「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2021年04月27日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2021年05月25日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
新刊『小飼弾の超訳「お金」理論』
「ブラック労働者」をやめましょう。「お金を増やさねばならない」思い込みを捨てましょう。働いたら負け。もう労働には価値はない。理想は、誰でも自由に生きて食べていける世の中。なのに、いつまでも「お金」に振り回されるのはなぜか―――。
『小飼弾の超訳「お金」理論』では、世界を動かしているお金の仕組みと、お金との付き合い方をやさしく解き明かします。
2021/04/13配信のハイライト
- コロナ絡みの話とJTB「バーチャルジャパン」、ITリテラシーと事故
- 京セラ東洋紡の偽装問題と「日本人経営者というリスク」
- 「UNIXの権利」と著作権制度の問題
- 「小泉純一郎のクビ(物理)」と「国債帳消し論」とは
- 「オリンピックはもうやめよう」とモンテネグロの借金問題
- 『進撃の巨人』完結の感想(ネタバレ一つ)
Apple新製品の感想と中国・日本の自動車事情
山路:今日はまぁタイトルはなんか硬めなタイトル付けちゃったんですけど、いろいろ、皆さんもご存知の緊急事態宣言やら、うんざりするニュースがあるので、最初はちょっと軽めの所から行こうかなと思いまして。たぶん軽めつったら、これが一番軽めなのかなと思ったのが、弾さんも私もApple製品好きなので、この辺り。いかがでした、この前のやつ。
小飼:ずいぶん待たせたねというのも、AirTagでこうやってやるやつあるじゃん、それって確か11からだったっけな、
山路:ああ、UWB
小飼:UWBは
山路:搭載
小飼:そこから見るとずいぶんかかったように感じるけど、フィールドテストにそれだけ時間かかったってことなのかね。
山路:AirTagの噂ってもう2年くらい前からあったんですけど、とにかく最初聞いた時に思ったんですよね、それをストーキングに使われたらどうすんだろうって。その辺りのところの対応にすごい気を遣ってきた。
小飼:ちゃんと使いづらいような仕様にはしてきたね。
山路:ちなみに弾さん注文しました?
小飼:もちろん。
山路:私も4個入りパックをとりあえず2つ注文
小飼:おおー
山路:妻の分もですけど、俺一人じゃないですけど。あれ一つのアカウントで16個まで紐付けとかなんですかね。
小飼:今のところは
山路:もうちょっと皆にAirTagが普及してから、だいたいみんなこういうもんだっていうコンセンサスができた辺りで、そういう誓約外してったりとかすんのかなと思ったんですけど。
小飼:でも、どうなんだろうな。実際に電波出す物っていうのは、狭いところにあまり多くは置きづらいものではある。
山路:いくら弱いやつであったとしても
小飼:256個ぐらいだったらまだ行けるかもしれないけど、これが65536個とかね。
山路:確かにそれ、一人16個あって、それが多少なりとも、もしも全部持って何人かが集まったら大変なことに
小飼:仮に一人16個だとすると、仮にApple製品のユーザーがみんな16個ずつ買ったとすると、それだけで160億だからね。ただそれでも鶏の数よりは少ないな。
山路:それと比べる必要が(笑)
小飼:今の鶏の数が250億で、今はもうあの会社事売っちゃったけど、孫さんがArm買った時には1兆のデバイスって言ってたので、やっぱりそれくらいは全地球的には扱えないと、あれだよね。
山路:IDとかもうね、UUIDの技術があったりとかするから、問題はないんだろうけど
小飼:あーでもUUIDで衝突したらすげえ面白いことになる
