「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2020年10月13日(火)配信のテキストをお届けします。

 次回は、2021年02月16日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2020/10/13配信のハイライト

  • 塗るゲー『テクテクライフ』とOculus怖い話
  • Google VS Oracle問題と「通信アプリのバックドア」問題について
  • MMTの「貨幣の総量と経済規模の一致」という意味
  • MMTから考える「日銀マネーサプライとベーシックインカム」の関係
  • MMTと税金と循環器の関係
  • 「金使いが荒い」映画『TENET テネット』と学術会議問題についての感想
  • ノーベル賞をゲットするテクニック
  • 新刊本のタイトルについて打ち合わせ

塗るゲー『テクテクライフ』とOculus怖い話

山路:限定の方でTENET テネットのほうの、ちょっとレビューというか多少ネタばれありの感想戦、行きますかね。タイトルになってるMMTも後の方で取り上げたい。弾さんはちなみにMMTの理論の方っていうのは前からよく知ってたんですか。

小飼:前からよく知ってたというよりも、やっとまともな結論にたどり着いたかっていう感じがしますね。
 MMTって呼び名はけっこう正しかったかなっていう風に思いますね、そうやって考えると。MMTのMってModernでしょ。

山路:ようやく中世、昔の段階から脱して。

小飼:じゃあそれ以前はどうだったとか、その辺のところというのはまあその話をする時に。

山路:了解。じゃあ最初はですね、なんかと最近暗い話とかが多いので軽めの話題はないのみたいなことを前も言われたり、

小飼:山路さんがいつも軽めって言うと、けっこうそれもどうかなみたいな

山路:じゃ(笑)、さすがにこれより軽めの話題はないんじゃないですか。

小飼:軽めのテレビアニメ『ぼくらの』とか、そんな感じだよね(笑)。

山路:『ぼくらの』、私も好きですけどね。『テクテクライフ』、『テクテクテクテク』が去年、あれ去年か、終了してからまた復活して戻ってきますよって言ってたのがようやく、ちゃんと本当に戻ってきたっていう。

小飼:ひたすらヌルゲーみたい。まあこの場合は簡単という意味のヌルではなくって、

山路:地図を塗るほうの

小飼:地図を塗りつぶす方の塗るゲーですね。

山路:私もちょっとやってみたんですけど、これハマるやばいと思って、封印してますけどね。

小飼:けっこう今のところが、まったりやってるというのか、前回の結果を

山路:『テクテクテクテク』を?

小飼:そう、リロードできるって言うのはあるみたいなんだけど、まだそれやってない。

山路:あれっ、やってない、相当やりこんでたじゃないですか。

小飼:相当やりこんでたからこそ、前とルールが違うのね、たとえばその隣塗りのためのがポイントが自動でどっさり入ってくるとかっていうこともなくなったとか。
 だから何て言えばいいのか、やっちまったというところをやらないようにやり直してるというのか。

山路:コメントで「地理の勉強に使えそう」ってあるけど、地理と言うにはちょっと細すぎるような気もするかなあ。

小飼:そうですね、あとやっぱり地図のデータというのは時とともに変わってて、うちの近所でも具体的に月島なんですけれども、駅からもんじゃ街に行く所の入り口ぐらいのところで、高層マンションに立ててるところがあるんですよね。そこの部分っていうのがまだ街区が分かれてたりとか

山路:でもさすがにそれとかなかなか追従するのは大変そうだけどなあ。
 ちょっとやってみたんですけど、いちいち塗るときにフィードバックあるじゃないですか、あれめちゃめちゃ気持ちいいですよね。

小飼:確かに。

山路:塗ってる感が。

小飼:確かに、新しめって言っても、もう今のだからiOS14対応してるやつというのは全部全部Taptic Engine効くのか。

山路:あれはけっこう癖になりそうなだと思うんだけど、ただ、このアプリを起動しなくても記録してくれるとか、あのへんのところが課金になってるのがうまいなと思いました。

小飼:そこの部分っていうのがちゃんとか実装されてるのかな。ちゃんとアプリ側でそれのオンオフができるんですね。で、オンにしとくとちゃんとバックグラウンドで記録してますよっていう、まぁ要はiOSの場合っていうのは左肩に、青いやつがつくようになってます。ちゃんとその辺の所っていうのも。

山路:『ポケモンGO』と一緒に並行して、もりもりやる感じなんですか。

小飼:そうなんですよ。『テクテクライフ』の方がバックグラウンドで、後でやれるって言うのがあるので、それでバックグラウンドにしといて、後は表で『ポケモンGO』か『ハリー・ポッター』をやってるかっていう、そんな感じですね。今位置ゲー三つあるので、ちょっと忙しいかな。

