「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。 8月15日(月)の配信から番組のハイライトを前回と今回の2回に分けてご紹介。リアルタイムの配信を見逃した方は、気になった部分だけでも動画でぜひご覧ください。
次回のニコ生配信は、9月5日(月)20:00を予定しています。 論弾初めてのゲスト対談のお相手は、ソフトウェア開発企業UEIのCEO、清水亮氏。人工知能などの分野で活躍する現役のプログラマーでもあります。果たして、対談ではどんな話が飛び出すのか? お見逃しなく!
■2016/08/15配信のハイライト(その2)
- 戦いに人間は必要なのか?『戦闘妖精・雪風』
- 日本語が読める素晴らしさを実感させてくれる神林長平作品
- 遺伝子レベルで改変しないと争いは避けられない?『新世界より』
- その平和をあなたは受け入れられるか?『ハーモニー』
- 山本弘作品は、もっと注目されるべき
- 視聴者からの質問:電子書籍は将来的に月額制が主流になる?
- 化学を専攻していた弾さんから見て、『ブレーキングバッド』は?
- NHKの受信料、高すぎ!
- 視聴者からの質問:よいプログラマ/エンジニアとは?
- 視聴者からの質問:コンピュータサイエンスを学ぶのに適した環境は?
- 視聴者からの質問:面白い本を人に勧めるコツ
戦いに人間は必要なのか?『戦闘妖精・雪風』
―――次は、戦争つながりで神林長平の『戦闘妖精・雪風』に行きますか。
小飼弾
「『戦闘妖精・雪風』で一番驚いたのは、続編の『グッドラック』が出たこと。第1作がものすごくきれいな終わり方をしているんですよ。あんな見事な締め方はない!」
「正体のわからない敵ジャムと戦っているのが、雪風の作品舞台。戦争ですらないかもしれないというのは、この作品のテーマにも関わってきます。ほとんどの戦争は地球から離れたフェアリイ星で行われるため、ほとんどの地球人はこの戦いに興味を失っている」
「ジャムとの戦いで重要なのが、人工知能。話が進むにつれ、次第に兵器の自動化が進んでいく。雪風ですごいのは、人間側の立場からしか描いていないのに、段々と人間がスルーされていくところでしょう」
日本語が読める素晴らしさを実感させてくれる神林長平作品
小飼弾
「神林長平のシリーズ物としては雪風のほかに、『あなたの魂に安らぎあれ』、『帝王の殻』、『膚の下』からなる火星3部作があります。戦争後、荒野になった地球が舞台なんですが、地球人たちは自分たちが火星に住んでいると思い込まされている」
「『猶予の月』は恋愛小説ですが、設定がぶっ飛んでいる。禁じられた恋をしている姉と弟がいるんですが、姉はその恋が許される世界を創ってしまおうとする。けれど、ほかにも現実改変をしようとしている奴らがいて、その改変が重なってしまう。足下から現実がボロボロ崩れていく」
「雪風を読む上で注意してほしいのは、冷戦終了前に描かれた作品だということ。例えば、作品中にはステルスが出てきません。このあたりも、SF作家がいかに未来予測に優れていないかを示しています」
「これほど足下が崩れるような感覚を味わわせてくれる稀有な作家ですよ、神林長平は。この人の作品を読むと、本当に日本語が読めてよかったと思います」
遺伝子レベルで改変しないと争いは避けられない?『新世界より』
小飼弾
「『シドニアの騎士』にも当てはまることですが、最近のアニメは原作に忠実になりましたね。アニメの話数が短くなったことも大きいのかな」
「原作忠実度で言えば、『新世界より』のアニメもすごい。今からずっと未来、人口が激減した世界が舞台なんですが、人間1人1人がすさまじい超能力を持っている。ただし、人を殺すと自分も死んでしまう仕組みが遺伝子レベルで組み込まれているため、争いはなくなっている……という設定です」
「この作品ならアニメから入っても大丈夫。原作厨の人も文句は言えないでしょう」
「遺伝子レベルで改造しない限り、争いは避けられないのか。あるいは、そこまでしても争いは起きるのかという問いを投げかけてくる作品でもあります」
その平和をあなたは受け入れられるか?『ハーモニー』
小飼弾
「伊藤計劃作品のディテールについては、文句があります。元ネタの科学エピソードが間違っていたりするんで」
「人がなぜ争うのかについて、『虐殺器官』ではまさにそういう器官があるからという設定になっていました」
「『ハーモニー』でも伊藤計劃の杜撰さが現れています。ETMLというXMLのような架空のマークアップ言語が出てくるんですが、『閉じタグ』がない!とか」
―――いや、そのツッコミは細かすぎでしょ(笑)。
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