山路:この、とんでもないやつが探しものとかで見つかったりするっていう。で、しかも今回AirTagすごいなと思ったのが、要は世界中にあるAppleデバイスを使って、まあそれが何て言うのかな、探索ネットワークの基点になるわけじゃないですか、ノードになると言うか。で、これって探し物だけじゃないよなって、そういうメッシュネットワークでなんかできるのって。だから、なんか知らんけど、すごいインターネットとは別のすごいネットワークがなんかできてくような気がして、何か次の手を打ってくるんじゃなかって楽しみにしてるんですけど
小飼:でも、確かに10億20億って言うと多く見えるけども、地球もそれなりに広いので、高密度なところはすごい高密度だけど密度が低い所は密度が低いわけじゃん。だからじつは密度のほうもコントロールできない環境下でっていうのは、ネットワークの、ネットワークエンジニアとして、ネットワークエンジニアリングの課題としてすごい興味があるんですよ。
山路:あとAirTag以外だと、iPad Proとか
小飼:以外だと、なんて言うのはすごいよな、実は製品的に見るとなかなかすごいイベントで、ついにM1というのか、Intel入ってないiMacが出たし、iPad ProにはついにM1が入るというね。
山路:AirTagにしか注目してなかったんで、後はもう私にとってはオマケだったんですけど。
小飼:でもiPad Proが高いと、一番いいスペックの奴というのはもうMacBook Proよりも高いじゃないですか。でもよく考えたらですよ、ずっといいディスプレイを積んでて、カメラもずっといいのついてて、しかもLiDAR付きのを積んでてって、どう考えてもハードウェアとしての出来はiPad Proのほうがこれよりもいいわけですよ。
それを考えると最高スペックのやつが一番高くなるというのは当然な気もするんだけど、でもやっぱり、もうたかだかiPadだとかたかだかタブレットで、PCでもないくせにっていうふうに、やっぱ一瞬は思っちゃうんですよね。
山路:なんかディスプレイ凄いらしいじゃないですか。
小飼:すごいですよね。micro LEDが付いてて。
山路:マンガ家なんか液晶タブじゃてなくてこっち買うって人もけっこういますね。
小飼:ただOLEDではないんだよね。OLEDでなくて、micro LEDにしたというのはやっぱりあの大きさだとOLED、要するに有機EL(編注:今回のiPad Proのディスプレイは、有機ELではなく、ミニLEDバックライト搭載の液晶パネル)
山路:ミニLEDですかね、今回はバックライトだけですもんね。
小飼:そう、1TBで、ちょっと面白いのが、積んでるRAMの量がフラッシュに比例するというのか、1TBを境に、そう512までは8GBなんだけど、1TBを境に16に上がるんだよね。iPadで16ってなんやねんて感じがするんだけど(笑)
山路:私のこれ使ってるやつ、8Gだったかな、メモリ。
小飼:8なのにストレージは2TB積んでるんだ。ちゃんと普通にそういうコンフィギュレーションもできるんだよね。でもiPadの場合、そこ選択肢がないみたいで。でもさ、16あるんだったらさ、macOS余裕で乗るじゃんね。で、キーボードとかもついてるし、macOS動かさない理由もないんだけど、macOSをサポートしてくれてないんだよなー。
山路:何だろうなあれ、いつかmacOSは載せるんでしょうか、絶対融合はさせないって言ってますけどね。
小飼:でもその割に、これでiOSとかiPad OSの、アプリが動くじゃないですか。
山路:Macのほうでね。
小飼:そう、だから最初、たぶんM1 Macの発表を最初聞いた時に、おいメモリ半分しかねーじゃん、8と16かよって言ってたんだけど、だいたいM1だとIntelの半分で同じことやるのも済んじゃうっていうのが、使ってきての感覚ですからね。まさか8でxcodeがまともに動くとは思わなかったなあ。
山路:いやーなんかね、最近のやつはちょっと半導体まわりに何かも統合して、神がかった出来になってきちゃってますよね。昔は本当に一発目は絶対ダメな奴って決まってたんだけど。
小飼:ねえ。
山路:後の製品、iMacとかに関しては買い換えるつもりとかないんですか?
