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小飼弾の論弾 #18「ゲスト対談:SF作家 山本弘氏(その1):SFのウソとリアル」
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小飼弾の論弾 #18「ゲスト対談:SF作家 山本弘氏(その1):SFのウソとリアル」

2016-10-06 07:00

    「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。 9月26日(月)に行われた、SF作家 山本弘さんとの対談を3回に分けてお届けします。動画も合わせてぜひご覧ください。

    次回のニコ生配信は、10月17日(月)20:00、「お金特集:お金で苦労しないためにはどうすればいい?」を予定しています。

    ■2016/09/26配信のハイライト(その1)

    • 『君の名は。』の彗星軌道が間違っていた
    • 『2001年宇宙の旅』のウソ
    • 『シン・ゴジラ』と『MM9』、怪獣モノのリアル
    • ウルトラマンの世界を舞台にした『多々良島ふたたび』
    • 『地球移動作戦』は、山本版『妖星ゴラス』
    • 『プロジェクトぴあの』で描かれた2025年の秋葉原
    • 自分の意思で行動するロボットを描いた『ロボット市民』

    『君の名は。』の彗星軌道が間違っていた

    ―――今回はゲストにSF作家の山本弘先生をお迎えしております。山本先生は、ラノベから、ハードSF、怪獣モノ、疑似科学への批判等、非常に幅広い分野で活動されています。今日はSFに限らず、疑似科学批判や創作の秘密についても、いろいろおうかがいしたいと思います。 最初は新海誠監督の映画『君の名は。』の話題からいきましょうか。物語のカギとなる彗星軌道の描写が間違っていると、山本先生が指摘したことがネット上で話題になりました。

    小飼:僕は先生のおかげで『君の名は。』を見に行ったんですよ。先生が「彗星の軌道が残念だな」って言ったから「それは検証しに行かなきゃな」って。それがなければ、配信を待っていたかもしれません。

    山本:僕がTwitterで書いた時には、「いい映画なんだけど、いい映画なんだけど、いい映画なんだけど」って、3回くりかえしたんですよ。そうしないと絶対に誤解されるから。映画をけなしているように思われないようにとわざわざ3回もくりかえしたんだけど、それでも誤解されるって、どういうことですか(笑)。

    ―――山本先生としては、「これは、ちょっとミスだよね」っていう文脈で言っただけですよね。

    山本:本当なら彗星は太陽を回らなきゃいけない。

    小飼:太陽が楕円の焦点の1つなんですよね。

    山本:だけど、あの映画の説明図では、こうなっていたんですよね(太陽の後ろに回り込むことなく、ターンしている)。

    ―――私も、2回目に注意して見ました。たしか3回くらい彗星軌道の図が出てきて、そのうち1回はちゃんとした軌道になっていたと思いました。

    山本:だから、単なるミスなんですよ。そうとしか、考えられない。ところが僕がTwitterでつぶやいたものがTogetterにまとめられると、反論が山のように書かれました。「あれは、間違っていない!」って(笑)。

    小飼:えぇっ!?えぇっ!?えぇっ!?

    山本:「こう考えれば、理屈に合うんだ!」とか。「あの彗星の周期を1年だと考えれば!」という人まで出てきました。あの彗星は地球と並んで回っていて、地球から見れば常に太陽のこちら側にある。それを地球から見たら、劇中の図になるというんですよ。彗星の周期が1年ってそもそも映画の設定(1200年周期)に、矛盾してるじゃないですか。

    小飼:ただ、描写の正確さについていえば、おかしいところはありますね。例えば、彗星のかけらが落ちてくるわけですが、映画では落ちてくる様子が肉眼でも見えています。これは、物理学的には大嘘。秒速数キロメートルから数十キロメートルの速度ですから、本来ならビームが走っているようにしか見えないはず。

    山本:そもそも、映画で彗星を描く時は、彗星のうしろに尾が伸びているじゃないですか。あれも嘘なんですよ。彗星の尾は、太陽の反対側に出るんだから。だから映画では何となく彗星が尾を引いて帰ってきているように見えるけども、本当は違う。それは言ってみれば「映画のウソ」。『スター・ウォーズ』では、宇宙で爆発音がするのと同じです。

    小飼:そこは、突っ込むのが野暮でしょっていう(笑)。

    『2001年宇宙の旅』のウソ

    山本:観客に理解させるためにワザと嘘を描くこともある。それはOKだと思うんですよ。

    ―――山本先生もSF作品を書かれている中で、そういう「嘘」を入れることはありますか?

    山本:細かいことは、ちょくちょくやっていますけどね。ただ小説の場合は、映像よりも縛りが少ないんで。 有名なエピソードが、アーサー・C・クラーク原作の映画『2001年宇宙の旅』です。あの映画のどこがおかしいかというと、月面のシーンで背景に星が映っているんです。

    小飼:瞬いちゃっていたんでしたっけ?

    山本:いえ、瞬いてはいません。さすがに、そこはやっていない。でも月面だと、昼間は星が見えないはずなんですよ。

    小飼:あ、昼間ですか。確かに昼間なら見えないはずですね。

    山本:昼間は月面が太陽の光を反射しているから、星が見えるわけがないんですよ。クラークは『渇きの海』という別の小説で、ちゃんと「月面では昼間は星が見えない」とはっきり書いています。つまり、クラークはちゃんとそれを知っていたんです。あれは、監督のキューブリックが「宇宙はやっぱり星がないといけない」と思って、入れたんじゃないかな。

    小飼:あと、ディスカバリー号の当初の設定には放熱板があったんですよね。

    山本:そうそう、翼があった。

    小飼:でも「翼に見えちゃう」っていうことで、はしょられちゃった。

    ―――そうなんですか。

    小飼:小説の場合、明確に書くとボロが出そうなところは、あえてはしょるという手も使えますね。小説では「5万人の民衆」という描写も1行で済むけど、映画やマンガだと大変なことになる(笑)。

    山本:ただ、逆もあります。『シン・ゴジラ』のような大破壊シーンを、文章で書くのは難しいです。あれはやはり映像ならではの迫力ですから。

    『シン・ゴジラ』と『MM9』、怪獣モノのリアル

    ―――SF作品としての『シン・ゴジラ』はいかがでしたか?

