「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
2018年1月22日(月)配信の「小飼弾の論弾」のハイライトをお届けします。
次回のニコ生配信は、2018年5月7日(月)20:00からのニコ論壇時評です。21:00からは通常の小飼弾の論弾になります。
お楽しみに!
2018/1/22配信のハイライト
- 大雪のたびに混乱する東京。本当の問題は?
- YouTubeは、「インフラ化」を進めてほしい
- 動画配信プラットフォームが明らかにすべきは広告主
- セクハラ問題の背景にあるもの
- MeTooとAffirmative Action
- セックスの合意確認にブロックチェーン
- 仮想通貨は偽造にとどめを刺した
- フランスに徴兵制復活の動き
- 日本の入試制度の問題点
- 5Gの携帯電話、実用化間近
- CESのような見本市はもはや時代遅れ
- 細菌で「自己治癒」するコンクリート
- 電子レシートの標準規格
大雪のたびに混乱する東京。本当の問題は?
小飼:仮想通貨の暴落とかいう話が出てきますが、とにかく大雪。今日、「北から目線」という言葉を覚えました。うまいこと言うなあ(笑)。東京に雪が降っただけで驚いてちゃいけない。カリフォルニアの人はちょっと雨が降っただけで。
山路:東京はもっと雪に備えるべき?
小飼:例えば、札幌に東京に毎年来る台風への備えをしてもしょうがない。
今回にしても、たまの雪なんだから、みんな休めばいいんです。
天気予報の精度も上がっているし、それをネットで知ることもできるようになった。うまくかみ合ってきているとは思います。昔だったら、同じ天候でももっと帰宅は遅くなっていたかもしれないし、自宅で仕事してくださいとも言えなかったはずだし。
それなのに、どうしても「帰宅しなきゃ」と集中してしまう。
YouTubeは、「インフラ化」を進めてほしい
山路:バーチャルユーチューバーが流行っています。
小飼:全AIにしてほしいよね。AIがやっている番組に対して、我々も一視聴者としてコメントを入れることになるわけです。
山路:収益はどうなるんでしょう? 誰のところにお金が行くんですかね?
小飼:その番組を持っている人ですよ。AI化が進んだら、結局上がりというのはオーナーです。
山路:ユーチューバーで稼ぐのはどんどん厳しくなっていると聞きます。
小飼:バーチャルだろうがフィジカルだろうが、胴元は強い。YouTube自体にはしっかり収益が入るという。
なんだかんだいってみんながYouTubeを使うのは、動画配信のインフラストラクチャとして一番ずば抜けて優れているからでしょ。そこだけ使わせてくれないかな。
Google自身もGCP(Google Cloud Platform)を持っているじゃないですか。そこにAPIとしてYouTubeを使えるようにできないのかなと思います。そうすれば、そこに配信者が自分で広告を引っ張ってきてもいいわけじゃないですか。
山路:配信者がGCP上にそれぞれ自分用のYouTubeを立ち上げるイメージですね。
小飼:そうそう。どの程度にYouTubeにおんぶに抱っこかを選べるようになればいいと思います。インフラだけ欲しいのか、広告主とのマッチングまでやってくれるのかとか。
山路:ニコニコも……。
小飼:そう!ドワンゴもとっても楽になる。自分のところで動画配信のサーバーを持たなくて良くなるから。
山路:昔、ニコ動はYouTubeに乗っかるサービスでしたが、一周回ってまた乗っかるという(笑)。
動画配信プラットフォームが明らかにすべきは広告主
山路:YouTubeは、自殺者の遺体映像を投稿した有名ユーザーとの提携関係を解除したそうです。でも、アカウントを削除したわけでもないんですよね。
小飼:動画配信プラットフォームとしてはああいう愉快犯も一応は受け入れざるをえない。なんでみんな怒っているかと言えば、どっさり広告収入を上げているから。広告を流すものに関しては、どこが広告を出しているかをわかるようにしてほしい。
山路:文句もつけやすくなる。
小飼:そうそう。
セクハラ問題の背景にあるもの
小飼:この社会においては、男女のオーナーシップの格差が大きい。「これは私のもの」と言える部分が、女性の方がずっと少ない。少なくとも働く場としては、映画という仕事は男性と女性がイコールであるはずなんですよ。俳優に関してはギャラはともかく、スクリーンに占める割合としてフィフティフィフティになってきているけど、この作品が「誰のものか」となった時に、女性の名前が出てくることが本当に少ない。
オーナーシップを振りかざして、だから本来その人に属するべき功績を取っちゃうっていうのは、本当に悲しいほどどの分野でもあるんですよ。科学の世界ですらそうですよ。
対称性の破れを実験で示したチェンシュン・ウー(呉健雄)さんのケースもそうですね。
山路:女性監督というだけで話題になったりするわけですからね。
ハラスメントが横行する状況というのは変えていけるんですか?
小飼:特効薬はないけれど、対処療法はある。自分が不当な扱いをされていると思ったら、それを告発するという。でも、告発において重要なのは、告白者をとがめないこと。「お前もセクハラしているだろう」とか。
MeTooとAffirmative Action
小飼:MeTooとAffirmative Actionの絡みだと、『ミスター・ソウルマン』という映画ありまして。白人の金持ちのボンボンがハーバードロースクールに受かったと。学費を親が出してくれると思っていたら、出してくれなかった。そこでボンボンは黒人だけがもらえる奨学金を得るために、黒人のフリをしようとする。その頃からどれくらい世の中が進んだのか考えさせられます。
セックスの合意確認にブロックチェーン
山路:セックスの合意確認にブロックチェーンを使う、というニュースが出ていました。
小飼:それって、承認に時間がかかりすぎないですか? せっかく相手に「承認」をもらったのに、ビットコイン並みに時間がかかると……。あと誰が「掘る」んだ?(笑) PoWをそのまま使うわけでないにしても。
まあ、コントラクト(契約)に対して、ブロックチェーンほど頼れる仕組みはないんですよ。みんなが契約書のコピーを持っているわけだから。
この合意確認が、スマートコントラクトだったら面白いですね。
山路:どんなことになるんですか?
小飼:スマートコントラクトというのは、ある条件が満たされた時だけにそれが実行される。入金がなかったら、その合意はなかったものにできたりするわけです。
セックスの合意はともかく、婚姻届にブロックチェーンはかなり向いていると思います。
今でも婚姻届は24時間受け付けられるようになっているじゃないですか。民法的に結婚は非常に大きな意味を持っているので。「誰と誰」だけでなく「いつ」というのもはっきりわからないといけない。
山路:ただ、ブロックチェーンで婚姻を記録できるとしても、それを国家が採用しないと意味がないのでは?
小飼:結婚という制度自体は近代国家よりも古いんですよ。結婚を国家が追認したのであって、国家ができたおかげで結婚が出来たわけではないじゃない。
山路:どこかのサービスが、ブロックチェーンで結婚を記録するサービスを始めて、それを誰もが使うようになったら国家の方も認めざるをえなくなるかもしれませんね。
小飼:あと、日本だと婚姻しか登記しませんが、イスラムの結婚だと「何がOK」、「何がNG」という条項も記録する。
「イスラムは夫婦でも、財産は個別化」(コメント)
山路:へえ、かなり先進的ですね。
小飼:イスラムから、婚姻のブロックチェーン化が始まったりしてね。
山路:ビットコインは認めないというファトワが出されたとも聞きますが。
小飼:誰が出したかにもよりますね。イスラムと一口にいっても一枚岩ではないですから。