「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
今回は、8月7日(月)に配信した、フリーライター 赤木智弘さんとの対談テキスト(全3回)をお届けします。
- [小飼弾の論弾8/7「対談:赤木智弘さん @T_akagi 希望は今も戦争ですか?」 - ニコニコ動画](http://www.nicovideo.jp/watch/1504341790)
- [【会員限定】小飼弾の論弾8/7「対談:赤木智弘さん @T_akagi 10年間引きこもっていた人が働くには?」 - ニコニコ動画](http://www.nicovideo.jp/watch/1504342036)
次回のニコ生配信は、9月25日(月)20:00、脳科学者、茂木健一郎さんとの対談です!
- [小飼弾の論弾9/25「対談:茂木健一郎さん @kenichiromogi 脳科学が解明した、幸せになる方法とは?」 - 2017/09/25 20:00開始 - ニコニコ生放送](http://live.nicovideo.jp/watch/lv306037570)
お楽しみに!
2017/08/07配信のハイライト(その2)
- ロスジェネ世代の雇用や社会参加に対する支援は?
- みんなストライキをやっていい
- 異議申し立ては練習しないとできない
- 引きこもりの社会復帰のカギは、ポケモンGO?!
- トランプ大統領登場は労働者の鬱屈が呼んだのか?
ロスジェネ世代の雇用や社会参加に対する支援は?
山路:質問が来ています。
「今日は赤木智弘さんがゲストで、とても楽しみにしていました。赤木さんは、ロスジェネ世代の非正規雇用を指摘してくださいましたが、ロスジェネ世代の雇用や社会参加に対する支援はとても薄いと感じます。見て見ぬふりされている感じがする、と。弾さん、山路さん、赤木さんは、各個人ができそうだと思うこと、社会制度でこうしたら良いなと思うことがあれば教えてください」
赤木:僕は、仕事と、いわゆるロスジェネの問題をそんなに結びつけては考えてないんですね。ロスジェネというのは、そもそも仕事を得られないことで起きている状態なんですけれども、だからといって、それに対する雇用支援であるとか、そうした業務、なにか仕事を回すことによって、それを助けようという気はまったくしないんですよ。なぜなら仕事とは、結局のところ雇用者、あくまでも仕事を作る側が決めることだからです。それをいかにロスジェネ世代に仕事を回せと言ったところで、選ぶのは雇用する側であるという話ですから、まったくなんの意味もないんですよ。つまり、「働かせろ! 正社員にしろ!」と言っても、結局のところ、なにか国が企業に対して規制をするわけにもいかないですよね? だって、会社をやる側は、基本的には自由なわけですから。そこを批判するのは重要ではない。ましてや、最初から30歳が就職できなかった時点で、40歳の人も就職できない、さらには50代の人も、60代でもできないということは、最初からわかっていることなので。
そもそも、労働に彼らを就かせる、つまり労働問題として扱っている時点で、もう駄目なんですよ。だって労働に就けないわけだから。ロスジェネでそんなにいい仕事に就けないままでも、それなりに人生を満足して生きていけるかどうかが一番重要だと僕は思ったんです。
山路:つまり、今の仕組みというのは、人になんらかの仕事を与えて、その対価として金を渡すみたいな形になっているけれども、別にわざわざ仕事がないところに仕事を作ってやるという手間をかける必要はないんじゃないかという。
小飼:だからその辺をすっ飛ばしてタダ飯よこせと言えばいいんですよ。
山路:本当、ベーシックインカムの議論になってくるわけですよね。
小飼:そんな「働きもしないのに何だ」と言ったら指を突き返して「何を言ってるんだ、お前らタダ飯食ってるだろう」と。少なくとも、年金を受け取っている人たちには言えますよね?
山路:しかし、今、年金を受け取っている人や、割のいい(本人はそう思っていないかもしれませんが)給料をもらっている人たちであるとか。そういう人たちにとって、ベーシックインカムみたいな制度は、あまりインセンティブがないのではないでしょうか?