小飼:あのね、じつは一番買い換えたいのがiMacで、今僕が使ってるiMacってあれなの、最初のRetina5Kだったんですよ。
山路:あ、私と同じかな
小飼:で、の一番いいやつにしたんですけど、でもあくまで当時の一番いいやつなので、メモリー32です、まあメモリ32でSSDが1TBでって言うので、だから当時としたらけっこうなスペックだったんだけど、今やこいつに余裕で負けてるけどね、スペック上で。
山路:久しぶりにパソコンの進化、速えなって思っちゃいましたよね。
小飼:なんだけど、それでやっぱりどうせ変えるんであれば、これよりもいい性能のやつにしたいんだよね。で、これと同じだとやっぱりちょっと。特に、あれだったんですよね、今のところ有線Ethernetが普通のGbEしかないと言うね。やっぱりここまで来たら、10GbEのやつを積みたいじゃないですか。
山路:まぁ今年後半とかなんですかね、やっぱ。そういうプロ向けの
小飼:あれだよね、27インチで30インチになるのかね、新しい
山路:ベゼルがね。狭くなったらもう余裕で30インチはいきそうな感じですけど。
小飼:デザインはそそられるんだよね。
山路:Appleネタでもう一つ、最近Intelがアメリカに2兆円投資するとか、TSMCが11兆円とか投資するとか言ってたじゃないですか、今度はAppleが46兆円という(笑)、なんすかこの46兆円っていう、なんかどこかの国の国家予算みたいな投資額。
小飼:まぁだけれども、今やAppleはオールグリーンだと、オールグリーンだというのはもう要するにAppleはもうrenewable energy率が100パーセントだって言ってて、今度はサプライチェーンを全部まるっと100パーセントまで持っていきます、2030年までに持っていきますとかって言ってるんで、だからそれ本気でやるんであれば、それくらいの投資があっても不思議ではないよねっていう。
山路:しかも別にこういう企業のやる投資は投資だから、消費じゃないですもんね。
小飼:あとあれなんだよね、いつまでも中国に頼ってられないっていうのもあるのかもしれないね。そろそろ中国で組み立て続けられるのかっていうのに疑問符が挟まってるんだとしたら、むしろ足りないかもしれない。
山路:台湾有事あってなんかTSMCに何かあったら、もう一発ですもんね。いや怖ええ時代になってきたなと。じゃあ台湾の話が出たとこで、中国関係のテクノロジーすげえよみたいな文脈でちょっと行ってきますかね。なんか、中国がらみでいろいろニュースが出てたんですけども、まず日本絡みのやつでは佐川急便が中国製のEVを7200台入れる
小飼:これやっぱ、日本のメーカーが動いてくれないのが一番の理由だよなぁ。
山路:しかしこれもう、何て言うのかな、佐川はこれだけ、最初テスト的にだとは思いますけど、7200台とか入れたら、ずいぶんと物事、勢いつきそうじゃないですか。
小飼:でも郵便局でも、軽トラをEV化したやつっていうのは使ってて、じつはうちの一番近所のリバーシティ局にもよく止まってんだけどね。
山路:中国製じゃないですよね。
小飼:中国製じゃなくて、普通のとか日本の軽自動車。あれは何だろうな、ワゴンR、何が元なのかな。まあでも日本の場合あれなんだよね、メーカーが及び腰なんだよね。
山路:ハイブリッドも残したいみたいなものもあったりとか、なんかサプライチェーンが云々とか
「iPadも使ってたんか」(コメント)
小飼:じつは一番Macの中で稼働率が、高稼働率なのはiMacですね。やっぱ画面が大きいというのはもう目が悪い人間にはほんと重要なので。
山路:あと中国がらみ、他にもいろいろ進んどるのがあって、CPUに関しても中国企業がまた面白いこと、ロングアーチって読むのかな、「LoongArch」というアーキテクチャを。
小飼:はいはいはい。
山路:これいかがですかっていう。そのエンジニアから見て。
小飼:まぁ使われてなんぼなので、だからCPUアーキテクチャをぶち上げること自体が今やぜんぜん、今やというのか、僕の学生時代からそんな難しくはないんですよね。こういう命令セットを用意してって言うのを、だからそれを実際に作って普及させてっていうのがまた別の話で。RISCプロセッサも、もう本当何種類もあったじゃないですか。要はハイエンドのSPARCだとか、MIPSだとか、DEC Alphaだとか、だからそういうのだけではなくてローエンドのほうでSHとかいっぱいあったんだけれども、
山路:日立か、SH
小飼:今本当に、もうx86とArmしかないという(笑)。
山路:いかにこのアーキテクチャ普及させるのは難しいっていう。そうか、じゃあこの完全自主開発っていうこと自体はまあそんなにトピックでもないっていう
小飼:そんなトピックでもないというのか、今やFPGAがあるから、学部生でもできるね。だから俺命令セットの俺CPUを作ろう
山路:夏休みのレポート感覚で作れちゃう
小飼:そうそうそう。このあいだ言ってた、命令が4種類しかないっていうやつはまさに、まさに夏休みプロジェクトです。でも、あれは単に4種類というのではなくて、ちゃんと意味があってあそこまでしたっていうのがあって、そこに価値があるんですね。命令セット云々じゃなくて。