山路:なにで忙しいんだかな(笑)。モバイルバッテリーとかないとなんかモリモリ電池食いそうですけど。

小飼:まぁでも今のiPhoneってかなりもつので、それでもまあいちおうモバイルバッテリーは一つは持ち歩いてるのか。
 だから小林幸子とかの戦闘要素が無くなったのは嬉しいですね。僕は戦闘大っ嫌いなんで。ポケモンとかも、どうしてもこれは戦闘しないと先に進めないっていう時だけしか戦闘しないので。

山路:あれはなんか今回の『テクテクライフ』、英断かなと思いましたけどね。

小飼:英断だと思いますね。

山路:もう一つ、ゲームと言うか、ゲームだけじゃないんですけど、OculusがOculus Quest2を。

小飼:そう、だから一部到着し始めてるみたいで。

山路:あ、そうですか。私も買って、明日到着という。本当は今日持ってこようと思ったんですけど。

小飼:明日以降は山路さんとFacebookで連絡が取れなくなるから、そこをちょっと気をつけないと……

山路:あの、新規でFacebookを登録してOculusを使おうとすると弾かれる? 新規で登録した人は……

小飼:いや、でもルールわからないんだけど、とにかく異常な数の人がFacebookのアカウントbanされているというね。

山路:今ようやく音直ったのか。

「山路さんガジェット好きね」(コメント)

山路:確かに私、けっこうそういうものは好きですね。あまりゲームはやりこまないんだけど。

小飼:あれもFacebookのアカウント必須っていうのは、あれはちょっとやっちまった感があるよな。というのも、iPhoneもiCloudアカウントがないと非常にいろいろ不便になるんですけど、それでも使えはしますからね。これはAndroidにしても同様ですよね。

山路:これQuestの評価にも大きく関わってきちゃうんじゃないかって気もするんですけどね、Facebookのやり方って。あ、いつもの感じの音だ。音の方はもう大丈夫そうですね。コメントで「OculusでAV見ようと」って、いやけっこうちゃんと気を付けた方がいいですよ。

小飼:Facebookというのはけっこうカジュアルにアカウントbanしちゃうので、だからアダルトビデオとかをOculusで見てて、それを実況中継したらそれが原因でアカウントbanされるなんていう可能性っていうのはものすごいありますよ。ものすごいありますよ。

山路:なるほどな、アプリの方の審査とは別に、そういうところでのやつも関わってくる気がする。

小飼:けっこう、今回のアカウントbanの話はアカウントbanだけで済むのかと。Oculusで何をやってるのかっていうのはFacebookに筒抜けじゃないですかと。具体的にFacebookは何をしませんっていうのは明らかにしてるの? Facebookのアカウントは必須だとしても。どの情報を抜くとか、どのアプリを見てるとか、どのコンテンツを視聴してるとか、どのゲームをやってるとかっていうのはFacebook全部収集してるんじゃないですかと。

山路:それ明らかになるまでAVは止めといたほうがいいかもしれないですね。

小飼:そういうこと。

山路:うわ、怖くなってきた(笑)

小飼:あるいは慎重に捨て垢を作って。

山路:いやーけっこう皆さん、それを楽しもうと思ってた人にはなかなか怖い話であります、本当に用心して頂きたいということですね。もう一つのITの話が出たところで、AMDの話行ってきましょうかね、もう最近AMDがRyzenの新しいものを

小飼:というのか、インテルがちょっと不甲斐なさすぎてなぁ。

山路:結局、今までゲームなんかに関してはIntelのCPUの優位性もあったんだけど、それも今度のRyzenで上回ってきたという。

小飼:だから、もうIntel全くかなわなくなってると言うね。

山路:こんなこんなことが10年前にはぜんぜん予測ができなかったんじゃないかと。

小飼:はっきり言って、iMacとかMac ProもRyzenにして欲しいもん、俺。はっきり。

山路:その前にもうArmになっちゃいますけどね。

小飼:いや、でもしばらくはIntelのやつも、Intelアーキテクチャも使い続けるはずで、特にハイエンドほどそうのはず。Mac ProとかがいきなりAppleシリコンにするっていうのはかなり難しいというのか、Appleシリコン、一つはAppleの側から見ての欠点っていうのはMac Proみたいな数がはけないもの専用にはしにくそうだなっていう。

山路:言われてるのが2年かけてAppleシリコンに全面的に移行するって言うけど、その終わりの方に、2年ぎりぎりところでハイエンドのそういうAppleシリコン持ってくるんじゃないかみたいな。その繋ぎとしてIMDとか。

