「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。 8月15日(月)の配信から番組のハイライトを今回と次回の2回に分けてご紹介。リアルタイムの配信を見逃した方は、気になった部分だけでも動画でぜひご覧ください。
次回のニコ生配信は、9月5日(月)20:00を予定しています。 論弾初めてのゲスト対談のお相手は、ソフトウェア開発企業UEIのCEO、清水亮氏。人工知能などの分野で活躍する現役のプログラマーでもあります。果たして、対談ではどんな話が飛び出すのか? お見逃しなく!
■2016/08/15配信のハイライト(その1)
- 視聴者からの質問:面接試験に合格するための基準とは?
- SFは、iPhoneもポケモンGOも予測できなかった
- 中国という国の本質とは?
- 人類は戦争が大好き
- 民間人の方が軍人より残虐?『宇宙の戦士』
- ヒッピームーブメントに影響を与えた『異星の客』
視聴者からの質問:面接試験に合格するための基準とは?
「私は、去る数か月前、国家公務員の数的推理に関して質問した者です。無事、1次試験は合格したものの、面接試験で落ちてしまいました。(裁判所事務官の試験です)。筆記試験と違い面接試験の場合、何が原因で落ちてしまったのかよくわからないこともあって、何も考えられない状態になってしまいました。 面接試験は、どのような基準が一般的に用意されていると弾さんは考えますか?」
小飼弾
「就職面接にはものすごい情報の非対称性があります。まず言っておきたいのは、自分を責めるなということ。はっきり言っておきましょう。面接の合否なんて、担当者の好き嫌いです! これはどこでも変わりません。始めから公平でも公正でもないんです。一般性はありません。世の中のほとんどのものは、好き嫌いで決まります。たまたま担当官に好かれなかった、ただそれだけのことです」
―――弾さんも、オン・ザ・エッヂではプログラマーの採用をしていたことがありますよね。
「一般論として、中小企業の場合は応募者が多くありません。やっていけそうな人だったら、早い者勝ちで採用しますよ。ただ、僕がオン・ザ・エッヂにいた頃は、まだITバブルが終わっていなかった時期なので、人はわんさか来ました。だから、まずメールのやり取りでまともなコミュニケーションが取れそうかどうかを見て、スクリーニングはしました。でも一番重要なのは、『うちでやっていけるの?』ということ。体力が十分にあるかとか、お客さんと話せるか。コミュ障の人には難しい仕事でしたから、筆記試験の成績が抜群によかった人をお断りしたことも何度かあります」
「同じ試験をやるにしても、会社は学校と違います。学校の試験をクリアした人はお金を払って学校に通うわけですが、会社の場合は会社がお金を払うわけですから。やはり雇う側としては、自分たちといっしょに仕事をして面白くない人にお金を払うのは、さらに面白くないでしょ。だから、会社の採用なんてものすごく自分勝手に決まるんです。ちなみに、米国の大学もそうですよ。担当官の胸先三寸」
「国家公務員の採用には、公平で公正な基準があると思うかもしれませんが、しょせん人ですから。難関試験に合格していたとしてもそれはあくまで足切り。最後は好き嫌いです」
―――就活生は、面接試験でどうやって振る舞えばいいか悩んでいます。
「悩んでいるんだけど、一番悩むべきところで悩んでいませんね。それは、自分が採用する側なら、『自分はこいつと仕事をしたいか』と考えてみること。問答集を丸暗記した就活生を雇いたい人はいません。そういう人は人工知能にかなわない」
―――就職で悩んでいる人にアドバイスはありますか?
「採用への一番の近道はコネ作りですよ。会社と何のコネもなくてエントリーシートだけ送って就職にこぎ着けるというのは、よほどの大企業や公務員でもない限り難しい」
―――コネはどう作ればいいんですか?
「タモリが芸能界に入ったエピソードが参考になると思います。有名人が宴会しているところに、タモリが飛び入りで参加して芸をやってウケた。それがコネになったんですね。実際そういうものですよ。IT業界なら、GitHubなどを通じて簡単にコネができます。『あ、この人、前にバグレポートを送ってくれた人だ』とかね。昔、オン・ザ・エッヂのCEOだった堀江貴文さんが僕をスカウトしたきっかけだってそう。僕が作っていたJcode.pmというPerlのモジュールを、堀江さんが使っていた。それも立派なコネなんです」
―――じゃあ、就活生にアドバイスするとしたら、ソーシャルメディアやイベントをうまく活用しようと。
「はい、そういう取っかかりをいっぱい作っておこうということですね」
―――エントリーシートをいっぱい書けばいいというものではないと。
「エントリーシートは、コネに比べると役に立ちません。やはり、企業側も自分が何らかの形で知っている人を優先して面接しますから。大企業ですらそうです。ちょまどさんという女性のマンガ家がいらっしゃるんですが、Twitterでの活動がマイクロソフトの中の人の目に留まって、同社に入社することになりました」
―――むしろ、ソーシャルメディアがある分、昔よりコネを作りやすくなったと言えるかもしれませんね。
「そうなんです。昔のコネ社会はもっとドロドロしていました。血縁ばかりで。今は血縁より、Twitterでフォローしてもらったとか、Facebookでフレンドになったという方がコネになる。『明るいコネ社会』です」
「もちろん、きちんと最低限の基準を満たしての上ですよ。コネがあるから、ダメな奴を採用してしまうのが、悪い意味でのコネ。石原慎太郎の息子だから、自民党の偉いさんになっているとか。逆に、能力があれば、やはりコネは有利なわけです。最初のきっかけはコネでも、実力だったことがあとからわかることも少なくありません。小泉純一郎の息子はそうですね」
「頑張りすぎないことも大事。コネで入る時は、『こんなのでいいの?』と思うくらい、スルッと決まるものですし。頑張っても埒があかない時は諦めるのも1つの手ですよ。頑張ってもどうしようもないところで頑張るのは、それを見ている周りの人も辛い」
SFは、iPhoneもポケモンGOも予測できなかった
―――弾さん、さっきから突っ込みたくてしょうがなかったんですが、カメラマンベストを着て、クビにタオルを巻いて、すごい格好ですね。いつの間にか随分日焼けしているし。
小飼弾
「あんまり昼間には『狩り』には行きたくないんですけどねえ。僕だけじゃなくて、ポケモンGOのおかげでいっせいにプログラマーが外に出て歩くようになった。ポケモン図鑑をすでにコンプした人なんて、1日20kmくらい歩いていたりする。もうそれは行軍ですよ!」
―――これって、今回の特集に関係あるんですか?
「大ありですよ。いかにSFは未来予測を外してきたことか」
―――えっ、そうなんですか。鉄腕アトムに憧れて、ロボットを作り始めたエンジニアの話を聞いたりしますけど。