山路:なるほどね、普通にRISCのCPU作るだけでは
小飼:何をするかなんです。何をしたいかなんですよ。Intelが見落としたというのは省電力ってとこだったんですよね。Intelがやってた省電力っていうのは、もうイヤイヤ省電力だったんですよね。
山路:本当にまだこのLoongArchに関しては、私も詳細見てないですけど、仮にそれが汎用的に何でも使えますよってお行儀のいいような仕様だったら、逆にのしていくことは難しいかもしれないっていうことなんですね。あともう一つ
小飼:(コメントを見ながら)ああ、そうなんです、実は。激ヤセする必要があってしたわけですけれども。久しぶりに見たとおっしゃってるので。
山路:弾さんの体重、65kgでしたっけ。私が今66kgか、7なんですけど(笑)。あとこれ中国でもう一つ。自動車学校でAIが使われるようになったという。それだけだと
小飼:自動車学校があるんだ、中国には。へえー。
山路:自動車教官という
小飼:中国ってまぁ、僕がいた頃にはもうとっても交通事故が多い国、確か年間の死者が10万人を超えてたんですね、人口10倍だったって言ったから、だから10で割っても1万人超えてたわけで。今どうなんだろう、今どれくらいなんでしょうね。
山路:中国の事故……
小飼:それ言ったらあれだ、日本でこれはめでたいとしか言いようがない日ができたじゃないですか、4月8日何の日だと思います?
山路:交通事故ゼロの日
小飼:そうなんですよ
山路:あ、事故死、事故死ですね。
小飼:ゼロの日というのがついにできたという。すご過ぎる。
山路:これは単純にみんな安全教育の賜物と考えていいんですかね。
小飼:いやでも複合的要因でしょう。
山路:コロナとか
小飼:もあるでしょうけども、とにもかくにも誰も死ななかった、交通事故で死ななかった日ができたというのはすごいよな。
山路:で、その中国のほうのやつはこのAIが教官になることによって、むしろ合格率が上がったという。
小飼:いやーでも中国で何が怖かったって、僕の妻が「あ、これ私なら運転できるかも」って言ったのが、そこが一番怖かった(笑)
山路:それはみんなの乱暴な運転を見てってことなんですか?
小飼:見てなお(笑)。見てなお、私なら行けるって。
山路:怖いな(笑)、ナオミさん言いそうだな、でも。
小飼:あ、減っては、ちょっと古いなこの統計、もう少し新しい統計がない、ピークが2006年ぐらいで11万人ぐらい、交通事故死者数が。減っても6万ある。
山路:じゃあほんとに、人口当たりで言うと、日本の3倍ぐらいは死んでるみたいな。
スタッフ:2016年の記事なんですけど、ここの見出しで書いてるのは日本の4倍の年間20万人超、自動も1万人っていうふうに書いてますね。
山路:ああ、中国のやつね。はいはい。
「中国は車検あるのかな」(コメント)
「スト2の春麗ステージのイメージ」(コメント)
小飼:冗談でなく、そんな感じだった。
山路:へえ、中国の交通事故死は日本の4倍の、年間20万人超。
スタッフ:これはあれですね、2015年の記事ですね。
小飼:ちょっと古いな。でも低下傾向にはあるんだよね、たしか。日本ほど劇的ではないんだけど、日本ちょっとすごいな
山路:しかも自動運転みたいなものとかってガンガン入れてくようになったら、あっという間にこの辺減るかもしれないですよね。もう自動運転車、まだ自動運転車は走ってはなかったと思ったけどもなー。ないっすよね、実験レベル以外では。つまり、ここで言ってるのはレベル4か5なんですよね。
小飼:中国でやってんのは深センでやってる例というのはなかったっけ。いかにもやってそうだけれども。
山路:特区とかでそれはあったとは思うが。
小飼:いずれにしろ、世界的に中国の道路というのは怖いところというイメージはあったので(笑)。
山路:まあでもそれが本当に
小飼:だから何と言えばいいのかな、むしろちゃんと、自動車学校があったということがちょっとびっくりだな。
Linuxの「ミネソタ大学による脆弱性混入」問題について
山路:その中国人も自動車の教官とか怖い怖いっていう人がけっこう多かったらしくて、AIになって喜んでるっていう記事だったんですけどね、さっきの記事は。いや、けっこうすごいことが起こってますねと、中国のほうで。あとテクノロジー絡みでもう一つ、これは残念なほうのニュースなんですが、オープンソース絡みで。
小飼:え、それやるか。これは、
山路:ちょっとこれでかくないですか。
小飼:でかい。
山路:やっとかんといかんかなと思って。
小飼:知らんぷりできるだろうか
山路:ミネソタ大学、ひでえ奴ら。このオープンソースの、コミットするのに不正というか、害はない……
小飼:害あるよ。まあ要するに毒入りのコードをプルリクエストしたわけですよね。毒入りのパッチを送りつけたわけですよ。
山路:で、Linuxの関係者、開発カーネル開発関係者はプンプン激おこだという
小飼:ミネソタ大学由来のコードを全部取っ払ったと言うね。
山路:うん。これ、ただこれってもミネソタ大学のやったことはもう言語道断なんですけれども、これってじつはものすごく攻撃として有効だってことを示したことにもならんですか。
小飼:何、攻撃として?