小飼:どうなんだろうね、そこは。

山路:GPUとしてはAMD使ってますもんね、Appleは。それは別に契約的に問題はなさそうな気がするんですけど。もう一つ、このVSの話。今度はGoogleが……

「まだIntelで消耗してるんだ」(コメント)

小飼:そういう話だよね。

Google VS Oracle問題と「通信アプリのバックドア」問題について

山路:こっち、Google VS Oracleという。

小飼:これなぁ、いつから続いてるんだっけ、この話。

山路:これってGoogleがAndroidのOSを出そうとした所あたりと考えていいんですか。

小飼:うん。Androidが出たのが、Android自体はiPhoneよりも古いもんね。

山路:その当時はまだそのフルタッチのものではなかったですけどね。で、結局JavaをOracleが買収したんだけれども、SunのOracleの権利までOracleが買収した。

小飼:そうそう。なんだけども、AndroidのアプリというのはJavaというのか、まぁJVMで実行されるんですけども、でもそのJVMもオーセンティックなJavaのvirtual machineではなくて、それ用にGoogleが半分書き直した。GoogleというよりもAndroidに参加してる、Googleはじつはアンディ・ルービンごとAndroid社を買ったという

山路:あ、その時点の問題なんだ。

小飼:その時点でアプリはJVMで動くようにしてて、これがJavaのライセンスに抵触するんじゃないかっていうのがきっかけだと思いますけど、10年以上この話してるんだよね。まだ決着がついてない。

山路:これって弾さんから見てこの問題ってのはどっちが悪いっては明確なんですか? そうでもない? ポイントがいまいち……

小飼:いや、なんでこんなとこにJavaを使ったのかっていう。だから、そこがそもそも間違いのもとのような気がしないでもないんだけれども。だけど、確かに当時まだ海のものとも山のものともつかないもので、とりあえずアプリを作りましょうって言った時にじゃあ、どんな開発環境用意すればみんな来てくれるかなって、その時は確かにJavaという選択肢はまあ悪くなかったんじゃないかな。なんだけれども、勝手Javaだったんですね、勝手Javaって言うのも変な言い方だけど

山路:勝手Java(笑)。Javaのエンジン自体を、エンジンというのか、そういうJVM自体を移植しようと……

小飼:それは問題ない。それはもう、著作権法上も問題がなくて、クリアされてて、判例を出てますね、それは。Oracleもそこは競ってない。今回、競ってるのはAPIそのものなんですね。なんだけども、これもちょっとOracle筋悪いって、筋悪というよりも牽強付会じゃないと思うのは、まさに似たような言い争いというのをIntelとAMDもやってるわけですよ。

山路:えっと、x64の話? ではなくて?

小飼:x64の前の、x86ですね。要するにx86のインストラクションセットそのまま動かすようにするというのは、要はABIをパクってるんじゃないかと。なんだけれども、結局そこはABI自体は著作権の、保護の対象でありませんと。

山路:ABIというのはApplication Binary Interface。

小飼:要は、どのコードがどの命令に対応してるというやつですね、はい。たとえば16進法で80であれば、これリターンなんだったっけな、要はアセンブリの表というのは、著作権の対象でないと。なんだけども、Javaの場合というのはそれよりも複雑なわけですよね。最低限、Javaを動かすためには、これだけのライブラリが必要ですと。これUnixの世界でいる言うと、libcみたいなもんですけどもね。

山路:基本のそういうライブラリ、libcって。

小飼:そうそう。だから、それは著作権の対象じゃないかと。それを勝手に使ってるGoogleは許さん賠償しろ、というのがOracleの主張ですね。

山路:それにしても、ITの業界で10年とかそんな争ってるものって、結局もうそもそも意味なくなってしまいませんか、決着着く頃には。そんなことないんですかね? けっこう重要な問題になりそうでしょうか。

小飼:そうですね、争い続けてた方がだから、仮に有利な判決を得たとしても、もう換金する機会というの失ってるというのは多い……

山路:下手したらその頃にはGoogleも分割されてたり(笑)

小飼:さすがにさらにそこまで伸びるっていうな考え方難いけど、きっちり判決出して欲しいですよね、だからそこは。

山路:ソフトウェアの著作権的なものの範囲に関わってくる話ですもんね。

小飼:別の言い方すると、たとえば壁のどこら辺にスイッチをつけるとか、そういう話でもあるんですよね、APIの著作権というのは。たとえば腰の高さに手すりを付けるというのは、著作権法違反? っていう、そういう話なんですね。

山路:そう言われるとちょっとわかりやすいですね。もう一つIT絡みで、これけっこうびっくりしたんですけど、どうですか。IBMが分社化。

小飼:びっくりか……というよりも

山路:そうでもない? (笑)

