レミゼ」を名古屋に観に行った。
演出は多少帝劇とは違っていたけど、感想は基本は東京で観たときとあまり変わらない。

とは言いつつ、中日劇場がこういう芝居には似合う、
音響が帝劇より格段にいい音に聴こえる、
客席のスロープが舞台に近く見せる効果がある、
舞台の額縁とパリ市街の街並みの解け込み具合、
バリケードを包み込むような距離感、
アパートの一部屋の窓から街並みを覗ける構造の一体感、
みたいなことが重なって役者も演じやすいのかもしれない、
大千秋楽が近くなったことも会いまったのだろう、
皆さん迫真の熱演になっていて、楽しかった。

 

マチネで上山竜司くん、内藤大希くんを観て、ソワレで相葉裕樹くん、岸祐二くんを観た。

 

マチネ終演後の楽屋、

竜司くんには、落ち着いたアンジョルラス、革命を志す学生の同志を束ねるリーダーの頼もしさが見え、安心して観て居られる、と褒めた。言わなかったけど、もう少しまなじり決してことに臨んでいる感があってもよかったのにとか思ったけど、まあ、東京でゆっくり飲みながら話をします。

内藤くんには、マリウスの誠実さが滲み出ている、それってたぶん内藤くんの内心にあるもので、自然な芝居、特別に演技していない感があって、こんなボーイフレンドが出てきたら、安心して死んでゆける父親の気分を味わえた。とても清々しくよかったと褒めた。

この二人が舞台上でセリフ交わしているのを観ると、不思議だなと感じてしまう。
特に竜司くんにはあの「エア・ギア」の腕の骨折で骨が飛び出して見えているのに、
明日の舞台出ます、と言ってきかなかった役者への想いの強さを思い出す。
「テニス」とは別路線から必死にもっと上を目指そうと頑張ってきた上山くん。
「テニス」時代には実力は見えていたけど特別には人気があったわけではない内藤くん、彼は彼で誠実に努力を重ねたのだろう、
こうした二人がこの日本の最高のミュージカルの舞台で交わるのを見るのって、
僕の密かな楽しみなんです。

 

ソワレ終演後の楽屋、

楽屋口で待っていたら、駒田一くんが、片岡さんって声をかけてくれた。
そこに通りかかった岸くんが、なんでですか、片岡さんと駒田さんって、という。
20何年か前の博品館劇場の「赤ずきんチャチャ」以来ですよね、って駒田くん、
不思議そうな岸くんに、まだ何もできなかった頃に仕事させてもらったんだよって、謙遜してくれた。
岸くんすかさず、僕も「こち亀」の声からですよって、同門同窓会みたいになってうれしかった。

 

相葉くん、楽屋口に出てきてくれたので、駄目だしあるよって言ったら、
後にしませんかだって。

感想は、彼は帝劇より大きく進化していた。
アンジョルラスがリーダーとして学生を率いて闘う際のガッツポーズ、
見得切りの迫力がそれなりに力強く見えるようになっていた。

リーダー役に慣れて来て似合いつつある感がある。
ただ、たぶん、こうした社会運動を統率する人物、
という人間のイメージがなかなか自分の中に無いのだろうと思うが、
どうにかこうにか掴めたかもしれない、という程度には見えるのだけど、まだまだだよ、と言っておきたい。

それよりも気になったのが、どこか体全体にチカラが入りすぎてリキんでいて、
体の動きが不自然に見える瞬間があることだ。

体幹のチカラを訓練ししっかり立てるようにするしかない。
余計な力を消滅させ、力まないでも堂々と立って居られるようにするには
体の中の筋肉で体の芯を支えるしかない。

 

というダメ出しを終演後、岸くん交えて軽くシャンパン飲み飲み食事しながらじっくりと話し込んだ。

片岡さんの言うことは自分でも分かっているんです、
カラダも顔の表情も力んでいることは分かっているんです、
でもカラダに力入れないとあの歌を、あの音量でうたえないんです、
歌える力を絞り出すチカラの入れ具合と、
表情やからだの動きに出てしまうリキミとを考え考えギリギリでやっているんです、
とものすごく深い表情で語ってくれた。

30歳のまだ若い俳優に失礼だけど、
こういう告白をされるとなぜかやるせなく可愛くて抱きしめてあげたくなる、しないけど。

 

彼を初めて見た、あの山吹戦のオーディション、
鉛筆の様に細い体でちょっとはにかんで踊っていただけの少年が、
こうして「レミゼ」のアンジョルラスやってるなんて、信じられないくらいうれしいよ、君の立ち姿は最高にきれいだよ、
スタイルの良さ、長いまっすぐな脚、細い首が伸びてその上にちょうどいいくらいの大きさの顔がある、1本にまとめた長い髪、だれにもこの姿かたちはまねできない、と言って励ました。
そうですね、もっともっと頑張らなきゃと、と胸張って顔上げて真剣な顔して唇をかみしめた、相葉くんっていいですね。

それぞれの俳優とパチリ。

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余談を一つ、

ソワレで、隣に座った女性、始まる前からオペラグラス持ち出し膝の上でシッカリ両手で握りしめている、開演でなぜか岸くんが舞台に出て来ると姿勢がしゃきっとして顔を持ち上げ、彼の移動に合わせて回頭する、まるで戦艦のデッキの将軍のように。カーテンコールが終わって。岸くんの歌って素晴らしいですね、と話しかけたら、ニコッと微笑んでそうです素敵で、私、名古屋の岸さんの出る回、全部観るんです、と嬉しそうに返してくれ、僕も岸くん観たくて来たんですと、アイバッチのこと棚に上げて、その女性の笑顔に合わせてしまった。