山路:攻撃、つまり
小飼:攻撃そのものは未然に防がれたわけだけれども
山路:今後オープンソースとかにいろんな形でそういう風な悪意あるコードを混ぜこませてくる
小飼:いやでも、悪意のある以前に、技術力不足で「なんじゃこのパッチは」って言うのは僕のところにも送られてくるわけです。だからそういうのを未然にハネるのがあれですけれども。
だからコードリリーフは、今も昔もあるわけですけど、その時の身構え方が変わってくるわけですよ。過失に対しては今までは身構えてたけれども、こういう故意のまで来るって言うふうになると、やっぱりそれは怖いですよ。
山路:これ、プルリクエストを送っていい権限っていうのも当然指定はできる
小飼:いや、誰でも送れるの。誰でも、メーリングリストに登録して、ここの部分をこう変えましたという、パッチを送りつける権利はだ、れ、に、でもあるんです。
山路:それはGitHubのプロジェクトによって、ある程度権限を制限したりとかはできたりはする?
小飼:いや、でもこれはLinuxカーネルの話です。
山路:なるほど。なるほどね。ああ
小飼:だから、どのオープンソースプロジェクトでどういうふうに外からのプルリクエストを受け付けるかっていうのは、それぞれのオープンソースプロジェクトのコミュニティ次第ですけれども、Linux kernelっていうのは、そもそもGitHubが生まれる遥か前からあったわけです。
山路:で、もうそのポリシーでずっとやってきたところに、こいつらがこういう事をしでかしたという
小飼:こいつらがって言うのか、で、今やおよそLinuxを授業で使ってないCS、CS Departmentって思いつかない。だから、じつはミネソタ大学はもっとでかいダメージを食らってて。
山路:つまりそこからコミットできなくなっちゃったわけだから
小飼:そうそうそう。破門状食らったわけですよ、Linuxコミュニティから。これは要は、ミネソタ大学の学位っていうのが、もうネガティブになるんじゃないと。
山路:ミネソタ大学全体の問題になってきた
小飼:ミネソタ大学全体の問題です。いやだって、アットマークの後ろがumdドットeduのものは全部
山路:うひゃー。
小飼:取っ払ったわけです。「誰から」じゃなくてアットマークの後ろがumdドットeduだったら、もうダメという。
山路:過去にもう遡ってまた
小飼:全部、遡って。
山路:えええ(笑)。
小飼:一行残らず。
山路:えー(笑)。
小飼:それはどう考えても健全なパッチというのも含まれてます。が、でもミネソタ大学が、ミネソタ大学としてOKを出しちゃったっていうのには変わらないわけですよね。だからそうである以上、過去に遡って、信用ができない先からが届けられたコードということでもとっぱらことに決めたって言うのは、それは当然ですよ。
山路:そうすると、それをコードレビューをしてる人っていうのは、きちんと信頼ができるようなコードをまた書き直さないといけなかったりもするわけですよね。
小飼:書き直したところで、だからそれだけで、はい、もう信用できますってなる? だからミネソタ大学はどうやって信用を取り戻すんだろうね。
山路:いや、そのつまりLinuxの今までのそのカーネルの開発なんかを遡って削除するわけじゃないですか
小飼:ああ、ありがとうございます、「どこからわからないかすらわからないな」という話ですけれども、これものすごい強引な例えをしますと、新薬、新しい薬をテストする時には二重盲検法使いますよね。要するに薬を出すほうも、薬を飲む、投与されるほうもどっちも、どっちが本物の薬が分からなくて、片方のほうの薬というのは毒にも薬にもならない偽薬というふうに、プラシーボと言いますけれども、それが毒にも薬にもならなくて毒だったと。
で、これじつはですね、すごいおぞましい例があって、黒人に梅毒を黙って投与したという事件があって。アメリカで黒人の予防接種率が低い理由っていうのはそれだったんです。だから人体実験に参加させられたんです。