小飼:いや、ま、でも分社化という手法は驚くべきかな。でも、IBMってけっこう今までも事業ポートフォリオの取捨選択はしてきたわけじゃないですか。PCも捨てちゃったりとかね。

山路:大型コンピュータやってたのが、もうサービスというかそっちの方に力入れてくよみたいなこと言ったりとか。

小飼:ま、だからこそ、何と言えばいいのかな、こじんまりとした会社になっちゃったのかなっていうところはありますよね。だから、確かに事業を取捨選択してくっていうのは営利企業としては正しいんですけれども、でも何と言えばいいのかな、それ自身では儲けを出してはいないけれども、儲けを出す部門へのファンネルになってる、手がかりになってる事業っていうのはあるじゃないですか。僕PCとかっていうのはまさにそれだったと思うんですよね。

山路:Googleにしても、それこそGmailとかYouTubeとかもうGoogleマップとか、そんな……

小飼:いや利回り、利益率で言ったら、BtoBの方がBtoCよりもぜんぜん美味しいんですよ。かつてIBMはPC部門を通してBtoC部門を持ってたわけです。今はないわけです。僕はMicrosoftも他人事ながら、老婆心ながら心配してるのっていうのはもう明らかにBtoB寄りの会社になってきてますよね。

山路:今儲かるところに注力しすぎてるっていう。将来的ななんか布石になるかもしれないものを落として。

小飼:逆説的にもなるけれども、儲けが出るところが売り上げをあげてそうでもないGitHubとかをちゃんとやってるとかっていうのは、そこはまぁまだ見込みがあるのかなとは思いますけれども。BtoC部門で強かったところがBtoBに走り出した場合っていうの、けっこう要注意なんですね。Oracleみたいに最初からBtoBの会社なら、まぁでも最初からBtoBと言いつつ、個人にOracleを売ろうとしてた時期もありましたよ。

山路:本当に?

小飼:あったあった。

山路:あー、それって90年代とか

小飼:そうそう。

山路:それ、でも10万とか20万とか、個人としてはけっこう高かったような、値段が。

小飼:そうそう。でもAdobeみたいにそれで成功しちゃった会社もあるわけじゃん。だから、個人に何十万もするソフトウェアを売りつけるのに成功したという会社もあるわけよ。

山路:今なんか月6000円のプランですもんね。Adobeなんて、最低でも。すごいなぁ、それで儲かってるわけだから。じゃあ、ビジネスというのとちょっと違うんですけれども、もうちょっと深刻なIT企業にまつわる深刻な問題、このファイブ・アイズとかあと日本ですね。

小飼:と、インドだっけ。

山路:ですね。そういう7ヶ国がIT企業にmessengerソフトなんかも含めた、そういうコミュニケーションソフトとかそういったものに関して通信のバックドアを設けるように要請したと。

小飼:ふざけんなと、だから言いたいんだけど、まぁでも気持ちはわかるよ。

山路:うん、テロが起こった時、じゃあどうやって犯人を手がかりを得るんだとかそういう風に言われると。

小飼:いや、でも政府だから間違ったことをしてませんというのを、どうやって担保するんだと。それをちゃんと出せますかと。はっきり日本なんて論外ですよ。バックアップ、原本でないんだもん、そんな寝言みたいなこと言ってるところにこれやらしたら、本当に何されるかわかったもんじゃない。だから、本当にこう言っちゃなんだけれども、本当に少なくとも日本は引っ込んでてほしいね、これは。

山路:国がまず自分の襟を正すのが先だと。

小飼:襟を正すというよりも、国が正しくバックドアを開けるためのprocedureというのを設計してないじゃないですか。アメリカは曲がりなりにもあるんです。たとえば機密指定をしたら、未来永劫機密というのはできませんと。だから、どんなに遅くても半世紀後には開示されます。というような制限を設けてるわけです。ちゃんとした制限を設けてるわけですよ。それこそもう、たかだか花見の名簿でも、黒塗りをやるような国が何がバックドアだよ。本当に。

山路:最近、ロシアですらその辺の記録はちゃんととってて、シベリア抑留者の感想文みたいなのが大量に見つけたのが、そんなようなこと出てましたけどもね。

小飼:そうそう。まぁでもそれをきちっとやったとしても、あらたに暗号を設計されて使われちゃった場合っていうのは、どこがどう取り締まるんだろうねというのも。だって、暗号化の方法そのものもソフトウェアである以上は、誰もが書けるわけだよね。それを書いてたから使うのに、今のところ新しいソフトウェアを作った時に、それそのものをリリースしていいかとかっていう許可は別段要らないんですね。たとえば会社の中で給料もらいながら書いたものというものを会社に無断でっていう風に言ったら、それは後で咎められるかもしれないですけども、はい。
 だから、こんなことでやらせるよりも情報の持ち主の口を割らせる方が早いんじゃね? 実際問題としてね。

山路:もう本当に、従来通りの警察の捜査でやった方が早いんじゃないかっていう。

小飼:そうそう。口を割らせた方が早いんじゃないか。

山路:これにちょっと関わるかもしれないんですけれども、これはGoogle、特定の住所を検索した人のIPアドレスを警察に提供するように、という風な。

小飼:それはどこの話? 中国じゃなくて?

