「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
2018年1月8日(月)に配信した、「小飼弾の論弾」の内容をお届けします。
- 小飼弾の論弾1/8「あらゆるデバイスがクラッキングされる!?IoT時代の超大セキュリティホール #Spectre と #Meltdown 」 - ニコニコ動画
- 【会員限定】小飼弾の論弾1/8 - ニコニコ動画
次回のニコ生配信は、2018年4月2日(月)20:00からのニコ論壇時評です。21:00からは通常の小飼弾の論弾になります。
「佐川氏証人喚問でもすっきりしない森友文書、5000万人のユーザー情報を不正利用されたFacebook」などのニュースを取り上げる予定です。
お楽しみに!
2018/1/8配信のハイライト
- ポプテピピック、どこが面白いのか?
- リアルが『デビルマン』の世界に近づいて来た
- 国のトップのアカウントは凍結しないTwitter
- 黒塗りメイクは人種差別か?
- MeltdownとSpectreの概要と、その恐ろしさ
- CPUとメモリの距離はどんどん広がっている
- MeltdownとSpectreへの対応策は?
- CPUの構造が変わると、作り手や使い手も考え方を変えないといけなくなる?
- みんな、コンピューターを買うべき!
- 次々見つかるセキュリティホール、対策は?
- 世界で進むマリファナの合法化の動き
- ゲーム依存症は病気?
- 児童ポルノの所持、本当の問題は?
- 非実在の存在に対しては、何をしてもよい?
- 大阪大学の入試判定ミスは、日本の大学運営の失敗を表している
ポプテピピック、どこが面白いのか?
山路:では最近、『ポプテピピック』というアニメが話題になっているということで。
小飼:これ、アニメになる前からずっと、話題にはなっています。
山路:正直なことを言うと、私もアニメ『ポプテピピック』を見たんですけれども、まったくわからなかったんですよね。これ、村上隆の新作アニメなんじゃないかと。
小飼:村上隆(笑)。
山路:あれはいったいどうやって楽しめばいいんですか?
小飼:冷静に考えてみるとパロディだらけなので、面白がるのが意外と大変な作品かなと。僕も、元ネタを全部知っているとは言えない。
山路:
私が見たところでは『君の名は。』と『蒼き流星SPTレイズナー』くらいは、わかったかな?
小飼:もろおっさんネタじゃん(笑)。
(略)
リアルが『デビルマン』の世界に近づいて来た
小飼:世界情勢が原作版『デビルマン』だとしたら、日本の政治状況は実写映画版『デビルマン』かな(笑)。
(略)
国のトップのアカウントは凍結しないTwitter
小飼:Twitterは今まで凍結ルールを明文化していなかったけど、政治家だからOKということにした。これは、納得できる、できないとかじゃなくて、それがTwitter社なんだと。それは肝に銘じておいた方がいい。
あくまでTwitterは一民間企業なんですよ。だから、CEOもかっこつけたようなことを言わなければいい。
FOXみたいなもんだと思っていればいい。そのFOXだって何もかもダメかといったら、『ザ・シンプソンズ』みたいな番組もある。要するに、ガンジス川みたいなもの。清潔さを期待してはいけない。
(略)
黒塗りメイクは人種差別か?
山路:12/31放映の「ガキの使い!大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」(日本テレビ)で、ダウンタウン浜田雅功の黒塗りメイクが人種差別行為ではないかと、世界的に話題になりました。
小飼:人種差別云々以前に、あの辺の連中はつまんないよね。
山路:表現として、どこまで気を遣わなければいけないものですかね?