山路:つい半世紀ぐらい前の話ですもんね。
小飼:はい、だからそういうレベルの話なんですよ。ソースコードではわざわざ脆弱性があったり、わざと欠陥があるコードというの故意に送りつけるって言うのは、そういう話なのね。
山路:いやーなんかLinux開発者の皆さんもご苦労様な、ものすごい、
小飼:で、その一方でこういう指摘もありました、「それってケイオスモンキーだね」と。ケイオスモンキーとは何かと言いますと、Netflixの取ってる開発手法で、わざと壊すんですよ。そう、だからわざと壊れて、それでサービスの落ちないかというのを現場でやってるんです。
山路:ははは、避難訓練毎日やってるみたいな
小飼:そうそう、だからそれ聞いてうひゃーってなったんですけど、それで壊れてないでしょ。壊すことによってたしかにロバストになるんですよ。で、確かに結果だけ見てるとそうなんですけど、じゃあNetflixと今回のLinuxカーネルの違いは何でしょう、Linuxカーネルプロジェクトと言うべきでしょうか。
山路:Netflixの場合は、いちおう関係者がそういうテストするって知ってるって事?
小飼:いや、そういうことではなくって、Netflixは中で閉じてるわけです。Netflixの中の人が別のNetflixの中のコードですとかサービスですとか、或いはサーバというのを、中の人が中の人のために落として、要するに閉じてるわけです。オープンじゃないわけですよ、ケイオスモンキーは。
山路:コードが外に出るようなことはない
小飼:そうなんですよ。
山路:なるほどね。
小飼:これに対して、今回のLinuxカーネルコードに関しては、他人同士が協力して働いてるという状態で、まさにオープンなわけです。要は、自分のボトルにおしっこして、それ自分で飲むというのは、話を聞いてるとお下劣ですけれども、それはちょっと攻めようがないですよ。
山路:飲尿療法ありましたもんね。
小飼:はい。でも、それをたとえば、銭湯とかレストランでやったらどうなるのかっていうことですね。
「ポトラー」(コメント)
小飼:ポトラーって言葉あるんですか。
山路:ほんと罪深いことしたよなあ。
小飼:でもさ、ミネソタ大学ってけっこう大きな
山路:有名な
小飼:UMDってけっこう、だからUMDのレピュテーションどうなっちゃうんだろうね。ごめんなさい、UMDって言ってた、UMNね。UMDって言ったら、University of Marylandのほうになっちゃう、ごめんなさい。
山路:じゃ、ちょっと口直しに。もうちょっと明るい話の、宇宙のやつ行きましょうか。口直しと言うのも変ですけれども、めちゃめちゃ最近、宇宙のニュース多くないですか
小飼:ちょっとUMDって言っちゃったのは改めて謝っておきたい、UMNです。これちゃんと
山路:URLをね。
「明るいのは最後にとっといて」(コメント)
山路:いやいや、明るい話、それだけじゃないんで。
しかしまぁミネソタ大学の件、みんなフェイクニュースの文脈でこういうことをやってたりもするのかもしれないですよね、真実の中に嘘を混ぜるとどうなるみたいな事っていうのを研究者として追求したくなったりしたのかもしれんけれども。これがミネソタの
小飼:UMNですからね。Dでなくて。
山路:banするならこっちのほうってことですよね。
小飼:banされたのはね。
山路:banされたのはね。
小飼:ほとんどの人は特に、中の生徒は罪がない、ないはずなんで、少なくとも学部生レベルとかは罪がない。いやでもね、やっぱり大学としてinstitutionalに通しちゃったというのは、これすごいでかくて。
山路:まあその辺の教授はクビになる感じなのかな。
小飼:いや、まぁ一応、まだ詫びを入れたという段階で、クビ云々って言うのは、まだ人事は動いてないはずなので。