山路:特にアメリカでセレブの住所を調べてストーカーになるような人がいるというような、その容疑者を絞り込むってことなんですかね。これはどうなんでしょう。それこそさっきの通信の秘密的な話をしたところで。

小飼:どの程度実効性があるのかっていうのも、こう言うのもなんだけど、用意周到な奴ほどIPアドレス程度では足跡たどれないないよって言う。Torもあるし。

山路:じゃあ、これって調べる側に調査機関側にリテラシーがなかったら、誤認逮捕とか冤罪とか作るだけじゃないかっていう。

小飼:まぁそういうことだよね。

山路:そうか、Googleの問題だけではなくて、そっち側のリテラシーが十分かどうかも問題になってくるっていうことか。

「ターミナル分けてIPアドレス調整」(コメント)

小飼:そうでなくて、やっぱりTorとかになるね、主眼というのは。

山路:この暗号化ソフトと呼べばいいんですか、暗号化……

小飼:要は自分の居所を悟らせない、暗号化ゲートウェイをいっぱい作って……

山路:ダークウェブなんかで使われてるプロトコルでしたっけ。

小飼:ダークウェブでもよく使うんだけれども、まあ要はIPアドレスから自分の位置がバレないようにするためのソフトです。

山路:「Onionちゃんねる」あー、なんかOnionブラウザでなんか見るような、そういうダークウェブ側のやつですね。じゃあもう一つ、これかなりちょっと驚いたと言うか、これはNVIDIAの発表なんですが。オンライン会議用のなんですけれども……

小飼:要はある意味、リアルアニメというのか、アニメ用の素材をあらかじめリアルに作っておいて、AIでリアルなアニメを生成すると技術ですね。

山路:結局、言ってみたら自分で自分のガワを被るみたいな。

小飼:まぁそういうことですね。

山路:ユーチューバーのガワを自分で被る。で、なんかすでにiOSなんかのFaceTimeでも使われてるんでしたっけ、この視線とかを確かカメラを向いてなくてもカメラ向いてるみたいな風に視線をちょっと調整する

小飼:そうでなくて、じつはですね、動いてる部分だけを検出してその部分だけの情報を送るというのは、デジタル動画のプロトコルでは必ずやってるんですね。MP4でもH265でも。来たるべきAV1でも必ず行ってるんですけども、でもあくまでそれというのは静止画像でdiffを取ってるんですね。でもNVIDIAが今度やってるやつというのは、それも実画像で差分を取るんではなくって、実画像で動きだけとっておいて、それを送信先では、動きだけ送っといてそれを動きに合わせて絵をAIで生成してしまえと。

山路:アバターを動かして。

小飼:そうそう。だから、こう言うのもなんですけれども、普通の動画ファイルというのはいくら圧縮しても元絵の元データというのは、元絵が元になってるんですけども、NVIDIAのやり方というのは生成しちゃうんですよね。だから、悪く言えばでっち上げちゃうわですよ。だから、セルフディープフェイクなわけですよね。

山路:これ、まだたとえば一対一の知り合いとのコミュニケーションなんかでそれ使うのっていうのは特に問題になるケースはないと思うんですけれども、それこそたとえば取材だったりとか

小飼:さっきのあのAppleというのか、iOSで思い出した。アニ文字ね。

山路:あ、私が言おうとしたのは、カメラを見てるかのように視点をある程度調整する、画像を調整するっていう……

小飼:ああ、いやでもそれどうなんだ、NVIDIA方式なのかな。

山路:ちょっとそれは技術的な……

小飼:VTuber方式なのかな。

山路:……分かんないですけども。で、そういう風にたとえば取材とかでそういうNVIDIAの技術が使われてた場合、相手がどう答えたみたいな事っていうのが、たとえば取材した側はそれをリアル画像だと思っても、それが生成された画像ってことも十分にあり得る。