赤木:そうなんですよ。だから結局、下の人が良くなっても別に上の人は良くなりませんから、インセンティブはないんです。だから、そこで脅しのようなことを言う必要がある。つまり、そういう社会にしないと、貧乏になったやつらが暴れるぞという話になってきます。
小飼:やはり、基本というのか根本というのかは「俺をシカトするな」なんですよ。それをちゃんと言うべきなんです。だから「俺たちを無視すると痛い目に遭うぞ」と。こう言うのもなんですけれども、ある程度、痛い目に遭わせちゃってもいいと思います。
山路:また過激な発言を……。
小飼:とは言っても簡単なことですよ。これ前にも言ったけど、全国の介護士さんたちが、ストをすればいい。
赤木:ちょっと前にあった。すき家の牛鍋ワンオペ問題なんかも、あそこで従業員がみんな音を上げて、バイトが回らなくなったからこそ、改善を始めたわけですよね? だから、少なくとも、そのくらいのことはやらないと改善しない。つまり、自分たちがなんとか頑張って働けば、会社の人たちも自分たちを認めてくれるかもしれない、社会も認めてくれるかもしれないと思っている限り、やっぱり何も変わらないんですよ。うまいこと手を抜いたり、ちゃんと文句をいうことによって、少なくとも上の人間に痛手を与える。そうすると、ちょっとずつ変わっていく可能性はあると思いますね。
小飼:だから、その意味でご幼少のみぎりに受けた教育というのは、きついですよ。声を上げることが基本的に悪いことだと、小中学校では陰に陽に教えられるわけです。
山路:「何か質問ありませんか?」と先生に言われて手を上げたやつは、なんとなくクラスで浮いちゃう。
小飼:そうそう。だから、日本のカンファレンスとかだと質問したのは僕だけだったみたいなのは、いっぱいあるわけですよ。
赤木:それもまた団塊ジュニアだったというのも、すごく大きくて。やっぱりクラスとか人数が多いんですよ。まだ。40人学級とかのころですから。すると、やっぱりそうした中で騒ぐやつは、教師からすれば本当に邪魔なんですよね。個性だとか何だとか言っていられない状況で抑えつけるというのが前提でしたから。それはもう当然そういう教育になります。
「ヤマトもそうだよね、一気に動いた」(コメント)
山路:最初、ヤマトなどの宅配便が問題になったとき、よくみんなここまで大変な仕事をして、しかも賃金を上げろとか言わないんだと驚いた記憶があります。また、世間の反応というのも、「もうちょっとみんなサボタージュしてもいいんじゃない?」ではなく、「みんな宅配BOXを作って、配達員の負担を減らそう」という意見が出て、違和感を感じました。
小飼:文句を言うのは悪いことだという社会的圧力が、日本はとても強い国で。その点では中国人のほうが、強く抑えつけられてるからこそ、自由に発言します。
山路:まあ、政府の悪口は言えませんけどね(笑)。
小飼:いや、実際には言ってるんだよ。中国の悪口を聞きたかったら、日本人同士がお互いに言わずに、中国人に聞いたほうが、ワイルドで面白いやつが聞けるぞ。
山路:あとウェイボーのAIに聞いてみるとかね。
小飼:そうそう(笑)。
みんなストライキをやっていい
山路:赤木さんの書かれた『若者を見殺しにする国』は、まさに現場の人からの怒りの声だったわけです。これまでこういう問題を論座のような硬い媒体で扱うのは、大学教授だったり、すでに立場があるような人だったりしました。そういう人が、上から意見を述べたり、研究者として分析対象にしてきただけだった。
小飼:でも、すき家の偉い人は読まないから全然効果ないんですよ、インテリの人たちが、理路整然と問題を指摘したところで、必要なところに届かないんですから。
赤木:やっぱり効果があったのは、バイトがいなければ店舗が運営できなくなるという業績的な事実です。それがなければ改善はされなかったわけですね。
小飼:やっぱり僕は、牛丼チェーンとかコンビニとかもストライキをやっていいと思いますよ。フランスとかも、しょっちゅうやっているけれども、だからといって国として破綻しているわけでは全然ないですから。
赤木:最近僕が、不思議だなと思って聞いていたのは、コンビニの24時間営業に関する議論です。コンビニの深夜営業をやめようという人がいますが、そういう人は「みんなが使っていないからやめてもいいよね?」と許可を求めているんです。そうではなく、コンビニが一斉に店を閉めるとか、そういうことをやればいいじゃないですか? でも、そういうことを言う人はいなくて、深夜に店を閉めようとか、すごく何かに配慮したことしか、みんな言わないんですよ。