    山本:もちろん、僕はOKですよ。だって怪獣モノだから、「怪獣は“いる!”」と仮定して見なきゃダメなんですよ。

    小飼:僕もゴジラ自体に関しては、納得できたんです。納得できなかったのは、政府の人たちの描写ですね。特に、石原さとみが演じた米国大統領特使のカヨコ・アン・パタースン。あの立場で、あの態度はありえない! あれを見て、僕は一発でさめちゃった。あそこはリアルに見せなければいけないのに、いかにもステレオティピカルな、日本の人が抱く「無礼な米国人」を出してしまった。 ただ、「そういう立場にいる人たちが、どういう態度をとるのか」は、まだ一般の日本人の常識にはなっていないのかなとも思いました。

    ―――山本先生ご自身も、怪獣モノの『MM9』を書かれています。『MM9』は、怪獣の設定にしても、対策にしても相当リアルに書かれていたと思ったんですけど。

    山本:リアルと言いますけど、けっこう手は抜いているんですよ。どこかというと、政治や自衛隊の対応といったあたりです。『MM9』の世界では「怪獣対策法」が存在していますから、「MM5以上の怪獣は、問答無用で攻撃してもいい」ということになっている。

    小飼:法的な問題はクリア済みと。

    山本:なんでそんな設定にしたかというと、「怪獣を攻撃するか、しないか」みたいな議論が面倒くさいので。そこを書いても、絶対に面白くならない。

    小飼:『シン・ゴジラ』では、その面白くなさそうな部分を、あえて売りの1つにしましたよね。僕からすると、「あのあたりがなければいいのにな」と思う。僕にとっては、あの映画の半分は、「余計ごと」でした。

    ―――ひどい(笑)。

    山本:ひどいなぁ(笑)。

    小飼:だって、どう考えても「ガキから見た、かっこいい働くオジちゃん・オバちゃん達」でしょう。 例えば、ゴジラを一度取り逃がしてしまうじゃないですか、あんなデカいモノを。でも、普通は政府とかが出て来なくても、生物学者がデータロガーを打ち込むでしょう。

    ―――確かに。

    小飼:それに、米軍がアフガニスタンとかで攻撃に使っている大きなドローンは出てきますが、観察用のドローンがぜんぜん出てきませんでした。もし怪獣が出現したら、小さなドローンがハエのようにいっぱいいっぱい飛び上がると思うんですよ。それで回線が逼迫して、ドローンがあらぬ方向に飛んでいくとかって方が、むしろリアルと言えばリアルかも。 あと、自衛隊が最初からゴジラを仕留める気でいるというのが、信じられない。戦車でもまず胴体を狙っていますが、あれだけの精度があるなら普通は脚を撃つのでは?

    山本:脚も撃ってましたよ。

    小飼:脚も撃ってましたけれど、本当なら脚ばかり撃つはずですよ。どうして地雷も使わなかったんでしょう。

    山本:地雷を埋めている時間がないですよ。ゴジラがどこから来るかわからないから。だから戦車で排除するので精一杯ですよ。

    小飼:そうなると、あの早さで戦車を展開できるのかな?っていう、別の突っ込みどころが。

    山本:だからそれは、海岸では無理なんですよ。海岸よりも奥に入ったところで待ち受けるしかない。あのへんは、けっこう頑張って設定を合わせてあると思いますよ。やはり戦車とヘリで攻撃しないと。

    小飼:僕も10式戦車が砲撃しているところを見て、素直に「あぁ、カッコいい!」と思いました。ただゴジラくらいの大きさになると、ズブズブズブって沈んじゃって関東平野を歩くことはできないでしょう。高層ビルを建てる人たちっていうのは、散々苦労して柱を立てているわけですから。でも、そういうゴジラが暴れるメインのシーンに突っ込むのは、無粋です。 僕にとって会議の部分は、「刺身のツマ」。だから、ずいぶん「ツマ」の多い刺身だと思いました。

    ―――キツイ(笑)。

    小飼:「そこがうまいんじゃないか!」って言われると、「俺はあまり刺身のツマは好きじゃないし」というだけ。

    ウルトラマンの世界を舞台にした『多々良島ふたたび』

    ―――山本先生は、ウルトラマンの世界を舞台にした『多々良島(たたらじま)ふたたび』という短編も書かれていますね。

    山本:これは、ウルトラマンの世界を舞台にしてSF小説を書くという、円谷プロと早川書房のコラボ企画です。おかげさまで、今年この作品で星雲賞を受賞しました。

    ―――おめでとうございます!

    山本:星雲賞というのは、ファン投票で決まる賞で、その日本短編部門に選ばれました。 多々良島は、ウルトラマンの『怪獣無法地帯』というエピソードに出てくる、怪獣がいっぱい住んでいる島なんです。そのエピソードの後日談として、もう一度多々良島に探検に行く話を書きました。レッドキングの死骸が、どうなっているか?とか。

    ―――コアなファン向けのスピンオフ作品ですよね。

    山本:ウルトラマンは昔の作品だから理屈にこだわっていなくて、子供の頃からいろいろと辻褄があっていないと思っていました。それをちゃんと理屈が合うように書き直してみたんですよ。 一番の問題が、「なんでガラモンとピグモンが似てるんだ?」という(笑)。

     
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