小飼:そうなんです。だから極端に言えば、VTuberのガワの元データというのがたまたま自分だという。極端な言い方をするとね。

山路:これって、そのうち問題になってくることがあんじゃないかなって気がしてならないんですけどね。

小飼:絶対impersonation出ると思うんですよね。要はなりすまし。

山路:こういう技術が、それこそパジャマ姿だけどスーツ着てる自分みたいな風に見せる程度だったら可愛いもんだと思うんですけれども、自分だったら。

「この弾さんと山路さんはホンモノか」(コメント)

山路:これ、生成だったらけっこう凄いですよね(笑)。NVIDIAでもまだここまでは。

小飼:じつはAIでやってます。

山路:意外に私らは楽してるかも

小飼:いつもうまくいくとバレやすくなっちゃうんで、さっきは音をいじらせていただきました。

山路:いやないじり方をするな、そこでいじるんだ(笑)

小飼:へへへ。

山路:本当にディープフェイク、ディープフェイクって言ってそれはなんか……

小飼:いや、でもディープフェイクっていうんのはいい言葉を見つけたよね。ディープラーニングに対してディープフェイクか、なるほどなあという。

「本当は宇宙人だった」(コメント)

山路:なんかはっきり言って、これをもっといろんなビジネスに利用してくる奴も多いんじゃないかなって気がします。ちょっとエロ系のビジネスなんかで真っ先に利用されるんじゃないかという気もするんですけどね。

小飼:いやぁ、Oculusですよ、それでやりすぎた途端パッツンってなるわけですよ。だからAIでAIをbanするわけですね。

MMTの「貨幣の総量と経済規模の一致」という意味

山路:いやぁなんかこうオープンソースなバーチャルVRヘッドセットとかもうちょっと出てきてもらいたいものですね、安心してエロとかを楽しめるように。

「俺は美少女になりたい」(コメント)

山路:その欲望は多かれ少なかれ男、あるんじゃないですかね。人によって量の多少はあれ。

「私は幼女になりたい」(コメント)

山路:うーん幼女は、私はあんまりなりたいと思わないけど、なりたい人いるかもしれない(笑)
 じゃあ、今日のタイトルにもなっている、あの財政赤字の神話の話、ちょいと行きますか。最近、いろんな所で聞くことが増えてきたMMT……

小飼:ガンダムになってもいいんだよな。

山路:あ、びっくりした、MMTの話かと思った(笑)

小飼:MMTでなくて、こっちは宇宙世紀の話か、話がどこに飛んでいくのか。

山路:「おれはガンダムで行く」は『レディプレイヤーワン』の話ですね。MMT、モダンマネタリーセオリー、でいいんでしたっけ。よく新聞なんかで取り上げられるのは、いくらでも政府は財政出動していいんだと。ただインフレ、決めたインフレ率を超えない範囲だったらいくらでも国債刷ってもいい、だっけ、どんどん財政出動金を回すことは問題ないんだみたいな風に取り上げ、ちょっと説明されるようなことがあったりとかして。なんか変なこと言ってるなと私、思ってたんですよ。

小飼:僕もそういう変なこと言ってるとかって言うのではなくって、とりあえず貨幣というのは一体何なのかというのを、我々はけっこう物心つく前からお金というものに触れてるわけですよね。小学校でもタカシ君が何をいくつ買って、100円出してお釣りはいくらですかみたいなことと言うのは、物心がつく前からやっているわけですよね。だから、お金はどういったものだというのは我々にも偏見が、その場でついちゃってるわけですよ。

山路:偏見なんですか。

小飼:偏見です。だからそういったものをまずいったん忘れる。だから、自分に言い聞かせるわけですよ。私はお金というものを知らないと。そういう状態で、どうやってお金というものを再構築してくんだっていう風にやってくと、あれ、こっちの方が自然なんじゃないのっていう。

山路:ほうほう。

小飼:じゃあここでですね、やっぱりこういう時っていうのはお金のある世界というのをゼロから作ってみようと。

山路:ここで、今ここで。

小飼:はい、じゃあまずこの世にお金がないところから。でこの世に山路さんと僕しかいないという状態から……

山路:二人っきりの世界、いやだなぁ(笑)

小飼:そうそう。二人だけなんだけれども、いろんなモノ、これまでは物々交換してたわけですよ。

山路:それは簡単ですよね、お金なくても別にぜんぜん。

小飼:でも物々交換、なんとなく面倒になってきたんで、じゃあなんか記号を使おうと。だから、たとえば肉が欲しかったら、じゃあバナナ2本と交換というのであれば、じゃあ肉が2枚であれバナナ4本でいいだろうと。何でもいいんですけれども、ここでじゃあ2人が1日でも1か月でもいいんですけれども、どれだけの物品を作れるかっていうのをざっくりまとめといて、2人とも生産力というのは同じぐらいだと。で、一月分の生産力というのをとりあえず数字にしようと。じゃあ50と。

山路:1か月分の生産量を数値にしたわけなんですね、今この50というのは。

小飼:で、この50というのはあくまでも便宜上の数字ですよね。実体があるわけではないですよね。

山路:ゲームのスコアみたいなもの。

小飼:はい。ゲームのスコアみたいなもんです。

山路:あるいは麻雀の点棒か。

小飼:麻雀の点棒か。じゃあここで二人だけの経済に、もう一人来ました。で、そのもう一人というのもまぁだいたいその人の生産力というのは50ぐらいだ、我々と同じくらいだと。これで、だから2人が3人、経済の規模というのが1.5倍になりましたけども、じゃあその時に、お金はどうしたらいい?