「火星ヘリのすごさ」と「空気が変わった」COVID-19とオリンピック
山路:なるほど。じゃあさっそく、NASAの火星ヘリコプター。インジェニュイティ。すごいっすよねっていう。3年ぐらい前からなんか開発状況とかのニュース見てたんですけども、とうとう飛んだかと、本当に。で、かなり、本体自体はかなり小さいもんですね、翼自体広げると、1.2mですけど
小飼:どっちかっていうとヘリというよりドローンっていう言いたくなるようなスペックではあるんですけど、でもそもそも火星まで持っていくのが大変なんです(笑)
山路:そんな頑丈なもんではたぶんないですよね。重さとかから
小飼:そりゃもう、それは超軽くしないと。
山路:それを探査機から自動で飛ばして、メンテナンスフリーで、しかも自立航行じゃないですか。タイムラグがあって操作なんてできないわけだから。それを全部やって成功させたって言うのは本当にすごいよなっていう。
「蚊みたいな形してる」(コメント)
山路:そうすね。1.8kgと、とにかく軽い。これどう凄いのか、この火星ヘリコプターがどう凄いのか
小飼:まず凄いのは火星まで持っていくっていうことですよね。一番遠い時には2億キロ離れてるわけですよ。だから火星に比べると月がいかに近いかって言うね。
山路:近所、もう家の庭みたいなもんですわな。で、条件的に持って、普通に飛ばしたら何でもひゅって飛ぶわけじゃないっすよね、火星で。
小飼:いや、それはもう、大気圧ずっと低いですからね、キロパスカルないんじゃなかったっけ。ちなみに大気圧が0.1メガパスカル。あるいは100キロパスカル。要は地球だと成層圏オーダーの薄さなわけです。だから地球のヘリ、
Siri:なにかお手伝いをしましょうか
小飼:できるのかよ、空気が足りないよ。まさに空気圧が足りないんだよね。
山路:地球で成層圏まで飛んでいけるヘリコプターってないわけですもんね、単純に。
小飼:えーとね、ギリギリ、エベレストに着陸したという事例はあります。これが地球におけるヘリコプターの高度記録です。ヘリって難しいんですよ。高度、高く取るのが。
山路:揚力を発生させるために、大気圧の、大気の密度がある程度ないといけないということに。
小飼:揚力って大気密度に比例するんで、速度の二乗に比例するんで、旅客機が成層圏、何で飛んでられるかつったら、速いからです。マッハ0.8とか、具体的に時速1000キロとか、そういう速度で飛んでるから、ヘリはそんな速度で飛べないでしょ。
だから揚力、全部ローターで作らなければいけないので。だから、高々度は難しいわけです。
山路:なんかインジュニティ、めちゃめちゃ速くローターを回転させるという
小飼:もう2400rpmって言ってましたね。
山路:ハードディスクかよ、みたいな(笑)
小飼:でも今どきのハードディスクは、遅いやつでその倍ぐらいなので。でもローターの大きさ考えたら、大変ですよね。言ったでしょ、速度の二乗って。速度重要なんです。大気の薄さというのをローターの速度でカバーしなければいけない。
山路:これ、ちなみに今のモーターの技術とか、そういったものとかもこれを実現するために必要だったんですかね?
小飼:そうなんですよ。電動にするしかないですからね。内燃機関無理です、酸素がございません。そもそも大気が薄い上に、酸素がございません。ほとんど炭酸ガスです。
山路:20年前とかだったら、ハードウェア的にもやっぱり実現はできなかった感じですか。
小飼:いや、もうずーっと構想はあったんだけども、でもヘリでいくって決めたのは比較的最近だったんじゃないかな。最初の構想ではもうグライダーみたいな、すごい長い翼の固定翼機だったと僕は記憶してるんですけども、どうやって発進させるとか、やっぱりそういうのを考えると、地上に置いてから、ホバーしたほうがいいっていう判断になったんでしょうかね。