小飼:少なくともそれで食っている人は、一挙手一投足まで気を遣うのは当然。でも、その気を遣うというのは、「これは放送禁止用語か」とか「クレームが付くのではないか」と気を遣うということではありません。「ここはあえて踏み込もう」とかそういうことまで含めていと言うこと。ちゃんとお金を取れるような、商売としてきちんと考えてくれと。正しいか間違っているか以前に、非効率的なんですよ。もしそういう表現がイヤなら、責めるべきは配信者ではなく、広告主です。
山路:それはYouTuberの悪ふざけにも関わってきそうですね。
小飼:そう、ただYouTubeがテレビと違って難しいのは、テレビの場合は少数の大企業が広告主のことが多い。YouTubeは広告主がダイナミックに変わる。
山路:最近だと、アメリカのYouTuberが富士の樹海で自殺者の遺体をネタにした配信を行って、顰蹙を買ったということがありました。
小飼:一番効くのは、広告主に文句を付けることだけど、YouTubeの場合はちょっと難しい。もし僕が配信に対して規制をかける当局者だとしたら、どの配信に対してどれだけ広告が出稿されたのかを明確にしろ、と命令しますね。
山路:ちゃんと文句の付け所がわかるようにしろと。
小飼:そうそう。今は次善の策として、YouTubeに「このアカウントをのさばらせるな」という方向に向かっているみたいですけど。
YouTubeに文句を言うことを「表現の圧殺だ」という人もいるけど、僕はYouTubeといったクラウドプラットフォームを経由したものに関しては、テレビと同じかテレビ以上に圧力をかけても問題ないと思う。だって、いざとなったら、配信したい人は自分でサーバーを立てて配信できるんだから。それがインターネットでしょ? そこの自由は、制度的、法的だけでなく、技術的にすら担保されているんですよ。そういった状態で、クラウドから干されたとか生ぬるいことを言うなよと。
山路:やりたいならプラットフォームに頼らず勝手にやって、勝手に干されろと。
小飼:その通りです。もし不快なモノがあったら、プラットフォーマーに圧力をかけるのは全然アリです。
山路:Appleは、エロなどのコンテンツに関してものすごく敏感ですよね。
小飼:そうやって圧力を掛けられることを察しているからですよ。もしユーザーが気に入らなければ、ユーザーはAppleのストア経由ではなく、Webブラウザを使って自由にコンテンツにアクセスすることもできる。それはプラットフォーマーとして正しい姿なわけです。
(略)
MeltdownとSpectreの概要と、その恐ろしさ
山路:Intelのプロセッサにバグがあって、本来だったら読み取られるはずのないパスワードとか、そういうものを読み取られてしまう脆弱性があるという報道が出た。対して、Intelも含めた業界団体が、「それは報道が微妙に間違っていますよ」と。
小飼:実は問題はもっと深刻です。
山路:Intelの責任以上にもっと大きな話だったと。このセキュリティーホールには、「Meltdown」と「Spectre」という名前が付いているわけですけれども、ではそれはどういったものなのなのでしょう?
小飼:どちらも共通はしています。キーワードになるのは、アウト・オブ・オーダー実行と投機的実行、キャッシュの3つですね。
例えば、「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました」という話がありますよね。これは「おばあさんとおじいさんがおりました」と順序を入れ替えても、話の内容というのは変わりません。それなら、同時におじいさんとおばあさんがポーンと乗ってもいいわけですよね。今のCPUというのは、なるべく同時にできることは同時にやりましょうというやり方をしています。
(略)
小飼:もうひとつ重要なのが、投機的実行という概念です。これはわれわれも、特に仕事ができる人ほど“こんなこともあろうかと”よく行っています。
例えば、秀吉が信長の草履を暖めていたというのも、まさに投機的実行なわけです。もし信長が草履履くのをやめたら、それは無駄になってしまいますが、無駄になったところで、特に問題は無いわけですよ。
山路:たいした手間じゃないですもんね。
小飼:あらかじめやっておいて、必要なかった場合は、とりあえず無視しちゃえばいい。ところが、無視しちゃいけない場合というのが出たわけです。それがキャッシュメモリなんですよ。
山路:それがどういうふうに関わってくるんですか?
小飼:カーネルがやったことを、ユーザープログラムには直接見られてはいけないわけですよ。例えば、テーブルがメモリだとして、「僕が『HUNTER×HUNTER』32巻を取って来ました」「その投機的実行の結果、『HUNTER×HUNTER』32巻がキャッシュメモリに乗りました」でも、やっぱり必要なかったという場合になにが起こるかというと、なにもしないわけです。しかし、テーブルの上に乗っかったままなので、そこの棚にあるはずの『HUNTER×HUNTER』32巻をほかのだれかが読めちゃうわけですよね。