山路:それはとりあえず渡さなきゃいけないわけですよね。

小飼:そう、だから50でしょ。新しく来た人もやっぱり50ですよね。

山路:その50はどこから持ってくるか。

小飼:そう。

山路:私からあげたら、私のやつがなくなっちゃうわけですもんね。

小飼:その通りです。じゃ、何もしなかったとしたら、これがデフレなわけですよね。だから経済は明らかに1.5倍になってるわけです。経済1.5倍になってるのに、お金は元のままですから、これ、3割デフレしたわけです。この場合、デフレさせないためには、お金がもう50増やしてあげないといけない。だから、経済、実際の経済の大きさとお金の総量というのが一致してる、一致させてる、それだけのことなんです。

山路:MMTが言ってるのは。

小飼:MMTが言ってるのは。

山路:ほほーう。

小飼:MMTの言ってるところの、国の借金というのは現在国に、その国の経済圏に、これだけのお金がありますよ、これだけの円がありますよって言ってるんですよね。

山路:それ、本当に、今さっきの例でやったゲームのスコアみたいなもんにすぎない。

小飼:ゲームのスコアにすぎないんですよ。
 で、お金が実態ではないっていうのは、そこまでは、MMTというのはもうまやかしだと、作り話だって言ってる人も認めてるんですよ。お金そのものが作り話というよりは、記号なんですよね。だから、まさに仮想通貨で言ったところの台帳なんですよね。だからじつは、いきなりMMTから入るとMMTってぜんぜん難しいことはないんですが、当たり前のことしか言ってない。

山路:とりあえず今聞いた話で何のおかしなところもなかったですもんね。

小飼:反緊縮とかそういうことではなくって、お金というのはあくまでも数値であると。その数値というのを誰がコントロールしてるかって言ったら、中央銀行がコントロールしてると。言うのであれば、それだけの話なんですよね、MMTというは。じゃあなんでそれがまやかしでないかって言ったら、ここが重要なんですけれども、確かにただの数字なんだけれども、その数字というのは誰もがいじれるわけではないんですよね。中央銀行だけなわけです。日本の場合は日本銀行ですし、アメリカの場合は連邦準備銀行、FRBという組織ですけれども。それだけです。だからじつはここが重要なんです。

山路:お金を出せる人が決まってる。

小飼:そう、お金を誰でも勝手に出せるわけではないと。

小飼:確かにその弾さんとの2人のところで私が勝手になんか50とか自分でやって、こんだけのものをよこせって言ったら、非常に混乱することになるわけですよね。

小飼:国が帳簿につけたお金というのが国の借金という風に解釈されてるんですけども。じゃあここで普通の商取引というのは、その国の経済圏の人と人とですよね。だから、政府はその中にないですよ。一度発行しちゃったお金、一度借りたことになってるお金というのは、少なくとも市民の間でお金が動いてる限りというのは、ぜんぜん返す必要ないですよ。実際のところ、そのお金というのは市民のものなんだから。国のものではなくて。

山路:国に必要なのはせいぜい人件費ぐらい?

小飼:まぁそういうことですね。だからじつは国も純粋に貨幣の発行だけを仕事としている、人生ゲームでディーラー役だけしてるわけではないですね。プレイヤーでもあるわけです。福祉を提供したりですとか、あと治安維持を提供したりですとか。今はけっこう国が直接経済のもう片方の主体、売り手だったり買い手だったり、どうしても関わってる部分っていうのもありますよね。だから、そこの部分っていうのは誰が普通の人と同じように振舞わなければいけない。そこの部分っていうので、たとえば市民からお金を借りた場合というのはやっぱりその人の持ち分から返さなければいけない。けれども発行体自身はそれする必要ないというのか、それしちゃいけないんですよ。

山路:人生ゲームだと点棒配る人がスコア隠しとか、なんかやたらいろんなこと介入してくる感じなわけですよね。

小飼:そういうことですね。これ、すごい重要な事なんですよ。確かにお金、国の借金というのは返さなくてもいいというよりも、そもそもそれは借りたものではなくって、その経済圏に参加してる人たちがトータルでいくら持ってますかというものの証なのだから。借金のようでいて借金とはちょっと違うんですよ。

