージに立つにあたって大事にされていることは?
maya:もう15年くらい前ですけど、とあるライヴがきっかけになって、俺はとにかくライヴをする時は完全にやり切って終わるということを決めたんです。というのは、その15年くらい前に、自分的に“なんでもないライヴ”をしてしまったように感じたことがあって。つまらないとか、盛り上げることができなかったとか、そういう表面的な部分も踏まえつつですけど、それだけではない、なんとも言えない……今思えば、消化不良のようなライヴをしてしまったんです。
特に、LM.Cは国内の公演では基本的にアンコールがなくて、もう本編でやり切るというスタイルなんですけど、それがそのライヴでは叶わなかった。それで、これはなにが起こっているんだろうなというのを自分で分析して、自分はどういう気持でライヴを終えたいのかというところで向き合って、そこからはもうとにかく自分の気持ちのうえでやり切るということを決めてライヴに臨んでいます。
――“やり切る”という気持を数年持ち続けるのは簡単ですが、10数年に亘って毎回変わらないというのは素晴らしいですし、お客さんも嬉しいと思います。
maya:そうですね。みんなハッピーというか。自分の人生的にそうあったほうがいいかなというところで、責任感といったものの手前で、そういう気持でライヴをしたいなと思っています。
Aiji:自分は今mayaが話したような感情とかも含めて、この17年半の中でいろいろ移ろいゆく感じで生きてきましたが、最近はもう2周くらいまわって、わりと冷静と情熱の間に生きるというか。そこに行きついていますね。無駄にテンションを上げることもなく、ある種客観的に自分と向き合いつつライヴをしている。それは多分理由があって、曲のエネルギーの持っていきどころが昔よりも多様化しているんですよね。昔はもっとテンションが高いまま始まって、高いまま終っていくという熱量の楽曲が多かったけど、最近はよりしっかり聴かせるような曲も増えきている。その結果、仮に激しめの曲を演奏したとしても、しっかり聴かせないといけないというところにいる気がしているんです。なので、冷静と情熱の間に生きているというのが1番シックリくるかなという気がしますね。
――“毎回やり切る”という思いを抱いている情熱的なmayaさんと、ある意味職人的なAijiさんが並び立っているLM.Cは本当に魅力的です。話を<LM.C Club Circuit '24 -Spring->に戻しますが、ツアー前半では5年ぶりとなる台湾公演も実施されました。
Aiji:台湾はコロナ以降全く行くことができなくなっていて、5年というのはまあまあな期間じゃないですか。1つのアーティストが生まれて、終わっていくくらいの長さとも言えますよね。そういう中で、果たして待っていてくれるのだろうかというところで、まずはビジネス的な側面で怖さがありました。でも、コロナ禍を経て渡航がOKになってからは台湾からわざわざ日本に来てくれている人がいることは知っていたので、待ってくれている人はいるだろうなと思っていたし、それが何人だろうと関係なく、とにかく待ってくれている人のためにいいライヴをしたいなという思いだけを持って臨みました。
実際に行ってみたら思っていた以上に待っていてくれた人が沢山いて、本当にあり難いなと思いましたね。いい意味で日本と変わらないテンションのライヴをできたのが、1番良かったかなと思います。海外でライヴをするときは自分は結構気負ってしまうというか、頻繁にいける場所ではないので、とにかくいいライヴをしたいという思いが空回ってしまったことも過去にはあったんです。それも踏まえて、いい意味で日本でやっているままのライヴをやれて良かったです。
maya:今回の台湾公演は、信じられないくらい素晴らしい気持ちになりました。すごく良かったですね。他では、あまり体験できないというか。そもそも我々は、ずっと毎年のように台湾に行っていたんです。それが、いろいろな状況が重なってライヴができなくなったというストーリーも含めて、やっと帰ることができたし、やっぱり現地に行かないと会えない人達というのが沢山いるんだなという当たり前のことを、あらためて感じることもできた。本当に、行って良かったなと思います。
――5年もの間待ってくれている人達がいるというのは、LM.Cがそれに価する音楽やライヴを提示されていることの証といえますね。LM.Cは結成当初から国内に留まらず、海外でも積極的に活動されてきました。その辺りのスタンスについても、あらためて話していただけますか。
Aiji:そもそもLM.Cを始めた当初から韓国、台湾、香港くらいは日本と変わらずやっていこうという思いのもとに始めたところがあって、元々グローバル指向は強いですね。だから、呼ばれたら行きたいし、呼ばれなくても現地に行く計画をなるべく立てていたいと思っています。
maya:LM.Cを始めた時はタイミング的にも良かったというか、わりと海外に公演をしに行きやすい状況が整っていたんです。そういうこともあり、結成当初から行ける機会があるなら行きたいという気持がありましたね。それを実現することができて、いい経験をさせてもらっているなと思います。
【第一回目はこちら】https://ch.nicovideo.jp/club-Zy/blomaga/ar2199144
INFORMATION
LM.C
ヴォーカリスト・maya(まーや)とギタリスト・Aiji(あいじ)によるヴィジュアル系ロックユニット、LM.C。
ミクスチャー、デジロック、HIP HOP風・・・と、簡単にカテゴライズできないPOPでキャッチーなサウンドを展開し その存在感はもはやヴィジュアル系という枠にとどまらない。
2006年活動スタートと共にメジャーデビュー。翌年2007年には台湾にて初の海外フェスに出演。
2008年に渋谷公会堂ライブを実施。2012年には日本武道館公演を成功に収める。
活動地域も日本にとどまらず世界各国に進出。特にヨーロッパ圏のJ-ROCKファンから「最も注目されるJ-ROCK Band」 と評される。
2009年と2010年、2012年には3度に渡るワールドツアーを敢行するなど ワールドワイドに高い評価を得ている。その後もホールライブや海外公演もコンスタントに継続。
2022年4月に4年ぶり8作目となるアルバム、「怪物園」リリース。同年9月25日に、15周年記念ライブを LINE CUBE SHIBUYAで行った。
2023年には4年ぶりとなる、15本に渡る全国ツアーを開催。
2024年春には、5年ぶりの台湾公演を含む全国+ASIA 14箇所16公演のツアーを実施。
活動開始から18年を迎える今も精力的に活動を続けている。
ライブ情報
mayaの王様ナイト‘24(仮) 7月30日(火)Zepp新宿
LM.C TOUR 2024 ※秋ツアー(タイトル未定)
11月7日(木)名古屋 Electric Lady Land
11月8日(金)大阪 ESAKA MUSE
11月14日(木)柏 PALOOZA
11月17日(日)横浜 1000 CLUB
11月21日(木)埼玉 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心
11月29日(金)長野 CLUB JUNK BOX
DIR EN GREY/PIERROT
ANDROGYNOS - THE FINAL WAR -
10月11日(金)
- under the Blue Moon -
10月12日(土)
- under the Red Moon -
国立代々木競技場 第一体育館
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