2010/04/26
12:31 am
奥村土牛の展覧会を広尾に新しくできた山種美術館に観に行った。
素晴らしいの一言だった。
初めて観たのだけど、僕の持っていた日本画のイメージと全く違い、
冷たさ静かさやよそよそしさが無かった。
力強く、やさしく、賑やかで、素直で、そこに生きているものへの愛情にあふれていた。
生きているものだけでなく、自然の造形物に対してもあるがままなのに、
何かやさしさと単純化がなされていて、ほほえましくなる。
観ていてとっても気持ちがよかった。
「鳴門」「那智」「醍醐」と代表作が全てそろっていた。
「鳴門」文句なく代表作だろう。
力強く渦巻く渦潮、海水の重さ、波の渦の強さの手ごたえを感じる、
金色が下地に入っているそうで、色合いが海の水と言うよりは何か生き物のように見える。
波のしぶきが泡立って盛り上がって引き込まれる。
ご本人が奥様と鳴門海峡で遊覧船から奥様に帯を引っ張ってもらいながら
身を乗り出してうず潮を観察した映像をずいぶん昔に観た記憶がある。
画家の意思、観察力、洞察力に思いが至る。
「那智」は本当にセザンヌを思い出す。
「吉野」には驚いた。
ええ―い面倒だ、山全体が桜色に見えたんだから、桜の木は一本の枝しか描かず、
後は山全体を桜色にしておく、そこに桜がたくさんあるんだよ、とおおらかな絵ができていた。
こんな省略もあるんだと知った。
「チューリップ」と言う小品があった、二つのチューリップが寄り添うように咲いている。
背の高いほうがちょっと、低いほうに花弁をかしげている。
兄妹なのかなと思うようにかばいあうように二つのチューリップが並んでいる。
ただそれだけの絵なのに心が洗われた。
普段美術館に行くことの少ない方にも絶対に絶対にお勧めの展覧会だ。
行くときは山種美術館のHPをプリントアウトして持っていくと割引になる、
但し人数分の枚数を印刷していかないといけない。
こういう日本の最高の芸術、多くの人に観てほしい。