山路:ほほう。

小飼:ここで重要なのは、一番重要なのはなんでそれが成り立つのかっていう風に言ったら、お金を生成できる人が限られてるから。ディーラーだけがそれができると。この場合は、日銀だけがそれができる。これがたとえば、ペイペイ銀行とかがのペイペイポイントとか楽天とかの楽天ポイントというのが、一円として扱いますよってそれぞれ言ってて、それぞれの勝手に出し始めたら、そこで破綻するんですよ。そこで初めて破綻するんですよ。

山路:それはコラッて言わないといけないってこと?

小飼:コラッて言わなきゃいけないというよりも、まさに贋金なわけじゃないですか、国の立場から見たら。それをする人がいっぱい出てきたら、あっという間にお金というのは希釈しちゃいますよ。

山路:薄くなっちゃう、価値が。

小飼:そう。何でMMTが成り立つかっていう風に言ったら、他の人が勝手にお金を作る、まあ要は贋金を作るというのが十分に難しくなったからでもあるんですよね。だから、大事なのはお金というのは、お金だと思い込まれてるものすべてで、本物だと思ってるうちというのはどんな偽札も、その時点では本物なんですよ。北朝鮮で刷った100ドル札というのも、払った人も受け取った人も、そうと知らずに使ってる場合というのはその時点では本物なんですよ。

山路:そうなんですか。

小飼:だから、信用なんですよ。だから、お金というのは、あったりなかったりするものではなくて、信じたり疑ったりするものなんですよ。

山路:だからこそ、なんか偽ドルとかが出るたびにものすごくアメリカなんかが怒るわけ。

小飼:その通りです。だからMMTがきちんと機能するためには、逆説的というのも変ですけども、贋金は取り締まらなければいけない。で、政府以外の人たちというのは、ちゃんと、単なる帳簿ではなくって、1万円を払ったら自分の記録から1万円を引かなければいけない。

山路:そんなことをちゃんとやんないと、混乱してしまう。

小飼:混乱してしまうではなくって、不整合が起きてしまう。だからその時点で贋金が生まれるんです。じゃあなんで日本のインフレ率というのはこれほどに低いかっていう風に言ったら、ほとんど誰も贋金を作らないから(笑)

山路:えっ(笑)、そんなに贋金ってインフレ率とかに影響が出るほど、ドルなんかに関しては出てるって事なんですか?

小飼:「出てた」んですよ。今でもそうかもしれない。ドルに関しては今でもそうかもしれないというのも、米国政府はUS dollars を完全にコントロールできてないんですね 。少なくとも紙幣に関しては、かなり日和見をしてるわけです。だから、1ドル札がいまだに流通してるんですよね。あれ、実際に本物の1ドル札を刷る方からしたら、あんな少額な紙幣を偽造困難なようにいっぱい刷るというのは、手間ばかりかかってやめたいんですね。1円玉鋳造するのとか、そういうのやめたいんですよね、本音としては。なんだけども、世界中で流通しちゃっているので、やめるにやめられない。

山路:しかし、アメリカン世界の中に流通しているドルっていうのはじゃあ正確に算定することはできない、ある意味? 偽札なんかも含まれてるから、アメリカ政府も発行した……

小飼:さっきも言ったように、流通している間、それが使われている間というのに偽札は偽札じゃないんですよ。だから、これは偽札ですっていう風に断定されて、初めてその時に偽物になる。
 『コブラ』というすごいマンガがありましたけど、寺沢先生の。それのエピソードの一つで、存在を疑うと本当に存在がなくなってしまう山というのがあって。

山路:あった、あった。ありました。落ちちゃう。

小飼:はい。だから、じつは貨幣というのはそれに似たところがあります。

山路:バブル崩壊なんかも、あると思ってたお金と言うか、その価値が家がみんながないかもって思った途端、それが消えてしまう。

小飼:じゃあ、それ以前の経済と、なんだMMTって当たり前のこと言ってるだけじゃないかって、現代だけ知ってる人は思う、でもそれ以前はどうしてたかって、じつはたぶんMMTを疑ってる人の最大のポイントっていうのは、そこなんですよ。それ以前との整合性っていうのはどうなってるのか。

山路:今話聞いていると、ものすごく単純なことを言ってて、これになんか人類全員気付かんかったのみたいな気すらしてきたんですよね。

小飼:それ以前の、ニクソンショック以前のお金っていうのは何だったかって言うと、今で言うところのお金じゃなかったんですよ。